第四十八話 エンドレス
本来の予定と違って危険な相手ではあるが彼女の気持ちに応え任せることにした。
「あなたの相手は私よ」
「グォン」
前に歩み出るファム。それを迎え撃つオリハルコンの巨人。
「バリバリズシャー、ブオン」
巨人は埋まっていた岩を無理矢理掘り起こし、ファムに投げつけた。
「ハッ!」
拳の一撃で難なく迎撃、が眼前に巨人はいなかった。
「ん、まさか逃げた?」
もちろんそんなはずはなく、ファムの下の地面から巨人の手が生えてきた。掴もうとしたが間一髪、ファムが気づいてバックステップでかわした。
その後すぐ地上に現れファムに突進、高速の打撃を数十発浴びせる。
「グッ」
ほとんどかわしたが数発は貰ってしまったようだ。腕に数箇所、痛々しいアザができている。
「大丈夫か?」
俺が気にしている間に彼女の傷が治った。そうだったな、彼女は特別性だった。
「大丈夫よ。ただ、予想以上に強いわね、彼」
その後も少しファムが押され気味で戦いが続く。
「このままじゃ埒が明かないか」
特殊な構えをとった。
「エルフ族奥義、『T.R.U.C.K.』」
高速で突進、巨人に技を浴びせた。だが。
「ヒョイッ」
「ウソッ、かわされた!」
そのままカウンターで蹴りを喰らうファム。
「ドガァン」
後ろにあった小岩に向かって吹っ飛ぶ。当たった瞬間、小岩が弾け飛んだ。勢いはまだ収まらず更にその後方へ吹き飛ばされるファム。
「クルン、ズシャ」
数十メートル吹き飛ばされたところで勢いがおとろえ、体を捻ってうまいこと着地した。
そろそろ限界かな?
「フゥーーー」
大きく呼吸をして脱力。彼女の周りの空間が歪んで見える。ファムの闘志はまだしぼんでいない。それどころか歪みが徐々に広がっている。
「グォーーー」
彼女めがけひとっ飛び。頭上から巨人が襲いかかった。
「ドゥーーン」
先程の闘気が圧縮され彼女の手の中に。
「エルフ族秘奥義『K.Z.C.』」
手を合わせ巨人に向かって突き上げた。本来、その態勢、かたちから放った拳では大したダメージを与えられない。だが、彼女の拳に触れた瞬間、巨人が崩壊を始めた。何とも不思議な光景だったが、なんだか心が安らぐような、そして俺のVR音楽のように曲が聞こえてきそうな、そんな雰囲気を感じた。
「バゴーーーン!」
ファムの攻撃で巨人は粉々に粉砕された。
「強かったー」
「よく倒したな。かなりの強さの敵だぞ」
「えっへっへー、ちょっとやばかったけどね。終始押されてたし。あの技がなかったら勝てなかったよ」
「しっかし、オリハルコンか。これは良いお金になりそうだね」
「回収係の人を呼びに行こう」
村に戻る。非常に慌ただしく動く人々、何かあったようだ。村の中を少し歩く。
広場で縛られている人達を見かけた。
「あれは守衛のタイチさん、隊長のアバターさんまで」
他、数名の冒険者が縛られ広場に。
「皆さんご無事でしたか」
「あなたはカブさん。一体何が起きたんですか?」
「ええ、彼らはゴーレムの件を捏造して運営していたんですよ」
「んんー?」
「ゴーレムは彼らが用意したもの。それで村を襲うフリをしていたわけです」
「あ~、自演てことですか?」
「そうです」
んーむ、全く気が付かなかった。
「もう解決したのでバラしてしまいますが、私は国側から派遣されてきたいわばスパイですかね、それをやっていたんですよ」
「なるほど」
「元々ゴーレム研究家でして。あ、それが高じて人形使って悪さをしていたわけなんですが、おっとこの話はおいておいて」
「コホン、この件の経緯なんですが、最近この辺りで三賢者を見たという情報が入りましてね」
「そちらを追っていたらゴーレムの件とつながっていることがわかったんですよ。まあ、ゴーレムの件の首謀者がなかなか見つからず苦戦していたんですけどね」
「三賢者がゴーレムを作って彼らがそれを使って依頼を出させていたってことですか?」
「そのとおりです。三賢者は取り逃してしまいましたがね。取り囲んでいたんですが逃げられてしまいました」
「しぶといですね」
「そのかわりと言ってはなんですが大量のオリハルコンがみつかりました」
「バ、バカヤロウ! そのオリハルコンは俺のだぞ!」
アバターが声を荒げる。
「そもそも今までのあなたの仕事が怪しいという情報が入ってきています。もしかしたらそのオリハルコンも」
「ちくしょーー!」
「となると国が没収しておしまいかな。さっきオリハルコンの巨人を倒したんですけどね」
(オリハルコンゴーレムの聞き間違いかな。きっとそうだ)
「そうなる可能性が高いですね。悪どい手段で手に入れた可能性が高いオリハルコンですから」
「そりゃそうですよね」
「ただ、依頼の方は報酬が出るハズです」
「ふむ」
「それでは失礼します」
カブは去っていった。
「一応私の予感は当たっていたか」
「だな」




