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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第三章:海に轟く勇名 地に眠る神名

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第六十五話:メインクエストをのぞき見


 アーちゃんと二人でレベル上げに励み、無事に一つレベルがあがった。ついでに居合刀の新スキルも手に入った。


「ありがとうございました、また遊びましょう!」

「うん、またね」


 アーちゃんがそろそろ落ちるというので別れる。

 ログアウトして消えていくアーちゃんを見送り、さてどうしたものか。


「にしてもアーちゃん、知らない間にまた強くなってたな……」


 先ほどまで二人でモンスターと戦っていたのだが、アーちゃんの活躍は目を見張るものだった。

 短剣系統のスキルだけではなく薬学系統のスキルも覚えたようで、短剣と相性の良い状態異常のスキルまで身に着けていた。

 最近は料理系統と薬学系統のスキルを重点的に鍛えることにしているらしい。なんでその二つを同時に鍛えようとしているのか、不穏でならない。

 毒や麻痺を敵モンスターにばら撒き、弱ったところをニコニコと短剣(ダガーブレード)で刺していくアーちゃんには頼もしさと若干の怖さを感じた。


「さて、俺はどうしようかなぁ」


 時間はもう少しある。ついさっき手に入れたスキルも試してみたいし、もう少し遊ぼうかな。


 何となくメニューを開いていた矢先、ふと、現在受注中のクエストの一覧が目に入る。

 お金稼ぎのために受けていたモンスター討伐系のサブクエストの他に、その一覧の先頭には『メインクエスト:第二の星の遺跡を探せ』の文字が。

 そういえばここ最近は、自分のレベル上げや海イベントに注力していたので、メインクエストはノータッチだった。

 今の心情的に優先すべきはユニーククエストと、それに繋がるであろうキングモグラへのリベンジだが、今日の残り時間は気分転換も兼ねて少しメインクエストを進めるのも良いかもしれない。


「ちょっとだけダンジョンを覗いてみるかぁ」


 そう決めた俺は、第二の星の遺跡に向かうことにした。






 向かった先は、海イベントが行われている海岸とはニール港を挟んで反対、東側のエリア。イベントが行われている西側に人が集まっている反面、東側の海岸には特筆するべきものもないし、誰もいない。砂浜が広がる西側とは対照的に、足場が悪くごつごつした岩の多い海岸だ。

 だがこの海岸沿いにある洞窟の奥が、第二の星の遺跡に繋がっているらしい。


「本当はサブクエストとかを受けて、少しずつ手がかりを集めていく必要があるらしいが……先駆者サマサマだなぁ」


 星の遺跡をクリアしたプレイヤーが現れることで上昇する、世界ランクというシステムが関係している。

 本来、星の遺跡の所在地は明らかにされていない。自分の足で周辺フィールドを探索したり、あるいは複数のサブクエストをクリアして手がかりとなる情報を集めることで、ようやく発見できるのだ。

 例えば最新マップであるヤマト島にも星の遺跡はあるらしいが、まだ場所が見つかっていない。

 しかしニール港周辺の星の遺跡は既にプレイヤーによって攻略済みだ。そしてクリアによって上昇した世界ランクの影響で、クリア後のクエストが追加されるほか、発見済みの星の遺跡の場所が簡単にわかるようになる。

 別の冒険者が発見、冒険者組合に報告をした、という設定のもと、冒険者組合の受付で確認すれば星の遺跡の場所を教えてくれるようになるのだ。


「そういえば、俺がうっかり上げた世界ランクの影響ってどうなってるんだろ……?」


 俺が封土神殿を見つけた影響で、突然流れた運営アナウンス。同じシステムなら、ゲーム全体で受注出来るサブクエストが増えたり、新しいダンジョンが探索できるようになったりしているはずだ。

 ただ、その影響を俺は目に見える形で発見できていない。他のプレイヤーに封土神殿の場所が分かるようになったわけでもないし、まだ謎だ。

 俺の予想では、ユニーククエストに関連するクエストが俺も知らないところで解放されていたりするんじゃないだろうか、と思っている。



 さて、そんなことを考えている間に目的地であるダンジョン入口に到着。

 メインクエストのクリア条件は、自分の目で第二の星の遺跡を見つけ出すこと。入り口に到着した時点でクエストクリアとなり、進行条件が変化した。『メインクエスト:絶海の洞穴を調査せよ』のスタートだ。

 視線の先、岩肌の隙間に空いた薄暗い洞窟の入口がある。なるほど、知らなければこんなところがメインクエストに関係するとは思わないだろう、というくらい目立たない場所だ。

