第二十話 超強力な生物
「とすると他に変わったところもあるかのぉ」
「そうだ、さっき血を吸おうと魔獣に噛み付いたんだが血を吸えなかった」
「ふむ、誰か食料を持っている者はおらんか?」
一人の村人が干し肉を博士に渡した。
「これはどうじゃ?」
「おお! うまい! こんなに美味いものは生まれてはじめて食べたぞ!」
「そこも変化したようじゃな。まあ簡単に言えば『超強い生物』に生まれ変わったようじゃ」
「もっとよこせ!」
「そうじゃな、さしずめ『シャインオーガ』と言ったところかの」
シャインオーガのアネスはもちろんゲームに出てきた。ゲームではシャインオーガとして出てきて元吸血鬼という説明はなかった。
強さは竜の王以上。
「そう……ですね」
シャールさんの顔色が悪い。
「アネスや、村の人達と先に帰っておくれ。儂らはもう少しここにおる」
「わかった! さあ、皆の者行くぞ! 食べ物が余を待っておる!」
「おう!」
数人の村人を引き連れアネスは村へと向かった。
「困ったことになりましたね」
「うーん。三賢者の件よりも厄介かもしれんな」
なんとなく察しはついたがその理由をたずねた。
「強さじゃよ。アネスよりもシャールのほうが強かったから自由を許されていたところがあった。もちろん敵意がないことも考慮されての。それがシャールを大きく越えた強さを手に入れてしまったからこのままでは国が許さない可能性が高い」
「吸血鬼よりは安全ですが強大な力を持っている、ということに関してはどちらも『危険』。むしろ誰も制圧できないとなると……」
「国外追放、最悪抹殺じゃな」
「……ですね」
「サイモンさんなら大丈夫じゃないですかね?」
ポピンが唐突に俺の名を挙げた。
「彼がこの中で一番強いんですよね。ですから後で試してみましょうよ」
「なんと、シャールを上回る強さとな」
「その場合、どうなりますかね?」
「うーん、屋敷がないから村住まい。サイモン殿が村に住めば完璧じゃが、この場合は街でもいいかもしれんな。元々敵意はまったくなかったからの」
「彼女を制圧できればほとんど今まで通りということですね?」
「そういうことになるの」
「わかりました。後で彼女と対戦してみましょうか」
「ふむ、頼むよ。儂としても彼女には幸せに暮らしてもらいたい」
彼もまた彼女を大切に思う人間の一人なわけだ。
「では我々も村へ帰ろうか」
村に到着。
「あー、アネスチャン。話があるんだけど」
「どうした? 何でも余に言ってみるがいい!」
適当な話でアネスを誘い出す。
「ここらなら広くて戦いやすいかの」
「そうですね。ここでやりましょうか」
「ああ、言葉使いは砕けたもので良いぞ。余の心は広いからな!」
「わかったよアネス」
VRモード起動。本気マイナス2の攻防一体。
シャインオーガのアネス。武器はハルバード。機動力が高い、攻撃力が高い、飛行能力を所持。ゲームでも公式チートと呼ばれるくらい強かったな。
音楽スタート。
「いくぞ!」
一瞬で間合いを詰めてきた。アネスはそのまま突きを放ってきた。剣で切り上げたがかまわず斬りつけてくる。これは間合いを離してかわした。
今度はこちらから。太ももあたりを狙って斬りつける。しかし飛行でかわされた。飛行して後方に下がったっと思ったら超高速で近寄りながら突きを放ってくる。これをブリッジでかわした。
「やるじゃないかサイモンとやら! パワーアップした余と難なく戦えるとは!」
「いやいやアネスも強いよ」
(どうじゃシャール? サイモンはアネスを制圧できそうか。見ていても二人が消えてたまにあらわれる、デカイ音だけは聞こえる、といった感じで全くわからんのじゃが)
(どちらも本気を出してないようですね。ですからどちらが強いってのは現状わかりません)
(これでお互い本気じゃないじゃと!?)
それから30分ほど戦ったが勝負はつかず。
「ハッハッハ! いい運動になったぞサイモン!」
「いやー、運動をしたらお腹が空いた」
「ピーチおばさんが料理を作ってると思うよ」
「ふむ。では先に行く!」
アネスは村に向かって飛んでいった。
「どうですかサイモンさん。彼女を制圧できそうですか?」
「一応可能かと思います」
ゲームではラスボスよりも自分のほうが数段力が劣ると言っていた。感覚になるがこちらのアネスもそのくらいかなと思い制圧は可能と伝えることにした。
「ですが改善しないといけないことがありますね」
「改善とは?」
「武器がもたないかもしれません。これ以上に強力な武器がほしいですね」
「ふむ。そこは早めに解決しなくてはならぬな」
「武器に関しては私が王と相談してみましょう」
「お願いします、キットさん」
「グレートソードでいいですよね?」
「はい」




