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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第二章:土竜と竜と遺跡と宝石、世界は星のみに非ず

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第二十六話:新たな力と地下の謎

 モグラたちとの死闘の末、『サブクエスト:モグモグ百匹組手』をクリアした俺に新しい情報が一度に叩きつけられた。

 ただ、何か普通じゃないことが起きたことはわかる。


「待て待て、一旦落ち着こう」


 とりあえず、突然装備がパージされたので以前にカクジカの毛皮を使って作っていた『丈夫な冒険服』を装備する。

 ここが街中じゃなくてよかった、マジで。ゲームとはいえ街中で突然服をパージしたら、完全にヤバい奴だ。

 装備が解除されたのはレベルが上がって、装備制限のレベル15を超えてしまったからだろう。

 それは分かるのだが。


「レベル20って……」


 モグラたちとの試練を受けた時にはレベルが14だった。何と一気にレベルが6も上がっている。


「ソードディグ・ナイトの経験値がそんなに多かったのか?」


 何せ百匹も連続で倒したのだ、経験値はたくさん貰えたと思う。とはいえ一気にレベルが6も上がるのは予想外だった。

 おかげでレベルアップのステータスポイントが滅茶苦茶増えた。このポイントの割り振りは後でゆっくり考えよう。多分、AGIとDEXにほとんど費やすことになるだろうけれど。


 次は新しく発生したクエスト、『サブクエスト:モグモグ百匹組手・皆伝編』だ。


「これは多分、続きもののクエストだな」


 モグラの認定状を手に入れたことで発生した次の段階のクエストだ。

 これも一旦保留でいい。


 最後の問題は新しく手に入ったスキルだ。

 EXスキル〈土竜突〉とかいう代物。

 EXスキルっていうのは確か、スキルツリーに依存しない独立したスキルのことだったはずだ。

 メニューを開いて効果を確認する。


・EXスキル〈土竜突〉

 AGI+200%の速度でステップ移動する。


「シンプルに強いな!?」


 歩行系統の〈瞬歩〉のような移動系のスキルだ。STの消費は移動系の割に重いのだが、実質三倍の速度で加速するのは破格の性能と言える。

 いや、もっとヤバいのは、このスキルがAGIを参照していることだ。

 〈瞬歩〉が一定距離を一定速度で高速ステップするスキルであるのに対し、この〈土竜突〉は俺のAGIが高くなれば、それに応じて速度があがる仕様になっている。

 つまり俺のレベルが上がるほど、このスキルは化ける。間違いなく一生モノのスキルだ。


「これってあのモグラたちのロケット突撃を模したスキルなのかな?」


 そう考えると組手をクリアした報酬のスキルとして納得がいく。

 そしてもう一つ恐ろしいことに気が付いた。

 これまで便利な加速スキルとして使っていた歩行系統の〈瞬歩〉とは別の加速スキルが手に入った。

 これはつまり、STの消費は嵩むが、スキルのリキャストを気にせず二回まで連続で加速ができると言うこと。空中で発動することはできないようだが、あのモグラたちがやっていた二段加速が疑似的に再現できるということだ。

 ますますあのモグラたちと戦闘スタイルが似てしまうな。

 俺でもわかる。普通の初心者の領域から今、一歩外れたということが。


「……まぁ、手に入ったものはありがたく使わせてもらうか」


 強くなれるに越したことはない。

 さて、俺の身に降りかかった新しい事象は整理できた。これからの問題は、


「どこから帰るかだよなぁ」


 封土神殿と名付けられた遺跡の中庭に一人取り残された。あれだけ沢山いたモグラはすっかり地面の中に帰ってしまい、不気味な静けさに逆戻りだ。

 上を見上げても分厚い地盤の天井があるだけで、出口になりそうな穴はどこにもない。太陽が見えないだけで、人って不安になるものなんだなぁ。


「とりあえず神殿の中を見て回るか?」


 立ち止まっていても仕方ないと、俺はゆっくり歩きだした。






 封土神殿と名付けられたこの巨大建築物。縦にデカいが横にはそこまで広い建物ではない。

 そもそも中央に広い中庭があり、他は太い柱で支えられただけの大広間だ。部屋のような区切りもほとんどなくて見通しがとても良い。

 だから少し歩くだけで神殿の中をある程度見て回ることができた。

 VRゲームで未知の遺跡を調べるなんて、どこかワクワクすると同時に奇妙な恐ろしさもあった。

 あまりに静かすぎるので不安になって、何度か後ろを振り返ったりしたのは内緒だ。

 とはいえ誰かがいるわけでもなく、そして手がかりになりそうなものは柱に刻まれたほとんど読めない文字ばかり。

 こういうの、ゲームだと意味深な手記とかが落ちているものじゃないのか、読めない文字ばかりとは不親切な。


「お宝もなさそうだな」


 たまに落ちているのは石を削って作った器や飾りなどの破片くらい。金目のものは見当たらないし、ダンジョンにつきものな宝箱もない。神殿の内外に生えている宝石の木が宝物の代わりってことにしておこう。