 だが情報によれば、この奥に第二の星の遺跡がある。


「よし、それじゃあ軽く覗いてみますか」


 モンスターに気をつけつつ、俺は洞窟へと足を踏み入れた。

 狭く足場の悪い洞窟を進む。水が勢いよく流れ込む音が、洞窟の奥から絶えず聞こえてきている。

すると、少し進んだだけで突然視界が開けた。


「おお……凄いな」


 思わずため息が出る。美しい景色だった。

 洞窟の奥にあったのはドーム状の空間。地下に向かって広がる空間の上辺に繋がっていて、眼下に空洞が広がっている。

 周囲の岩の隙間から海水が滝として流れ込み、ドームの空間を覆うヴェールのようになっている。流れる海水が青白く光を反射していて、空間全体が薄青にゆらゆらと光っていた。

 ドーム空間の中央にあるのは、白い岩を削って作られた、不気味なほどに丸い構造物。


「ここが第二の星の遺跡、絶海の洞穴か」


 なるほど森の神殿も不思議な建物だったが、こちらも輪をかけて不思議な空間だ。


「ていうか、海水が地下に落ちるってどうなってんだ……」


 この世界(スタブレ)、ひょっとして平面だったりする? いや、ゲーム的には世界は丸いより平面の方が一般的なんだけどさ。

 よく周りを見れば、ドームの側面、流れる滝の裏側を通るようにらせん状の下り坂がある。ここを通って、下に降りられそうだ。このまま中心の丸い建物に向かえってことなんだろう。


「よし、行こう」


 滝の裏側を歩き、ドームの内側をらせん状に降りていく。

 すると早速、傍の滝からバシャバシャという音がして――。


「グギャァ!」


 滝の中から、魚が飛び出してきた。鋭い牙を剥き出しに、腕へ噛みつきにくる。

 だが、音を聞いて気を張っていた俺に油断はない。


「〈抜刀〉!」


 斬撃一閃。大きく開いた口をそのまま引き裂くよう、刀身を合わせ、飛び掛かってきた魚を一撃で斬り捨てる。



・咬魚の牙

 鋭く、肉を食いちぎることに特化した形状をしている咬魚の牙



 我ながら、良い反射神経だった。伊達にモグラと戦ってない。


「にしても、やっぱ良い火力でたなぁ」


 先ほどの魚も、おそらく中々のレベルを誇っていることだろう。

 だが一撃で倒せた。先ほどアーちゃんとレベル上げをするなかで取得した新しいスキルが活きている。気がする。

 居合刀系統パッシブスキル〈過集中〉。効果は分かりやすいもので、居合刀(ヤマトブレード)の最大チャージ量を120%まで上げるというもの。

 フルチャージの火力が伸びるだけでなく、100%のチャージが溜まっている故に無駄となっていた納刀時間が少なくなる、あるだけお得なスキルだ。

 特に、非戦闘時の納刀で溜められるチャージ量が増えれば、初撃の威力がシンプルに1.2倍になると考えていい。

 不意打ちしてきたモンスターを無事に撃破。しゃらん、と刀を鞘に戻した構えを解く。

 途端、今度は洞窟の横穴から人間大の青いカニが飛び出してくる。海イベントでも見かけたモンスター、ハンマークラブブルーだ。

 それが二体、道を塞ぐように現れた。


「うぉっ、またかよ!?」


 慌てて飛び退き、気持ちのスイッチを改めて戦闘モードに切り替えなおす。

 咄嗟に刀に触れるが、先ほど魚を切ったばかりなので当然チャージ残量はゼロ。ここは刀を振るうには問題ない程度の道幅はあるものの、片方は滝、もう片方は洞窟の壁面で、自由に走り回れる広さはない。

 ひとまず〈錬気〉を発動してチャージを回復しつつ、バックステップで距離を取る。

 二体のカニが自慢の太い爪を振りかぶって、前に詰めてくる。スピードはないが、狭い道を塞ぎながら詰められると厄介だ。

 下がれるギリギリまで後ろに引き、チャージを稼ぐ。

 あとはタイミングを見計らって――今だ!

 〈ハイジャンプ〉を発動して跳躍。天井に頭をぶつけないよう勢いを調整しつつ、壁面の窪みに足をかけて再跳躍。〈エアステップ〉をつなげ、さらに空中でもう一度ジャンプして位置を調整。

