第16話 順番
「お前、何でそんな格好にしたんだよ?」
「アンタが急かすからでしょうが!!」
俺が悪いのかよ。
ふわりとした黒髪を、ポニーテールにしている祭りが選んだのは、肩や腹が空いているチャイナドレスのような服に、幾重にも身体に巻き付いた鎖というものだった。
胸や太股を大胆に露出し、素肌を強調するように鎖が腕や脚に巻き付いている。
あの格好に二つ名を付けるとしたら、”背徳の闘士”と言ったところか。
とにかくエロい。そして似合ってる。
ちなみに、武器は両手に装備した籠手だ。
『それじゃあ、始めますよ~』
グリューンの言葉と共に、上空にタイムが表示され、敵陣地に三体の駒が出現する。
人型に石を加工したような身体に、頭の部分に赤い宝石が一つ組み込まれている。
大きさは、通常の駒と変わらない。
『では、シャスティング特別ステージ、スタート!』
タイムが減り始める。
まずは、俺の駒三体でゴーレム一体に集中攻撃を仕掛ける。
俺が選んだのは狼の駒ガロンに烏の駒ヤタ、最後に蛸の駒クラコだ。
クラコは、元々ルーザの駒だ。
前回のシャスティングでルーザが使用していた駒は、全て俺の物になっている。
ルーザは、蛸の駒にだけ名前を付けていたらしく、俺が名前を付ける事を全力で止められた。
クラコは、ルーザにとって特別な相棒だったらしい。
頼りになるマッチョな姉のように思っていたそうだ。・・・・分からん。
今回の駒は単純に攻撃力で選んだ。
ガロンの重い甲大剣。ヤタの騎槍による突撃。クラコは十本の湾刀による手数。
メダルが使えないので、他の駒に換えることは出来ない。
シャスティングが始まってから三十秒が過ぎた。
三体の集中攻撃でも、ゴーレムの身体を少しずつ削るのでやっとだ。
このままじゃ、一分経ってもゴーレムは破壊出来ないだろう。
青のカードには、駒を強化するカードが少ない。
”サクリファイスパワー”は、駒一体を犠牲にするため下策でしかない。
悩んでいる間に、時間ばかりがすぎていく。
まだ攻撃を受けていないゴーレムに向かって、祭りが歩いて行く。
「おい、祭り!」
「私に考えがあるわ」
そう言ってゴーレムの前に立つと、ゴーレムの腕を取り・・・
「セイヤーーー!」
ゴーレムが宙を舞い反転、頭上からフィールドに叩きつけられる。
祭りの見事な一本背負いが決まり、ゴーレムの身体に大きな亀裂が入る。
三体で攻撃していたのがバカみたいだ。
即座にガロンに一本背負いをさせようとするが、まったく持ち上がらない。
「あいつ、力任せに投げ飛ばしたな」
この異界に来たことで得たであろう祭りのスキル。
〔火野祭り〕 異界人 十六歳
スキル ●言語理解 ⚫剛力
⚫剛力:超人的な腕力を得る
あくまで腕力のみが上がるスキル。
具体的にどれ位なのか分からないので、もう少し説明を分かりやすくして欲しい。
祭りは中学の時、柔道部に入っていた。
空手の経験も有るらしく、武器に選んだ籠手は掴みやすいように指が露出している。
いつの間にか、再びゴーレムが宙を舞う。
二度目の衝撃には耐えられなかったようで、光となって消滅した。
ゴーレムが反撃してこないから使える手だな。
・・・これ、もうカード要らないな。
祭りが二体目のゴーレムを破壊した頃、集中攻撃を受けていたゴーレムも光となった。
ガロンに首や間接部分を狙わせ、ヤタは上空からの垂直落下突撃、クラコには絶え間なく連撃を繰り出させていた。
それでも、祭りのパワーと相手の体重を利用した結果に追い付けないとは。
『まさか、こんなに呆気なく終わるとは』
俺も、そう思うよ。
『これが、賞品のスキルクリスタルです』
グリューンの手のひらから二つの石が飛び上がり、こちらに向かってくる。
受け取った石は、どちらも青く透き通っていて、丸みを帯びた細長い形状をしていた。
これの使い方は、ルーザに聞けば分かるか。
『んじゃあ!もう二度と会わないことを祈ってます。サイなら~~』
グリューンの姿はあっという間に消えてしまった。
「どんどん軽い口調になっていったな、あいつ」
「これで終わりで良いんだよね?」
祭りが不安そうに尋ねてくる。
服装は、学校の制服に戻っている。残念。
「ああ、取り敢えずは終わりだ。で、今回の事をマリアとルーザに話したいんだが、今日バイトが終わった後大丈夫か?」
「私は今日シフト入ってないから、直接マンションに行くは」
「お前、マンションの場所知らないだろう。マリアに案内させようか?」
「そ、そそそそそうね、そうしてくれるとた、助かるは」
視界が白く染まる。
☆
視界が開けるとそこは、高校の裏庭だった。
隣には祭りも居る。
「固金?」
「祭りは、向こうに行く前はここに居たのか?」
「うん、そうだけど」
戻って来るときは、プレシャスの近くに居るようになっているのか。
マリアのときもそうだったから、間違いないか。
何か意味があるのか?
