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シャスティング 犠牲になるのは私を愛してくれた人?  作者: 魔神スピリット
第一章

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第18話 楓ご飯

 火野祭り(ひのまつり)が同居するようになってから二週間がたった。

 その間、シャスティングには呼ばれていない。

 五日間で三度も異界に呼ばれたため、何か拍子抜けしてしまった。


 最近、ルーザは内職を始めた。

 油性ペンを組み立て、袋に詰めるという仕事だ。


 普段はマンションの掃除と洗濯を担当してもらっているが、時間を持て余しているらしい。

 なので、もっと俺達に貢献したいと言って、お金を稼ぐ方法を尋ねてきた。

 

 ルーザの長い耳は隠しようが無いため、ろくに外に出られない。

 下手に目立てば、俺達の生活は破綻する。

 よって、ルーザがお金を稼ぐには、マリアの名前を使って内職をするくらいしか思いつかなかった。

 マリアも、時間があるときはルーザを手伝っている。


 祭りはアパートを完全に引き払い、その分浮いたお金を生活費として俺に渡している。

 バイトで稼いだお金は、自由に使えるようになったと言い、喜んでいた。


 ちなみに、授業料と家賃は親に出してもらっていたが、それ以外の生活費は自分持ちだった。

 つまり、授業料以外の生活費を以前の家賃(親の金)で賄えるようになったのだ。

 このことを祭りの親が知ったら、色んな意味で泣くだろうな。

 半分は俺のせいだけど。


「こんにちは」

「・・・また来たの」


 毎週金曜日の昼、俺はいつも同じ店で弁当を買っている。

 お店と言っても、キッチンカーによる移動販売店だ。

 

 半年前にこの”オリジン”という店に出会ってからというもの、俺はここで働く(かえで)さんのファンになった。

 ファンになったというのは、楓さんの容姿や人柄ではなく、彼女の料理の腕だ。


 楓さんは艶やかな綺麗な黒髪を持っているが、愛想が無く、きつい化粧をしている。

 もう少し見た目や言動に気を遣えばお客が来るだろうに。


 ”オリジン”という会社は、調理師免許と普通自動車免許があれば誰でもキッチンカーをレンタルしてくれる。

 店の商品は自分で決める事が出来て、一定以上の収益さえ上げれば働く時間も自由だ。

 つまりこの店の商品は全て、楓さんの手作りというわけだ。


「”三色カツサンド”と”野菜たっぷり唐揚げ弁当”に”野菜たっぷり海老天弁当”をお願いします」


 “三色カツサンド”は、豚、鶏、牛のカツを使ったサンドイッチだ。

 豚カツにはフルーティーなソースにマスタード、チキンカツにはオリーブオイルが利いたタルタルソース、牛カツにはワサビが利いた醤油ベースのソースが使われている。


 ”野菜たっぷり唐揚げ弁当”は、胸肉ともも肉の唐揚げに、わずかだがパリパリに揚げたせせりに、たっぷりのタルタルソースと甘酸っぱいタレが掛かっている。


 ”野菜たっぷり海老天弁当”には、巨大な海老天に、人参、カボチャの天ぷら、枝豆とゴボウのかき揚げの上に天つゆが掛かっている。


 ”野菜たっぷりシリーズ”は、その名の通り野菜が盛り沢山で、さらに酢飯が使われている。

 というか、この店のご飯物は大体酢飯だ。

 酢には殺菌効果があり、普通のお店より衛生面で問題が発生しやすいキッチンカーで調理するからこその配慮だろう。

 ここにある商品は、どれも計算されたこだわりの旨さと、楓さんの優しさが詰まっている。・・・・・・考えすぎかもしれないが。


「・・・・・先週もそうだったけど、なぜ三人前?」


 向こうから話し掛けてくるのは珍しいな。


「彼女が二人になったので」

「・・・・・二股、最低ね」

「・・・冗談ですよ!本気にしないで下さいね!」


 付き合っているのはマリアだけだ。

 ・・・実質三股みたいなものだが。

 祭りとルーザとはキスすらしていないが、毎晩一緒に寝ている。

 俺自身、一緒に寝るのが当たり前になっている。もはや抵抗を感じ無い。

 

 話題を変えよう!