 そうして歩いていると、神殿の一番奥に、手掛かりになりそうな部屋を見つけた。

 この封土神殿で唯一、石壁で周りを囲われて区切られ、部屋と呼べる空間だ。部屋の中央には見るからに怪しい祭壇が置かれている。


「何かあるとすればこの部屋だよなぁ」


 そもそも岩をくり抜いて作ったような建物の一番奥の部屋だ。ここに何もなかったら、手がかりがなさすぎて困ってしまう。

 部屋の中に入ると、壁一面に巨大な壁画が刻まれていた。

 明かり代わりの宝石がいくつも並んで飾られていて、最奥には石造りの豪華な祭壇がある。

 他には何もないし、誰もいない。


「とりあえずはこの壁画から調べてみるかな」


 部屋に入ったときに、まず気になったものがこの壁画だ。部屋の壁一面に大きく描かれた壁画に近づく。

 文字が読めなくても、絵なら多少は意図を理解できそうだ。

 描かれているのは……モグラか?


「デカいモグラと、それを崇める小さなモグラ?」


 やっぱりここはモグラたちの住処なのかな。この壁画を描いたのもモグラたちなのかもしれない。

 中央には巨大なモグラが一匹、天に向かってスコップを突き上げている。そしてそれを囲むように無数のモグラが描かれ、中央のモグラを崇めている。


「モグラたちの宗教? 王様? 中央のデカいモグラは神様か、もしくはモグラの王様みたいなやつだな」


 別の壁画は、互いに戦うモグラたち。これは戦士の図か?

 そして最後の一枚は、どこか不穏な絵だった。


「巨大なモグラと天の星……」


 スコップを天に突き付けるモグラと、周囲に剣を浮かべた天空の星が戦っている壮大な絵だ。

 スターブレード・ファンタジーで星といえば、この世界を作った大星のことだろう。周囲に剣が浮かんでいるし、間違いない。そしてそれと戦うモグラ。

 ただのモンスターであるモグラと、神様的存在の大星の戦い。下剋上的な?


「絶妙に意味深だけど、よく分からないな……」


 そもそもこの絵が過去の出来事を表しているのか、それともこれから起こる何かを表現しているのかも分からない。

 でも、何か重要な謎が隠されていそうなことだけは分かる。謎が解けなくて微妙にモヤモヤするなぁ。

 後から見直せるように壁画を何枚かスクショして、次は祭壇に近づく。


「お、謎の石板発見」


 祭壇のそばに積まれていた石器類の中に埋もれるようにして、文字が書かれた石板が落ちていた。

 とりあえず拾い上げてみる。書いてある文字は当然のように読めない。仕方ない、この石板は持って帰ろう。

 祭壇は中央の台座に大きな丸い宝石がはめ込まれていて、その周囲を取り囲むように円形に台座が配置されている。床には魔法陣のような奇妙な紋様が刻まれていて、不思議な感じだ。

 中央の宝玉も、何か飾りというよりも装置の一部みたいにみえる。


「これ取れたりしないかな」


 真ん中の祭壇に飾られている大きな宝石が取れないか、触れてみる。


「あっ、ダメか。がっちり固定されてるな」


 力をかけても宝石は外れそうになかった。

 流石にこれを持って帰るのはNGか。見るからにキーアイテムっぽいんだけどなぁ。


「仕方ない、他にはなにか――」


 そのとき、手で触れた巨大宝石が淡く光を放ち始めた。

 突然発生したエフェクトに驚き、慌てて手を放す。しかし光は収まらず、


「えっ、何コレ。もしかしてヤバい?」


 混乱している間にもどんどんと光は増し、やがて部屋全体を満たした瞬間。


「うっ……!」


 あまりの光の強さに目を閉じ、そして再び目を開くと。


「……ワープした?」


 鳥の鳴き声と風でそよぐ木の葉の音。どうやら俺は地上にワープさせられたらしい。

 地上に帰ってきた、のか?


そろそろ主人公にも強くなって貰わねば

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