第五十七話 バーストソード
「おう、来たか。待っておったぞ」
倉庫の前に学園長がいた。
「おーい、持ってきてくれ」
倉庫の方へ声をかけた。数人の研究員達がぱっと見、棺桶なような物を持ってきた。
「でっかくなってしもうたわい」
「切れない範囲を探したらこうなったと」
「そういうことじゃ」
鞘の大きさは長さ2メートル、柄も合わせて全長2メートル50センチ。幅1メートル、厚み20センチ。デカイ。
「さらに普通の抜き方では鞘が壊れてしまう。取り出し方は鞘の近くにあるひねり錠を360度回すと」
学園長がひねり錠をまわすと、鞘は扉のように開いた。
「このように自動的に鞘が開く」
「ふむふむ」
「かなり頑丈な鞘じゃ。100メートルの崖から落としてもびくともしないレベルじゃ。日頃荒く使ってくれても問題ない。それでも当然刃物の前に晒すと切れてしまうがの」
「潰してしまったら言ってくれ。その棺桶、じゃなかった鞘をなおす」
研究所では通称棺桶って言われてそう。
「ま、まあ、少々変なデザインになってしまったが持ち運びができるからね、ね」
「いやいや、持ち運べるようになるだけでも凄いですよ」
実際凄い。鞘も本来は神話生物の欠片が必要だからね。そのくらいの物をこの人達は作ってしまったわけだ。
「ありがとうございました」
「フフフ、今回の仕事は楽しかった。目標も出来たことだしの、あの金属を加工するという」
「ああ、ドミクディヴァリウムですか」
「うむ。何としても儂が生きている間に加工技術を発見してみせる」
鍛冶が好きなんだな。
「それではこれで」
「またな」
研究所から出た。
「しっかし大きいわね」
「使い心地を試してみる?」
「そうしようかな」
ギルドへ。が、大剣が扉に引っかかった。
「そうだよねぇ、2メートル50センチあるんだっけ」
「斜めにしてっと、よしいけた」
「なかなか大変だ」
「なに、今に慣れるさ」
「元々大きい大剣持ち歩いてたからね」
「ただ、小さい扉だと入れないかもねぇ」
ギルドにいるほとんどの人が俺の方、鞘を見ていることに気づいた。ちょっと恥ずかしい。
「ははは、目立つよね」
適当な依頼を受け街の外へ。
「スムーズに剣を出せる方法を探すかな」
しばらく剣の取り出し方の研究をした。
「よし、これだな」
鞘の先端を地面に置き、前へ移動と同時にそのまま鞘がこちらへ倒れるようにする。ある程度斜めになったところで柄を掴み、ひねり錠を回す。鞘が開いたら剣を取り出す。鞘は頑丈にできているからそのまま倒す。
「おお、スムーズに取り出せるようになったね」
「何事も慣れさ」
まあ、もしもの場合は鞘をぶっちぎって取り出せばいいしな。
「それにしても見てるだけでも背筋が凍る剣ね」
「見た目より切れるって話だから剣を抜いたサイモンには近づかないようにしないと」
ゲームでも刃物から30センチ位にある物はいつの間にか切れてしまう、という説明があった。試しに木に触れないようギリギリの距離で剣を手で持って固定。
「ズバン」
程なくしてゲームの説明通り30センチほど木が切れる。
「こっわ!」
「一応説明では刃物から30センチ以内にあるものは切れる、とのことだ」
「了解、気をつける」
「ところでその剣の名前は?」
「バーストソードって名前だったな」
「ふむふむ」
レベル43。かなり上位の武器ではある。
ふと思ったがこの世界はゲームとは微妙に違う。もしかしたら最強のレベル50武器より強い剣があるかもしれないな。
「ちょっと狩りをしてみようか」
「うん」
討伐対象の魔獣を探す。
「いたいた。離れていてくれ」
上段に構えそのまま魔獣に向かって振り下ろす。
「スゥッ」
凄まじい切れ味だ、斬った時に音がしなかった。
「パタン」
魔獣を真っ二つ。
「ヒュー、怖い剣だ」
「まったく」
「取り扱いには注意だな」
依頼を片付け皆で飲み屋へ。
「王都最後の夜、皆で楽しもう! カンパーイ!」
「カンパーイ!」
皆で喉を鳴らしながらエールを飲む。
「ぷはー!」
「予定以上の収穫があったし装備集めして正解だったね」
「神話クラスの武器が手に入っちゃったけど」
「ある意味笑いどころだな」
「色々あったがようやくホームでのんびりできそうか」
「行ったり来たりで忙しかったね」
食事に飲みに。しばらく談笑していると、頼んだ覚えのないお酒がテーブルに置かれた。
「あちらのお客様から皆さんへとのことです」
フードを深々とかぶった男、王様だな。
ペコリとお辞儀をする。王は気にするなというような素振りをした。
「王様はロイさんのことをかなり気に入ったらしいよ。それで俺も彼にあやかって皆の胃袋を掴もうって話になったらしい」
「それでお酒なのか。王様らしいな」
「下心があったらダメですよって言ったんだけど俺は常に下心を持っているからどうしようもないな! と開き直ったんだって」
「それも王様らしい」
ふふ、面白い王様、楽しい国じゃないか。
出来ればこの生活がいつまでも続けばいいなと俺はその時思っていた。




