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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第三章:海に轟く勇名 地に眠る神名

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第八十話:実は俺も?

わくわくGW更新


 三十分ほど落ち武者ゾンビたちと連続戦闘していたが、流石に精神力が尽きてきたので一度休憩を挟むことにした。

 集まってきていたゾンビをモーリーが一掃してくれ、その隙に沼の傍から離れて森を出る。流石に森の外までは追いかけてこないらしい。

 周囲にモンスターがいないことを確認したあと、俺は草原に寝転がり、だらしなく両手足を広げる。


「ふぃー……、流石に疲れた」

「お疲れ。レベルはあがったか?」

「もうレベルがあがったぜ。三十分でこれだけ経験値が溜まるってことは、効率めっちゃいいな」


 凄まじいパワーレベリングだ。いくら課金アイテムで経験値を倍増させているとはいえ、ここまでとは。


「このペースなら一週間後までにレベルをしっかり上げられそうだ」

「ついでにあのゾンビの素材で新しい装備も作ればいい。和装っぽい装備になりそうだから、多分似合うぞ」


 モーリーは俺の着ている足軽鎧のような装備を見て、にやけながら言った。


「う……確かにアリではある。ゾンビと同じ装備になるのは気が引けるけど……」


 奴らの鎧の破片がドロップアイテムとして入手できた。この調子で集めれば、新しい防具が作れそうなほど溜まりそう。


「レベルと装備を整えたら、あとは時間があればスキル磨きだな。このゲーム、レベル上げの方法は色々あるが、装備とスキル強化だけは近道がない。だが最上位を目指すとなると、そこも時間をかけて突き詰めていかないとな」

「スキルはやっぱり大事だよな。グラブとの再戦までに新しいスキルも出来れば覚えたい。とはいえ、そこまでの時間が足りるかどうか……」

「何かしらのクラフトに手を出せば、すぐにでもバフ系のスキルをいくつか覚えられるんじゃないか? バフ系なら覚えたてでも使えるだろ。その辺りはお前に任せる」


 実はナギに言われたのだが、俺の所持しているスキル数は同レベル帯のプレイヤーと比べるとちょっと少ないらしい。

 格上相手で効率よく経験値を稼いでいる反面、特定の行動に伴ったスキルの習熟度が不足しているのだと思われる。あとは採取や調合のゲーム要素にほとんど触れていないので、スキルの派生候補先が少ないのも原因かも。

 とりあえず、今はゾンビ相手に〈土竜撃〉を当てる練習をしておくか。あれ、体ごと縦回転するから一瞬周りが分からなくなるんだよな。


「スキル構成は個性が出る。それに俺とリョーダンじゃ戦い方も真逆に近いし、アドバイスも難しい。ネットで調べれば居合刀(ヤマトブレード)のステータス割り振りやスキルのテンプレートみたいなのは出てくるかもしれないが、お前に合うかは微妙なところだな」


 定番構成と方向は大きく違わないと思っているが、俺の場合ちょっとAGI偏重が過ぎる傾向があるんだよな。

 居合刀(ヤマトブレード)はその武器の特性上、一撃の威力を高めるスキルが多くなりがちだ。故に本来はDEXを重視しつつも、STRやVITにもバランスよく割り振るのがテンプレートだ。武器の癖が強いのに、そこからさらにステータスすら極振りするのは尖りすぎている。

 俺ももっとバフ系スキルがあると良いのだろうか。どんな行動したら覚えられるんだろう。

 思案する俺の隣に、モーリーも腰を下ろした。


「それにしても、こうして一緒に狩りに出てつくづく感じたが、お前のゲームセンスの高さには驚かされるよ。リスポーンなしで三十分戦い続けられると、正直思っていなかった。一対一でもレベル差結構あるだろ?」

