第二十六話 大きな翼、再び
「おや、あの人達は」
大きな翼に太めの尻尾、竜人族の人達だな。この街に来たときからたまーに上空を飛んでいるのを見かけていた。ここへ買い出しに来ていたのか。
通常のリュックサックと違い前側に袋が付いている。空を飛ぶから特殊な作りの袋を使っているんだな。
おや、ソメノ王女もいるようだ。近づいて話をしてみた。
「ソメノ王女、お久しぶりです」
「こ、これはサイモン殿、お久しぶりです」
「今日はなにかの用事で?」
女性の竜人が話に入ってきた。
「あ、この人がサイモンさん? 王女様があもごっ」
女性の口をリュックで抑え込むソメノ王女。
「ええ、買い出しの手伝いを」
「ほ~、王女が手伝いを?」
「私は王女と言っても嫁いでしまえば一般の竜人になります。そもそも兄が居ますから王位継承とは全く関係ないです。そこで父上は私には一般の竜人がしている仕事もやらせるという方針をとっているわけです」
「しっかりした王様ですね」
いやいや感心感心。一般の竜人になるとは言え今からその勉強までするとは。竜人の一族には頭が上がらない。
「王様に無理やもごっ」
「そ、それで今日はサイモン殿の暮らしはどんな感じか教えてもらおうかと。一般の方の暮らしをみておきたかったのです。ですからこれから訪ねる予定でした」
「なるほど、そういうことでしたらぜひ協力させて下さい」
「では皆さんいってきます」
「あ、それからファムと同じ扱いでお願いします。私は元々敬語使いなのでこのままですが」
「わかった、ソメノ」
俺達は一旦家へと帰った。
(まったく、王女様は素直じゃないんだから)
「ここへはよく来るの?」
「ええ、ここのお肉はとても美味しくてよく来ます」
「ここはおいしいよね」
「どうぞ、ここが俺達の家だ」
「硫黄の匂いがしますね」
「温泉があるのよ」
「温泉!」
「ははは、だから一般とはちょっと違うかもしれないね」
「ふーむ」
ウチの自慢の温泉を紹介。
「うわー、入りたい」
「時間は大丈夫?」
「いえ、今日はもう時間がありません。今度時間があるときに是非」
「いいとも」
「ではまた後日」
ソメノは帰っていった。
「俺達も昼ごはんを食べに外へ出ようか」
昼ごはんを食べに出かける。今日はそのまま夜まで街の中をブラつき夕食も外で食べた。
お酒も飲んでいい時間になったので家に帰る。
「お風呂入ってくる」
「はーい」
個室の温泉へ向かった。
(ソメノ、どう思う?)
(あの子はもう手遅れじゃないかしら)
(そんな雰囲気だよね)
(サイモンは全く気づいてなかったわね)
(酔っ払った女に手を出さない男だからね。この前なんて二人をベッドに突っ込んでおいて自分は椅子に座って寝てたよ? 当然それくらいじゃ気づかないだろう)
(ちょっと話しの方向性は違うと思うけど、そうよね)
(ハァ)
「ふぅ~、いいお湯だ」
ほどよい熱さ、ちょっぴり硫黄の香り。やっぱり温泉は良いね。
「二人には話しておくべきか」
人間動けば動くほどボロが出る。そろそろ適当に隠すのは無理がある状態になってきたかな。この後、もしくは明日の朝にでも俺の正体を話すか。
風呂から出て居間に戻る。そこから1時間ほど待った。
「なかなかあがってこないな」
さらに1時間。これは流石に遅い。
「俺よりも先に寝たかな?」
二人の部屋を確認したが誰もいない?
「まだ風呂? そんなことは」
脱衣所に二人の衣類が。
「何かが起きている?」
嫌な予感がする。急いで温泉へと向かった。
「こ、これは……」
そこには凄惨な光景が広がっていた。
裸で床に倒れている二人。手にはお酒の瓶。
「もう、飲めないぃ、むにゃむにゃ」
「……後で説教だな」
ブツブツとつぶやきながら彼女達を部屋まで運んだ。
「すみませんでした」
「すみませんでした」
次の日の朝、流石に嫁入り前の女の子二人がお酒飲んで全裸でお風呂場に転がってるのはどうかとおもいお説教をした。
「楽しく暮らすのはいいけど限度ってものがあると思うよ。以後気をつけるように」
「はい」
「はい」
「ではご飯を食べよう、いただきます」
朝食後、俺の正体を二人に話す。
「今まで黙っていたけど――」
真剣に俺の話を聞く二人。
「ふーむ。なんか変だとは思っていたけどここの人間じゃなかったわけね」
「でも待って。その話だと修行して強くなったってことになるけど」
「そうだよ。強さは元の世界でもこんな感じだった」
「そ、そう」
VRモードについても話した。アクセサリの件も。
「なんだかよくわからないけど特には問題なさそうだ」
「へぇ、特殊な力があるのね、このペンダント」
「この件は秘密にしておいてくれ」
「了解」
「わかったわ」
すんなりと話しが終わった。さんざん暴れまわってきたから色んな意味で俺に慣れているのかもしれない。
「サイモン、これからもよろしく」
「よろしくね、サイモン」
「二人共よろしく頼むよ」
問題なく俺を受け入れてくれた二人に感謝した。




