第二十一話 それぞれの思い
昼食を食べ終わり一服中。
「余は遊びに行ってくるぞ!」
「いってらっしゃーい。晩御飯までには帰ってきてね」
「わかっておる!」
土煙を上げながら山へ向かって走っていった。
「元気じゃの」
茶をすすりながらアネスの後ろ姿を眺める博士。
「儂は一旦国へ帰る」
「俺は街へ」
キットさん、博士、ポピン、モアは王都ドルンゴへ。コスラさんは街に。シャールさんはそのまま残るようだ。
「王に今回の件をお話してきます。申し訳ないですがサイモンさん達はしばらくここにいて下さい。そうですね、遅くとも二週間くらいでそちらに連絡がいくかと」
「わかりました」
昼食後、皆それぞれの目的地へと向かっていった。
次の日。俺、ミュー、ファムの三人は村の周辺をブラブラと歩いていた。
「あそこでは魚をとってるね」
ゆったりと流れる川、膝より上が出るくらいのところで銛を構えた男とアネスを見つけた。
「アネスもいるな。行ってみようか」
「どうだどうだ。余の実力は!」
「はっはっは、すごいねアネスチャン。あ、これはこれはサイモンさんこんにちは」
「こんにちは。魚をとってたんですね」
「はい」
当然、音楽ゲームバトルマトリックスにも釣りや漁猟はある。
「面白そうですね。俺にもやらせて下さい」
「いいですよ」
銛を借りる。
「あのへんの岩に囲まれた浅瀬がいいとおもいます」
おすすめの場所までいってVRモード。普通、攻撃主体かな。音楽スタート。
音楽に合わせて水中の光ってる場所へ向けて銛を突く。見事さかなに突き刺さった。魚をカゴにいれ次の獲物へ。これを繰り返す。
数匹捕まえて漁師さんのところへ戻った。
「一瞬でそんなに。いやいや、二人共すごいな~」
「やるではないかサイモン。余も負けてられんのぉ!」
「あ、アネスチャン、これ以上取ると魚が居なくなっちゃうんだ。今日のところはこんなもんで」
「はっはっは、仕方ないのぉ。では他のところへ行ってくるか。さらばだ!」
山の方へ飛んでいった。
「話がわかる子でしょ? 吸血鬼のときからこんな感じでした。彼女ならこれからも一緒に暮らしていけると思うんです」
「そうですね」
この村の彼女に対する信頼は厚い。ふふふ、心の優しい人達が多いんだろうな。
「ちょっとやんちゃですけど」
「そう、ですね」
村への帰り道、景色がいいところを見つけ三人で眺めていた。
「きれいな眺めね」
「ん? あれはなんだろう」
飛行する物体がいくつか確認できた。
「あれは王都にある国立魔女学院の生徒たちじゃないかな。ほら、ホウキで飛んでいる」
なるほど、よく見るとホウキで飛んでいる。
「ちょっと変わったところらしいけどね」
ホウキにまたがって乗っている子、サーフィンのように乗っている子、回転するホウキの上を走りながら乗っている子、ホウキについている王座に座っている子。
「なるほど」
納得し村へと帰った。
王都ドルンゴにある王城コクム。
「王よ、只今帰還しました」
「ご苦労だったキットよ」
「お前達もよくやってくれた」
「ありがたきお言葉」
「速報は聞いておる。詳しく聞かせてもらおうか」
「はい」
厄体を退治したこと、大地のエネルギーを吸い込んでアネスが違う生物になり更に強くなったこと。そのアネスをサイモンが制圧できること。キットは起こったことの詳細を王に伝えた。
「なかなか厄介なことになっていたのだな」
「アネスより強いシャール、それより強いアネス、それより強いサイモン、と言ったところですか」
「わかりにくっ!」
「とにかくサイモンさんの剣さえ確保できれば今まで通りで問題ないかと」
「サイモンとやらはどうだ?」
「しばらく同じ時間を過ごしまして問題はないと個人的には結論づけております」
「ふむ、キットが言うのならば大丈夫だろう。剣は宝物庫から良さそうなものをに持っていくが良い」
「はい」
「……ところで例のものは?」
「はい、厄体退治は予定外の展開となりましたが予定数の地精球にエネルギーを注入することには成功しております」
ポピンとモアが道具袋からこぶし大のサイズの玉をいくつか取り出した。
「うむ、上出来上出来」
「厄体に衝撃を与えた時に出るエネルギーをこの地精球に吸収。ふぉっふぉっふぉ、我ながらすごいものを作ってしまったわい」
「後は研究機関に渡してくれ」
「はい」
「どうです? 『ブレイド』の制作状況は?」
「90%と言ったところかな」
「もう少しですね」
「ああ。これが完成すれば北からの脅威に対して一つの奥の手が出来る」
「……はい」
「それでは失礼します」
キット達は城から出ていった。
「北からの脅威、か。今後どう行動するかも考えなくてはならんな」
王座に座ったリテン王は目をつむり天を見上げ大きなため息をついた。