 狭い通路は速度を活かしにくい分、こうして足場を利用したジャンプ移動を駆使できる。

 二体のカニを華麗に飛び越え、背後を取った。


「〈月断〉」


 振り下ろしの攻撃スキルを発動。チャージはまだ七割も溜まっていなかったが、その分は威力の高い〈月断〉で補う。

 空中から体重をかけ、力強く刀を振り下ろす。カニの足の付け根にヒット、足を斬り落とした。

 足の一本を斬り落とされた衝撃で体制を崩したカニに、素早く蹴りをお見舞いする。

 ダメージはないが、甲羅に爪先を引っかけて押し出すように蹴れば、カニはバランスを崩して滝つぼに落ちていった。

 あとは落下ダメージで勝手に死ぬだろう。

 残る一体がこちらを向く。だが、背後を取って立ち位置を入れ替えたので、また後ろに下がるだけのスペースがある。

 通路を先に進み、カニから距離を取ってチャージを溜める。引き打ち戦法は足の遅い相手なら変わらず有効だ。と、気を抜いた瞬間、目の前を咬魚が飛びすぎる。

 危なっ、頭をガブリと噛まれるところだった。

 咬魚は尾びれで洞窟の壁を叩き、器用に反転。V字を描く軌道で、また滝の流れの中に帰っていった。


「器用なやつ!」


 こういう時は、やはり手数が欲しくなる。ナギの言う通り、もう一本、剣を持つか?


「いや、今は考えるのは後回しっ!」


 チャージが溜まった。ハンマークラブブルーを先に倒す。

 距離を詰め、〈抜刀〉を打つ。大きな爪とぶつかり、硬い音を鳴らして弾かれる。〈連閃〉をつなげ、二発目は頭部へヒット。

 だが、手ごたえは固い。イベント戦で何度か戦ったが、このカニの防御力は厄介だ。

 怯みつつも、カニは硬い甲殻を活かして体当たりを仕掛けてくる。刀身を横にして受け止めつつ、後ろに跳んで衝撃を和らげる。

 爪が振り上げられた。叩きつけは直撃するとまずい。

 〈納刀〉と同時に体を大きく捻って回避。洞窟の地面が爪で削られる。

 捻った体勢のまま体を回転させ、スルリとカニの横をすり抜ける。足の一本を手でつかみ、取っ掛かりにして姿勢を制御。滝つぼには落ちないように気を付ける。


 曲芸のような回避も段々板についてきたなぁ。

 チャージが溜まるまでさらに時間稼ぎ。よし、そろそろ行ける。

 ついでに新しいスキルを試しておこう。

 効果説明は読んだ。強い事しか書いていなかったので、きっと新しい必殺技になってくれるだろう。


「〈重ね刃〉、からの――」


 バフスキル発動。そのまま深くカニの懐へ飛び込む。



「――〈斬々舞(きりきりまい)〉!」



 目にも止まらぬ三連撃。金属的な効果音とヒットエフェクトが連続して炸裂する。その数は六回(・・)。

 高い防御力を誇っていたハンマークラブブルーが吹き飛び、バラバラに砕け散った。



・ハンマークラブブルーの甲殻

 硬い甲殻。防具の素材として好んで用いられるが、この素材を用いた防具が原因で痒みを訴える剣士が時折いる。



「……うわぁ、スゲェ威力出たな」


 思わず声が出る。ここまでの火力になるとは。

 新たに覚えた居合刀系統のスキル、〈重ね刃〉と〈斬々舞〉。これらの効果は少し特殊だ。

 〈重ね刃〉は自分に対するバフスキルだ。持続時間はわずか10秒と、極端に短い。だが時間を補って余りある強力な効果をしている。その効果は『次の攻撃のダメージ判定を二回に増やす』というもの。そう、単純明快な二倍攻撃。

避けられれば無意味になるリスクはあるが、他の攻撃スキルと組み合わせることで、その威力は掛け算で跳ね上がる。強い事しか書いていない。

 そして新たな攻撃スキル〈斬々舞〉は、一度に三連撃を放つスキルだ。ちょうど「又」の字を書くような軌道で、目にも止まらぬ斬撃を放つことができる。

 刀の軌道がある程度固定されていて、〈抜刀〉のように狙った急所を正確に斬ることはできないスキルだが、それでも三連撃は魅力だ。

 そしてこれらのスキルを組み合わせればどうなるか。

 結果がこの、六回のヒットエフェクトだ。


「初撃だけが二倍かとも思ったが……一連のスキルにちゃんと効果が乗るのか」


 〈斬々舞〉の初撃のみダメージ判定が二回となり、四連撃になるかと思ったが、効果は期待以上だった。

 急所狙いの一撃ではなく、数で押し切る大ダメージ。大幅な火力アップだ。

 〈過集中〉による120%チャージ、〈土竜突〉による最大加速、〈重ね刃〉で二倍の攻撃判定を持った〈斬々舞〉による三連撃。これらを組み合わせれば、きっと計り知れない火力が出る。

 想像しただけで背筋が震える。自分のことなのに。

 試してみたい欲が湧き出てくるが、〈土竜突〉と〈斬々舞〉を組み合わせると自分の反応が追いつかず、事故を起こす自信がある。

 これは要練習だな。

バイ〇ルト+は〇ぶさ斬りはとても好きです。

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