「褒めても何もでないぜ? まぁ、格上相手とやりあうのは慣れてるからな」


 今回の相手は特に、人型で動きが予想しやすく、スピードもそこまで速くない。これまでの経験のなかだと楽な部類の相手だった。

 ということをモーリーに伝えると、彼は「うへぇ」とわざとらしく顔をしかめた。


「人型が倒しやすいって、言ってることが完全に人斬りのソレだぜ。天性の才能かよ」

「人聞き悪いな。まぁ、人斬りはともかく天性の才能ってのはあるらしいが……」

「んん? どういうことだ?」

「何でも俺はフルダイブVRが得意な体質なんだってさ」


 怪訝そうな顔をするモーリーに対し、以前にケンさんから言われたことを、俺は隠すことなく話した。脳の入力信号がVRに最適化されている、なんて言われたっけ。ゲームが上手いと言われて悪い気はしないからな。

 モーリーは当初こそ胡散臭いものを見るような顔だったが、話すにつれて興味を持ってくれたらしい。


「へぇ……何というか、VR黎明期の法螺話みたいだな。ほら、フルダイブ型のVR機器が普及したての頃は脳への悪影響とか、世代を経てやがて現実よりもVRに特化した人類が生まれるシンギュラリティが来るとか、眉唾ものの話があったらしい」

「そうなのか? 逆にそんな話まであるなんて知らなかったよ」


 俺はスタブレを始めるまで、そもそもフルダイブVRそのものに詳しくなかったからな。

 今では主に娯楽方面での活用が主流だが、医療分野や職業訓練といった領域でも使われている、と言う話を軽くニュースで見かけるくらい。


「で、実際のところVR脳ってどんな感覚なんだ? やっぱりピンチのときには時が加速するのか?」

「そんなアニメみたいなことにはならないよ。それこそケンさんに言われるまでは気にしたことなかったんだから。でも言われてみれば思いあたる所がないわけじゃないんだよな」

「例えば?」

「調子がいいとき、頭で思う通りに体をラグなく動かせる。あとは相手の動きを見ただけで、こう、未来予知みたいに次の動きが分かるんだ」


 もちろん現実でもすごく集中したスポーツの最中などに似た感覚になることはあるかもしれない。いわゆる、ゾーンと呼ばれる現象だ。

 けれど、仮想空間の中での感覚だと、より自覚的にそれが分かる。

 そして何より、キングモグラと戦ったときから、それがはっきりと、意識的に使えている感覚がどこかに残っている。

 自分の意思ではフルスロットルに入れられないが、それでも三割くらいの力は意識的に使えているような、そういう感覚だ。


「こう、うまく口で説明できないんだけど……見えた情報と、そこから予測できる先の動きに、自分の動きの最適解を先に入力しておくんだ。すると相手が動くより先にこちらの対応動作が出るんだよ」

「理屈としては格ゲーの読みあいみたいなものか?」


 モーリーは顎に手を当てて、考えるようなそぶりをした。「未来予知、ねぇ……」と小さくつぶやく。


「なんとなく……俺も似たような感覚があるかもしれないな」

「マジで言ってる?」


 とんでもないことを言い始めた。

 ケンさんの口ぶりでは、かなり珍しい体質だと思っていたのに。

 モーリーも確かに実力のあるプレイヤーだが、かといってケンさんに並び立つほどの腕前かと言われると頷けない。

 なにより事実なら、当のケンさんが放っておかないだろう。あの人、常識人っぽい雰囲気をしておきながら、結構なバトルジャンキーのきらいがある。今回の協力条件も俺との勝負だし、俺を見る目、ときどき怖いぞ。


「それ、俺の話を聞いて自分にも能力があるって勘違いしてるだけじゃないのか?」

「おまっ……!? 言っていい事と悪い事があるぞ!? 人を中二病みたいに言わないでくれよ!」


 珍しく声を張り上げて否定するモーリー。


「体の先行入力ってのは意味が分からないが、動きから相手のことを理解するのは俺も得意なんだよ。だから俺はVRギャルゲーが得意なんだ」


 ……動きの予測と、ギャルゲー?