●●●
放課後になると、マリアさんが「一緒に帰りましょう」と話し掛けてきた。
固金はさっさとバイトに行ってしまった。あいつめー!
マリアさんの後について、マンションに向かう。
マリアさんは、私のことをどう思っているのだろう。最初からずっと笑顔なのが恐い。
徒歩で、マンションまで約十五分。
その間、会話は一切無かった。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
「お、お邪魔します」
家に着くと、ルーザというエルフの女の子が出迎える。
「あれ、そちらの方は・・・ああ、ストーカーさんじゃないですか!固金さんに近付くためにマリアさんとお友達になったのですか?」
「し、失礼じゃないですか!いきなりストーカー呼ばわりして」
「おととい、私達を監視して、そのままこの建物まで付けてましたよね。昨日はお風呂場を覗いていましたし」
全部バレてる!!
だが、私をストーカー呼ばわりとは、ひどすぎるじゃないか。
「私は、固金の事が知りたくて観察していただけだ!」
「後を付けてプライベートを覗こうとしてる時点でストーカーですよ」
・・・・・・・・・そうなの?
「自覚無かったんですか?」
「・・・・・・無かった・・」
「ルーザさん。祭りさんは固金さんの大事な人です。大切な話しもあるので、上がってもらいましょう」
「マリアさんがそう言うのでしたら」
・・・・・・・・・私って、ストーカーだったんだ・・・。
☆
「なるほど、確かにご主人様にとって大事な方のようですね」
途轍もなく広いリビングで、マリアさんがルーザに一通り説明した。
「ご自分のストーカーが初恋の相手とは、ご主人様の周りは面白い人が多そうですね」
「済みませんでした!もう二度としませんので、このことは固金にだけは言わないで下さい。お願いします!」
今更になって、自分がどれほど気持ち悪い事をしていたのか理解した。
例え自分をストーカーしていたのが、自分が好きな人だったとしても不気味だ。
だからこそ、固金には知られたくない。
「私は、別に良いですよ。固金さんにとって大事な人なら、私にとっても大事な人です」
マリアさんは、本物の女神だった!
「ありがとう。ありがとうマリアさん!」
「条件があります」
感動していたのに、ルーザに水を差された。
「じょ、条件って何?」
「三番目にして下さい」
「・・・どういう事?」
「ご主人様と子供を作るのは、三番目にして下さい。もちろん私は二番目ですよ」
な、何を言い出すのよ、このエロフは!
「マリアさんは、当然最初に子供を作る権利が有りますからね、早めに順番を回して下さいね」
「う、うん、分かった!私頑張るね!」
頑張る!じゃないよマリアさん!それアウトな奴ですよ!
顔を真っ赤にしながら何言ってるんですか!
「マリアさんは良いの?私とルーザが固金とこ、子作りしても?」
ああ、顔が熱いよー。何でこんな話しになってるんだよー!
「固金さんはいい男なので大丈夫です!」
何その良い笑顔。
マリアさんの考えが理解できない。
「ご主人様は女遊びをするような人ではありませんから、大丈夫ですよ。ちゃんと責任を取ってくれるでしょうから」
ルーザにとっての危惧はそこなの!
「祭りさんは、今日からここで生活するということで宜しいのですね」
ルーザが何か言った。今なんて言った?
「また家族が増えますね!」
マリアさんにとって、私は既に家族なのか。
「私が、ここで暮らしても良いの?」
「固金さんの大切な人なんですから当然です!」
「ちゃんと順番は守って下さいね。抜け駆けしたら許しませんからね」
この二人から固金を奪い取るのは無理そうだな。
でも、固金を諦めるって選択肢は、既に私の中には無い。
一緒に、泥船に乗ってやりますか!
「マリアさんにルーザ、今日から宜しく」
この関係はいつか破綻する。
その時、どのような結末を迎えるかは分からないけれど、待っているのは悲惨な未来だろう。
「「宜しくお願いします!」」
それでも私は、ここに居たいと思ってしまったようです。




