18、土魔導士、監査人へタックスを納める。
「たしかに、タックスを受領いたしました」とキエナは言い、領収書のような紙に走り書きをする。
ここはトルトゥーガの領主の館で、ブルーに扮したオルテガはここでキエナと対面していた。ここには二人しかいない。オルテガとキエナの二人だけ……
「しかし、これだけのものを持てるのか?」とオルテガはちらりと自分の脇に山のように積まれた金貨と財宝を見やる。
この財宝はブルーとバクラムがここを支配している間にため込んだ財宝だった。オルテガはブルーの手下に、ブルーが今までため込んだ財宝を集めるように指示したのだ。そして、その財宝は一か所に集められ、今オルテガの手の中にあった。
「大丈夫ですよ。何のために監査人がいると思っているんですか?」とキエナは無表情のまま言うと、自分の座る椅子の脇に置かれていた古ぼけた鞄を取り出した。
キエナは座ったまま、その鞄の口をあけると、渦を巻くような気流が発生し、財宝は即座に鞄の中に吸い込まれていった。
キエナは、ほらね、という笑みを作る。
「一応言っておくが」とオルテガは釘をさす。「金貨だけで1000万ゴールド以上はあったぞ」
「そうですね。1321万ゴールドでした」
「それに財宝もある」
「つまり?」
「余剰分は俺のものだろ? 違うか?」
「……確かにその通りですね。タックスさえ納めていただければ、他はあなたの分です」
「……」
「……」
「……」
「…………分かりましたよ。返しますよ。余剰分だけは……」
「キエナ、そこで頼みがあるのだが」
「なんです?」
「できれば金貨は、ここに残してもらいたい。立派な兜やら、金の延べ棒やら、よく分からん財宝があるだろう? それを現金化し、そこからタックスを回収してほしい」
「やれないことはないですが……。いくらで売れるかなんて保証できませんよ。その場合どうしても金貨が要ります」
「キエナ、少し考えてみてくれ。どうしてトルトゥーガとアルカーキの街が盗賊たちに占領されるようになったかを……」
「……」
「ここにまともな軍隊が無かったからだ。以前はあったかもしれないが、今はもう無くなった。それを復活させなきゃならん。そのためには、その金貨が必要なんだ。王政にタックスを納めることは確かに必要だが、王政が望むのは継続的にタックスがとれる状態じゃないか? そうだろう? だから俺には今、金貨の方が必要なんだよ。なぁ? 頼むよ」
「……………………ではこうしませんかオルテガさん。まず私はこの金貨の中から1000万ゴールドだけを持って帰ります。そして財宝も持って帰ります」
「いや、だからあのさキエナ」
「最後までお聞きになってください。王家には御用達の豪商が幾人かおります。彼等にその財宝を見せ、一番高い値をつけた者に売る、というのはどうです? 基本的にはそこからタックスをいただくことにしましょう。もしも不足分があれば、金貨1000万ゴールドの中からそれを補うことにする。余ったゴールドはオルテガさんにお返しします。それでどうですか?」
「その話だと交渉過程が俺に全然みえねーじゃねーか。それに、本当はどういう値段売れたのかも俺には分からない」
「そうなりますね」
「お前を信用しろっていうのか? キエナ」
「その通りです。できないならこの話はなしです。ここに財宝を残し、1000万ゴールドだけを持って私は王都に帰ります。いつ現金化できるともしれない財宝をかかえたまま、残りの321万ゴールドで頑張ってください」
「……」
「私のことを相棒だと思うなら少しは信用してください」
オルテガは体の奥から息を吐き出すと、目をつぶった。現状それしか方法がないように思えた。タックスに関する交渉では、どうやらキエナの方が一枚も二枚も上手のようだ……
「OK、まかせたよ。じゃあキエナの案でいこう。なるべく早く現金を持って帰ってきてくれよ?」
「わかりました。では、さっそくこれを持って王都に向かいます」
「あ、待ってくれ、その前にまずあることをやってもらわなきゃならないんだ。透明化のスキルを持つお前にしか頼めないことだ」
「……」
キエナも溜息をついた。そちらの用件を最初に言ってほしかった。
「で、なんですか、やってもらいたいこと、とは」
ブルーの顔をしたオルテガは鼻を鳴らし、自分の胸を指さした。
「俺を殺してもらいたいんだ。今ここで」