「悪い、理解が追いつかない」

「表情や仕草を見れば、相手がどう思っているか何となく予想できるだろ。笑顔だから楽しんでいる、身振りが多いから緊張している、とか」


 噛み砕いた説明を聞けば、モーリーの言いたいことは分かった。それ自体は、別に仮想現実に限った話ではなく、往々に現実のコミュニケーションでもあることだ。

 だが彼の言うソレは、普通の範疇に収まらないらしく。


「俺は特に、VRのキャラクター……つまり、NPC相手だとそれが細かく分かる。NPCの仕草から、好感度を予測するのが得意なんだよ。かなり感覚的な話で、あまり共感を得られたことはないんだが……。今の話を聞いていると、何だか俺もそういうVR特有の体質なんじゃないかって思えてきたよ」

「……それ、役に立つのか?」

「滅茶苦茶役に立つぞ。おかげで俺はプロゲーマーなわけだからな」

「………………お前ってプロゲーマーなの!?」

「今更!?」


 お互いに顔を見合わせて驚く。えっ、モーリーってプロゲーマーなの!?


「リョーダン、お前……俺のSNSを見て、ユニーククエストの攻略の誘いをかけてきたんじゃないのか?」

「ごめん、お前のSNS知らない。ユニーククエスト攻略したって話も、ナギ伝いに聞いただけで……」


 俺が正直に伝えると、モーリーは頭を抱えた。先ほどからリアクションが大きい。大柄な彼がさらに大きいリアクションを取ると、動作がうるさい。

 これまでで一番のあきれ顔で俺を見る。


「まぁ、なんだ。一応俺はゲームのプロモーション配信やレビューで食い扶持を稼いでいる、プロのゲーマーだよ。スタブレみたいなアクションゲームは趣味でやってる」

「そ、そうだったんだ……」


 なんだか、モーリーを見る目が少し変わって気を遣う。へ、へぇ……。

 ちょっと縮こまった俺に対し、モーリーが嫌な笑いをしながら雑に肩を組んでくる。


「おいおい、ここまできて今更変に遠慮をするな。お前は仮にもプロゲーマーをレベル上げに付き合わせているんだぞ、そろそろレベル上げを再開しようじゃないか」

「わ、分かってる。感謝してるって」


 腕を払いのけて立ち上がろうとした、まさにその時。一通のメッセージが届いた。

 送り主はナギ。

 そしてその本文には。「助けて! 変な人に絡まれてる!」という文と、彼女の現在の居場所――今はカッペルの街にいるらしい――が記されていた。


 温めていた裏設定をちょっと開示。現時点の登場人物のうち、ケン・リョーダン・モーリーの三人はタイプが違いますが、VRにおける特異体質の持ち主です。


・ケンさん

 シンプルに動体視力と反射神経が良いので現実でもそこそこ運動は得意。そして脳からのアウトプット出力が尋常じゃない。アバターを十体与えたら、一つの脳で十人分の体をバラバラに操作できる。


・リョーダン

 アウトプット出力が高い。アバター三人分くらいまでなら同時に動かせる。

 そして脳へのインプット情報の処理の仕方も特殊。相手の動きから次の動きを予測するのは誰しも多かれ少なかれ行えるが、VRになると現実以上に微細な情報に気が付いて計算結果の先読みができてしまう。


・モーリー

 脳のアウトプット出力は一般人。ただしインプットの処理が非常に特殊で、ささいな体の動きや表情の差異から、NPCの感情情報を高精度で予測できる。平たく言うとAIの出した答えだけ見て、AI内部の計算パラメータを何となく予想できてしまう化け物。

 戦闘では役立たないがVRギャルゲーで無類のバランス感覚を叩きだす。


 ちなみにアリアちゃん親衛隊にはモーリーのファン層も含まれています。大柄ムキムキの彼がNPCの好感度を華麗にコントロールしてコンプラギリギリの恋愛をする様子がファンには人気。本編ではプロゲーマーと称してますが、ストリーマーと言う方が正しいのかも。

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