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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第三章:海に轟く勇名 地に眠る神名

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第八十四話:決戦の戦鎧


 連日のレベル上げも終わり、いよいよ明日は星喰獣グラブへ挑む日だ。

 参加メンバーの皆にメッセージを送れば、各々が準備バッチリと心強い返事をくれた。


『アイテムの準備はできているぞ。個人のお金じゃなく、クランの予算をちょっと借りてるのは内緒にしてくれ』

『僕も結構身銭切るはめになったよ。本当に今回の攻略に全リソース使っていいんだよね?』

『おや、ナギさんは一回で決める自信ない?』

『まさか、とっておきの用意もあるから楽しみにしてて』

『拙者はリアル仕事の都合であまり準備に協力できず申し訳ない……』

『それはマジで仕方ないから気にしないでくれ』

『本番では必ずや活躍して見せますぞ!』


 グループチャットの様子を眺めながら、相手を待つ。

 俺は最後の準備を整えるために、ミーニャと待ち合わせしていた。

 彼女はニール港に工房を構えているらしい。約束場所に指定されたのはニール港の表通りの広場だった。


「やっほー、お待たせリョーダンくん」


 声をかけられた。顔をあげると、ひらひらと手を振りながらミーニャが近づいてくる。


「急な依頼で悪かったな、助かったよ」

「ううん、いいよ。特急料金は弾んでもらったし、ナギちゃんからも熱心にお願いされちゃったからね」


 星喰獣グラブに挑むため、大急ぎでレベルをあげたが、装備の品質が追いついていない。ゆえに、俺はミーニャに新たな防具の製作を依頼した。

 ミーニャには以前に、『翡翠連理』を作ってもらった。しかし彼女の本職はアクセサリではなく防具製作、それもトッププレイヤーのナギすら愛用する防具を作る一級の腕前を持った職人だ。俺の伝手の中で頼れるのは彼女しかいなかったので、無理を言って全身の装備一式を超特急で仕上げてもらった。

 なお、必要なお金や素材は、恥を忍んでナギに協力してもらった。ナギ自身は頼られてどことなく嬉しそうな顔だったが、俺としては複雑な気分。しかし背に腹は代えられない。

 さよなら、俺の安いプライド……。


「ナギちゃんに協力してもらってまで、大急ぎで仕上げた防具。しかも全身装備一式。前に会った時より急に上がっているレベル。いかにも大勝負の前の身支度です、って感じだけれど、何をしでかすのか聞いてもいいのかしら?」


 メニューを操作しながら、ミーニャは探りを入れてくる。

 俺は肩をすくめて誤魔化した。


「詳しくは教えられないけど、明日の夜をお楽しみに、だな」

「そっか。じゃあリョーダンくんの企みが成功するよう、私からのプレゼントよ」


 装備が送られてきた。メニューを操作して、受け取った防具を早速身に着ける。

 体が光に包まれ、俺の装備が切り替わった。


 これまでは毛皮ベースの焦茶色の服とズボンだったのが、血のような赤と黒が基調の鎧へ変化する。

 胸当てや籠手、脛まであるブーツも金属製。しかしこれらは『落日の兵』から大量に採取した鎧の欠片を溶かして純度を上げ、それをベースにナギに集めてもらった希少金属と、封土神殿で採取できる宝石樹の欠片こと地脈樹片を混ぜ合わせた合金だ。金属でありながら驚くほど軽く、動きを妨げない。

 この金属素材の鎧で要所を補強しつつ、胴や手足の金属部分以外には、海イベントで倒していたアローシャーク・キングの鮫皮が使われている。着心地は悪くない。

 腰は居合刀や短剣の抜納刀を邪魔しないよう、ベルトのみ。兜も被らず、頭装備の枠には額当てを装備する。

 全体的な装飾は控えめで、鎧でありながら体のシルエットが強く出ているので、特撮スーツに印象は近い。


「特急依頼だったうえに男性向けの鎧のデザインは経験があまりなくて自信ないけど……どうかしら?」

「うん、注文通りで良い感じだ」


 見た目はもちろん格好良い。アンデッド系素材が多いので色味がちょっと呪われてそうな印象になっているが、それはそれでアリ。

 なにより性能が格段に違う。

 これまでの防具はNPCに依頼して作っていたもので、基礎性能は高められても細かなカスタムまでは手が入れられなかった。

 けれど今回の装備は完全オーダーメイド。俺が欲しい性能をつめこめんでもらった。

 攻撃が掠っただけで大慌てだった俺の低VITを補ってくれる基礎防御力はもちろん、AGIとDEXへの大幅な補正。そして貴重な素材を大量に使用したことにより、装備自体に大量の特殊効果が付いている。



・渇望する亡者の鎧

 数多の戦場で散った怨念を束ねた鎧。亡者は新たな犠牲を求め、所有者を戦場へいざなう。

(製作者:ミーニャ)

【特殊効果】AGI+50

【特殊効果】DEX+50

【特殊効果】黄泉縋り:HPが0になるダメージを受けた時、HPが50%以上であればHPが1残る。

【特殊効果】超会心:クリティカル発生時、ダメージ増加大

【特殊効果】合戦鎧(器用):2体以上の敵との戦闘時、DEX+15

【特殊効果】血染めの鎧:自分のHPが50%以下の時、STR+20。HPが50%以下の敵に攻撃する時、ダメージ増加大

【特殊効果】地脈の加護(敏捷):プレイヤーの足が地面に接触中、AGI+20



「貰った素材がアンデット系中心だったから、変な特殊効果も乗っちゃったけど、リョーダンくんなら有効に使えるでしょ」


 ミーニャはそう言うが、どの効果もありがたいものばかりだ。

 何よりの目玉は黄泉縋りだろう。似たような食いしばり系の特殊効果はいくつも種類があるらしく、高レベル帯の低VITビルドをしているプレイヤーにとってはほとんど必需品みたいな特殊効果だ。

 これで俺も安心して無茶できるぜ。


「本当にありがとう、ミーニャ」

「どういたしまして。それより、武器の方はいいの?」


 ちらりと、俺の腰に装備された剣を見られた。

 こいつらも、見た目は変わっていないがNPCの武器屋に頼んで多少強化してもらっている。名前も『土竜刀・剛』と『黒爪刀・改』になった。一応、攻撃力などの基礎ステータスは伸びている。

 ただ、少し物足りないのは事実だ。


「一応、強化はしたんだよ。けどこれ以上のカスタムをしようと思うと、プレイヤーに頼るしかなくてさ。でも伝手がないんだよなぁ。ダメ元で聞くけど、ミーニャって武器は……」

「悪いけど、服飾専門よ。武器は無理」

「だよなぁ。ミーニャ、知り合いに腕の良い武器職人のプレイヤーとかいたりしないか? よかったらそのうち紹介してほしいんだけど」

「知り合いに何人かいるから紹介するくらいなら別に構わないけど、依頼料は自分で用意しておきなさいよ。あんまりナギちゃんに頼りすぎないように」

「……肝に銘じておきます」


 グラブを倒した暁には、その素材で剣を強化するつもりなのだ。取らぬ狸の皮算用、と笑われるかもしれないが、その準備はしておきたい。


 さて、装備も新しくしたし、今できる準備は全てやった。

 いよいよ、星喰獣に挑むときだ。



 気持ちも装備も整え、いよいよ大ボスに挑む準備が整いました。これからのメイン防具になってくれることでしょう。

 ちなみにいちいち書くと冗長なので省きましたが、同名の防具で頭・胴・腕・腰・足それぞれ揃えていて、各所に特殊効果があるイメージです

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