第17話 スキルの行方
俺がバイトから帰ると、三人は仲良く話し込んでいた。
学校から真っ直ぐここに来たはずの祭りが私服なのは疑問だったが、急いでご飯を作らないといけなかったのでスルーした。
夕ご飯は、二十分で出来た。手抜きなので当然だが。
朝に仕込んで置いた炊き込みご飯に、冷凍して置いた煮物を入れた味噌汁。豚肉の野菜炒めに、スーパーで買ったサバの南蛮漬け(半額)が今日のメニューだ。
作るのが一人分だと、色んな食材を買っても悪くなる前に食べきれなくなるが、四人分ならその心配が無くなる。
自分が作ったご飯を誰かと一緒に食べるって、なんか良いな~。
三人とも笑顔で食べてる。
時間は夜九時を過ぎている。
祭りには、泊まっていってもらった方が良いだろうか。
「固金さん。祭りさんは今日からここで暮らすことになりましたから。もう、引っ越しも済ませちゃいましたから」
今、何とおっしゃった。
「宜しく、固金」
いつの間にそんな話しに。
「料理はともかく、家事は手伝うわよ。掃除は得意だからね」
「掃除は大丈夫ですよ。明後日業者の方が来ますから」
「「えっ!」」
思わず声を発したのは、俺と祭りだった。ルーザとマリアはキョトンとしている。
「掃除業者が来るって事か?」
「ハイ、そうですよ。パパが毎週来てくれるように頼んだんです。私の部屋以外はピカピカに掃除してくれますよ」
「それは・・・まずいかもしれない」
業者が入れば複数人で暮らしているのがバレる。
特に、男と暮らしているのがバレるのはまずい。
「解約しよう」
「解約しましょう」
祭りも同意見らしい。
「ハア?分かりました」
マリア、全然ピンと来ていないな。
☆
例のごとく、俺の部屋にみんなが集まる。
マリアとルーザは昨日と同じネグリジェで、祭りは、ブラウンのネグリジェだった。
祭りは、いつもより大人っぽく見えるな。・・・なんかドキドキする。
さっさと本題に入ろう!
「これが、今朝手に入れたスキルだ」
●閃き:ランダムに発動。瞬間的に脅威的な判断能力を得る
●頑強:ダメージが三分の二になる
「この二つのスキルを早速使ってみようと思うんだが、ルーザはどう思う」
マリアと祭りに相談しても分からないだろうから、最初からルーザに相談する。
「”閃き”は、思考型のスキルですのでご主人様が取得するべきかと。通常の駒が手にしても意味がありませんし、ご主人様が取得すれば、通常の駒全てに反映されます」
「思考型のスキルは、俺が手に入れた方がメリットが大きいか。この石をどうすればスキルを得られる?」
「自身の身体にくっつけて、スキルを内に取り込むイメージをして下さい」
言われた通り試してみる。
・・・何も起きないんだが。
「おかしいですね?・・・・・ご主人様は未取得のスキルがありましたよね、あれは、”閃き”のスキルなのかもしれません。もしくは、同種のスキルなのかも・・」
未取得のスキルというのは、例の⚫???の事か。
「未取得のスキルはいつ手に入るんだ?」
「切っ掛けさえ有れば今すぐにでも。どちらにせよ、そう遠くない内に手に入るでしょう」
残念ではあるが、いずれ”閃き”のスキルと同種のスキルが手に入ると分かっただけでも収穫か。
「じゃあ、このスキルはどうするか」
「マリアさんが取得するべきだと思います。通常の駒と違い、私達人駒にはご主人様のスキルは基本的に反映されません。マリアさんはプレシャス駒なので絶対破壊されるわけにはいきませんし、”幸運”のスキルの効果で”閃き”が発動し易くなるはずです」
”幸運”のスキルにはそういう効果もあるのか。
「人駒ってなんだ?」
「次のシャスティングから、私と祭りさんを通常の駒の代わりに出すことが出来ます。そうなると、私達は人駒という扱いになります。まあ、マリアさんも人駒という扱いになりますけど」
「通常の駒の代わりに、人駒を出すメリットとデメリットはなんだ?」
「メリットは、プレーヤーとリンクしないので思考や痛み等のプレーヤーの負担が減ります。後は、取得出来るスキルの数ですね。通常の駒は四つ、人駒は七つです。”言語理解”のスキルがあるので、実質六つですけどね」
薄々気付いていたけれど、ガロン達にもスキルって有るんだ。
海駒は大体”潜水”のスキルを持っていて、空駒も”飛翔”のスキルを持っている。
陸駒は、基本的にスキルを持っていない。
駒の種類によっては、別のスキルを取得している物もある。
食火鶏の駒のヒクイは、空駒でありながら”飛翔”を持たず、”蹴り爪”のスキルを持っている。
⚫蹴り爪:超人的な脚力を得る
完全に“剛力”の脚バージョンだな。
「デメリットは、人駒とプレーヤーの連携が困難になるのと、メダルによる駒の交換の対象にならないこと、プレーヤーの意志で退場できない事ですかね」
つまり、どれほど傷ついても俺の意志でリタイヤさせられないということか。
地味に嫌だな。
三人が傷ついて苦しんでる姿を見るくらいなら、俺が痛い思いをした方がましだ。
「ご主人様。勝つためなら私達を捨て石にして下さい」
「そうね、私達に気を遣って負けたなんて笑えないしね」
「お前ら」
俺が考えてる事はお見通しか。
「分かったよ。負けたら何を失うことになるか分からないしな」
「じゃあ、”閃き”のスキルは私ので良いですね♡」
マリアがスキルクリスタルをさっさと取り込んでしまう。
「ああ、固金さんの物が私の中に入ってきます♡」
スキルを取り込んだ後、数秒間光り輝いていたマリアが歓喜の声を上げる。
その言い方はやめて欲しい。
「が、”頑強”のスキルは私で良いでしょ!私はどう考えても前衛だし!」
「ず、狡いですよ!ひ、ひ弱な私にこそ必要なスキルじゃないですか!」
何を張り合っているんだ、こいつらは。
「”頑強”のスキルはガロンに使うから」
「「ええ~~!」」
ガロンは俺の中で突撃隊長のイメージがある。つまり、一番傷つく可能性が高いという事だ。
「じゃ、ジャンケンにしようよ、私が勝ったら・・」
勝つために、どうこう言っていたはずの祭りが我が儘を言うので、ガロンにさっさとスキルを付与した。
〔狼の駒〕 通常駒
スキル ⚫頑強
「じゃあ、俺は寝るから」
もう十一時だ。
明日も学校があるし、さっさと寝ないと。
朝食に加え、四人分の弁当を作らないといけないし。
「今日は四人でおやすみですね!」
「私も眠いですね。こっちに来てから長く起きている気がします」
「え、ほ、本当に固金と一緒に寝るの!」
ベッドの中心で仰向けになると、三人ともベッドに上がってくる。
「私はここです♡」
「あ、ズルイ!」
「祭りさん、条件を忘れないで下さいね」
「わ、分かってるわよ」
マリアが俺に覆い被さり、祭りが抗議の声を上げながらも右側に横になる。ルーザは昨日と同じく左に。
三人の体温を感じる。
上に乗っているマリアの重みと柔らかさが気持ち良い。
特に柔らかい二つの感触がたまらない。
・・・今日は俺、眠れないかもしれない。
「お、おやすみ・・・」
「「「おやすみなさーい♡」」」
マリアと付き合い始めてから五日目の夜、俺は三人の美女に包まれながら眠りに落ちていった。




