第三十四話 激しいサイモン家
そうだ、クリスは魔女なんだから魔力については専門家だろう。彼女に聞いてみるか。
「じゃあ遠慮なく、どうもミューの魔力総量が伸び悩んでいるようなんだ。増やす方法とか無い?」
「あるよー」
非常に軽く答えるクリス。
「そのくらいなら任せなさい!」
「は、ははは、ありがとう」
「と言ってももちろん限界はあるからとりあえず魔力を視るね~」
「それじゃおでこをゴチっと」
「わわわ」
クリスはミューの額に自分の額をあてた。
「ほうほう、ほうほうほうほう」
額をぐりぐりしながらうなずいているクリス。器用だな。
「あなた、すごいじゃない。子供の頃から訓練していれば魔女になれたわね。そのくらい素質があるわ」
「まだ魔力総量が上がる?」
「上がる上がる、余裕で上がる。私達のレベルまでは上がると思うよ~」
「なら、ホウキも乗れるのか?」
「あれは無理。何故かはわからないけど子供の頃から魔女になって訓練しないと乗れないね。えーっと、音楽で言う絶対音階みたいなやつ?」
なんとなく納得。
「んじゃこれで」
胸元から小さな宝石を取り出した。
「これは魔力に負荷をかけて地力を上げるやつね。簡単に言えば持っているだけで筋トレしているようなものかな。いくつかあるんだけどとりあえずこれからだね。契約が必要なんだけどどうする? やる?」
「頼むよ」
「OK! それじゃ契約するね」
何やら呪文を唱え始めるクリス。
「その宝石を強く握って」
「わかった」
言われたとおり宝石を握り力を込めるミュー。
「ぐっ!?」
「効いたかな。最初は結構クルと思うけどそのうち慣れるよ」
「その石が割れたら次のやつをやろう。あ、私は森に住んでるよー。これ住んでいる場所の地図ね」
小さな地図を渡された。
「いやー今まで人里にあんまり近づけね買ったんだよね。流石に仕事のときはここへ来なくちゃいけなかったけど」
「これからは自由だな」
「そそそ!」
満面の笑みのクリス。しかしそうだよな、彼女の今までを考えれば笑顔になるか。
「ふぅー」
ミューは体調が悪そうだ。先程の魔力に負荷をかけるってのが効いているのかな。
「大丈夫か、ミュー?」
「ええ、大丈夫。それにもう慣れてきたよ」
「そうか」
(ぐっふっふっふー、優しい彼氏さんねー)
(私達そういう仲じゃ……)
(エーーーーッ!!)
目が飛び出そうなほど驚いているクリス。
(一緒に住んでて毎晩家から獣のような声がするって噂を聞いたから激しいことになっていると思ったんだけど)
(ああ、獣ならお風呂に入りに来てるよ。ってそんな話になっていたんだ……)
(ん~、まいいけど!)
「ありがとうクリス」
「お安い御用よ! じゃねー!」
冒険者の集団の中へ入っていくクリス。
(ねえねえみんな! 別にそんなこと無いって)
(流石に恥ずかしいから本当のことは言わないだろ)
(それもそうね!)
冒険者達と和気あいあいといった雰囲気だ。触れ合ったのは短い時間だが明るい子なのはわかった。これからは楽しく生きていけるんじゃないかな、良かった。
(もしかして変な意味で有名人になっているのかな……)
昼食を食べに外へ。
「まだ普通に動けないな。さっきよりは全然いいけど」
魔力養成ギプスってところだろうか。
昼食を食べてまたギルドへ。
「あ、サイモンさん。ギルド長がお呼びです」
「コスラさんが? わかりました」
先程の部屋へ。
「おお、来たか」
「どうしました? コスラさん」
「さっきコイツが届いてな」
袋からアイテムを取り出すコスラ。
これは魔力で空を飛べるブレイドだ。
「そうブレイドだ。二人に使用許可がおりたぞ」
「やったー!」
「良いんですか? 俺から言っておいてなんですけど機密部分に当たるのでは」
「ふむ、それは大丈夫。それどころか逆にこちら、国側が君達、ブレイド使用者を利用することになってしまうんだがな」
「と言いますと?」
「この王国の北にある国、アンガルが今後こちらに攻めてくる可能性が出てきたんだ」
「なんと」
「北の国は確か鎖国をしていますよね?」
「そう。前王までの方針はな」
「最近レジスタンスグループの『マスール』に政権を奪われたそうだ。そのマスールが非常に攻撃的でね。すぐに攻めてくることはなさそうだがいずれは戦争になるだろうとのことだ」
「厄介な奴らが上になっちゃったのね」
「そこでブレイドだ。国の技術力を見せつけるため使ってもらうことになる。自国に対しても、マスールに対しても」
「魔女にしか飛べないと言われていたが誰でも飛べるとなるとそれだけでも敵国からしたら脅威、国民には強力な武具として見られるから『うちの国は凄い、強い』と安心感を与えられるわけですね」
「しかし当然奪われる可能性もある。使用者は強い者に限定される事になった。まあ数もそんなに無いらしいがな」




