第五十五話 新しいユニオン
「中子の部分を少し削りたかったんですが、全く削れませんね」
特殊なヤスリで角の根元をこすってみたが削れる様子はなかった。
「素材そのままで作るしか無いのぉ。幸いなことに形状は悪くないからなんとかなるじゃろ。それよりも柄が」
寸法をとる。
「この金属を最大限まで熱してみてください」
槌用のやつはそのまま使えそうだな、頑丈に固めてくれてある。ちなみに中子をヤスリで削ったのはフリ。ゲームではそのまま柄とくっつけていた。いきなりそれをやると変に怪しまれるかなと思い芝居をうってみた。当然寸法をとっているがそれもフリだ。ゲームでサイズがわかっているからね。
しばらくしてドミクディヴァリウムが最大限まで熱され俺の前に。
VRモード起動、ゲームスタート。とにかく叩く指示が出ている。音楽似合わせ槌を振るう。
「ガイーン、ガイーン!」
「お、おお。なんと形が変わった!?」
驚く学園長達。そして金属が形を変えた力の正体とは?
そう、腕力です。
「ガイーン、ベキン!」
叩き続け柄くらいの大きさの金属を切り離した。
後は加工。こちらのほうが繊細で当然難しい。かといって腕力も求められる。なかなか厄介な作業だ。
「カンカンカン、トントントン」
途中また熱したりと、音楽に合わせ作業すること2時間。遂に柄が完成した。
「凄い、コイツを加工しおった」
「とにかく力、腕力で叩いてみました」
「な、なるほどのぉ」
角に取り付けてみる。
「カシン」
ついでにオリハルコンについている宝石をこちらに移しておいた。
「ふむ、完成じゃな。後は鞘じゃ。そっちは任せろ、と言っても色々実験が必要じゃから時間はかかるがの。また数日くれ」
「わかりました」
「ああ、ミューの剣はあそこに飾ってあるやつじゃ。持っていってくれ」
「はい」
「サイモンさん防具なんですが」
研究所所長のモールさんが話しかけてきた。
「後一週間くらいで全部完成すると思います。のんびりお待ち下さい」
「了解しました」
「では、失礼します」
研究所から出た。
「早速剣を試してみようかな」
町の外に出る。
「これは、不思議な剣だ」
ゴクリと喉を鳴らすミュー。そのまま剣に魔力を込めた。
「ウインドスラッシュ」
高速で魔法が伸びた。25メートル位か。
「うん、魔力がアップするね。剣というよりも魔法の補助装置のようなモノかな」
「よっしゃー! 付き合うわ!」
ファムとしばらくどつきあう。
「魔力量も増えた。高機動も12回は使えるな」
「また強くなった!」
ふむふむ、単純にパワーアップと言ったところか。
「そろそろ夕飯だね。街に戻ろう」
街に戻り適当な店で夕食。
「これで素材集めは一通り終わったかな?」
「だね」
「大変だったー」
「お待たせしました、エールです」
エールがテーブルに運ばれてきた。
「とりあえず「大仕事終わりにかんぱーい」」
「カンパーイ」
木製のジョッキを打ち合わせた後、ゴクゴクとエールを飲む三人。
「プハー! 冷えたエールは最高ね!」
「後は一週間のんびりしておけばいいかな」
「鞘はどうなるかわからないけど待つしかないね」
「んだね」
「ゴロゴロしていると逆に疲れるからギルドで依頼でも受けるかね」
「そーするか」
「結構お金が減ったから、稼いだほうがいいね。まあまだ10年は遊んで暮らせる額はあるけど」
「いつたくさん欲しくなるかわからないからね」
「それはある」
次の日、ギルドのテーブルで話を。
(ん~? カラロッカ団、かなり減ってるな)
左からカラロッカ団小、中立特大、エンド結社小と中立派が圧倒的に増えていた。
(エンドも減っているな。何かあったんだろうか)
(うん、カラロッカ団も幹部クラスがやらかしたらしくてね、それも複数人。それで一気に人が離れたみたいだ)
(中立でユニオン旗揚げの話が持ち上がってね。それでエンド団も更に減ったようだよ)
(へぇー)
どんな人物か気になり、中立側を観察する。
(おや、カニ鍋の人?)
中立の中心にカニ鍋を作って食べさせてくれた人がいた。
(ロイ・シオさん、あの人がリーダーになって新しいユニオンが出来るって聞いた)
(へー)
(特に強いとか弱いとかはない冒険者の人なんだけど一つだけ得意なことがあって)
(得意なこと?)
(料理するのが好きらしいんだ。それで冒険するたび、そこで料理を作ったりするらしいよ)
(ふーむ、てことは)
(多分みんな胃袋を掴まれたんじゃないかな。狙って胃袋を掴んだわけじゃないからそこにいやらしさもない)
(食か、それは確かに大きなことではあるな)
(あの人なら平和なユニオンを作るんじゃないかな)
(俺もそう思う)
仲間に囲まれ照れくさそうにしているロイさんを見て、俺は自然と笑顔になった。