「ここの弁当もの凄く美味しいですけど、税込み五百円で儲かるんですか?」


 ここで売っている弁当は全て五百円だ。

 ちゃんと利益が出ているのか気になっていた。


「これでも、”オリジン”の中では稼ぎ頭よ、私は」

「・・・誰もいませんけど」


 俺の周りには誰も居ない。


「・・・後三十分もすれば行列が出来るわよ。冗談ではなく本当にね!・・・・・ほら、出来たわよ!・・早く代金を払いなさい」

「あ、はい」


 疑問に思いながらも、俺は千五百円を払った。


           ☆


 楓さんから昼ご飯を買った俺は、マリアと祭りのいる空き教室にやって来た。

 三人で行動するようになってから気付いたが、俺達はみんなぼっちだった。

 俺は人と関わらないようにしていたし、マリアはみんなが遠慮していたし、祭りは・・・なんでだ?


「固金さんの料理も美味しいですけど、このお弁当も凄い美味しいです!」


 マリアが三色カツサンドを食べながら絶賛している。

 先週は”野菜たっぷりシリーズ”を選んだのだが、マリアは酢飯が苦手だったようで、俺の”ザクザク豚カツサンド”と交換した。

 その時も、楓さんの料理を絶賛していた。

 基本的に弁当は俺が作っているが、弁当のおかずは時間が経っても美味しいように工夫しなければならず、俺にはその辺が上手く出来ないので、若干申し訳なく思っている。


 ちなみに、俺が食べているのが”野菜たっぷり唐揚げ弁当”で、祭りが食べているのが”野菜たっぷり海老天弁当”だ。


「本当に美味しいわね!モグモグ、こんど、モグモグ、場所、ゴクン、教えなさいよ」

「ああ、うん」


 喋るか、食べるかどっちかにしろよ!

 まあ、それだけ美味しいって事だよな。

 楓さんが学校の近くで販売するのは金曜日だけだから、場所を教えるのは来週だな。


「も~らい!」

「俺のせせりが!!」


 祭りが、食いやがった。俺の好物のせせりを!

 




「ごめんてば、いい加減に機嫌直しなさいよ」

「うるさい」

「まさか拗ねるなんて」

「固金さんにも、子供っぽい所があるんですね!可愛いです」

「・・・・・」


 祭りは呆れ、マリアは温かい目で俺を見ている。

 後十分もすれば昼休みが終わるというのに、俺の機嫌は一向に良くならない。子供っぽいのは分かってるんだよ。でも、感情的に納得できないんだよ!


「やっぱり、ここの庭は綺麗ですね。私はあの時計がお気に入りなんですよ」

「前にも同じような話しをしていたな」


 たしか、ルーザと出会う直前の事だったな。


 庭の中央にある、大きな時計を見ながら微笑むマリア。

 彼女が笑っているだけで、荒んだ気持ちが溶けていく。


 やっぱり、俺にとって一番大事なのはマリアだ。

 マリア、ルーザ、祭り、三人の内誰か一人を選べと言われれば、俺は迷わずマリアを選ぶだろう。


 ルーザは奴隷だし、俺達と離れれば生きていけないだろうから一生面倒を見るつもりではいるが、祭りとは遠くない内に別れなければならない。

 祭りを手放したくないという身勝手な思いもある。

 だけど・・・・・いつかは終わらせないといけない。


 切なさがこみ上げてきた瞬間、()()()()()()()()


            ★


 空には紫の暗雲が広がっている。

 また、ここに来たんだ。


 マリアと祭りは、すぐそばにいた。その事に安堵する俺。

 マリアと別れるなんて考えられないが、祭りが他の誰かの者になると思うと胸が苦しくなる。

 ・・・前回のシャスティングが無ければ、こんな気持ちは抱かなかっただろうに。


 そういえば、ルーザは?


「あっ♡ん!・・ご主人・・様♡・・・固金さま~♡もっと!もっと激しく!・・・」


 俺から二メートル程離れた場所に、ルーザはいた。


 ・・・・・・めちゃくちゃ他人のふりをしたい!!


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