第15話 マテリア
三人で、巨大ベットで眠った翌日。
目が覚めると両側に温もりを感じた。マリアとルーザだ。二人とも俺に寄り添うようにして眠っている。
幸せだ。
好きな女の子と、少なからず想い始めた少女と共に迎える朝。
父さんが居なくなってから、誰かと眠るのは初めてだ。
「そろそろ、準備しないと」
名残惜しいが、朝食を作らないと遅刻してしまう。
「固金さん。おはようございます」
いつの間にか、マリアが起きていた。
幸せそうに微笑むマリアが何を求めているのか、すぐに分かった。
おはようのキスだ。
☆
学校へ行く準備が整うと、俺だけ先に登校する。
いつもより早い時間だが、マリアとは別々に登校しないといけない。少しでも同棲を疑われないようにするためだ。
俺とマリアが付き合っていることは、生徒に知られてしまっているため、勘付かれやすくなっているだろう。
少し回り道だが、住んでいたアパートへ向かってから学校へ行く。
以前の登下校の道に出た頃だった。
突然視界が黒く染まった。
★
シャスティングの第三戦か。
昨日、ルーザからスキルについて聞いておいて良かった。
そういえば、俺とマリアが異界に召喚されたとき、ルーザはどうなるんだ?まあ、すぐに分かるか。
視界が晴れたと同時に、マリア達を捜す。だけど、そこに居たのは火野祭りだった。
「何で、祭りが居るんだ!?」
マリアが居るはずの場所に、何故か祭りが居る。
・・・・・・まさか。
『ハーーー、こんな事になってしまうなんて、どうしたら良いんだ・・・』
声の主を探すと、泣き顔の仮面を付けた、ピエロ風の緑の服を着た男が居た。
『自分の名前は、グリューンです。今回のシャスティングを取り仕切る筈だったんですけど、何でアンタが居るんですか?』
疲れたように俺に尋ねてくるグリューン。
俺が知りたいよ。検討は着くが。
というか、初めて会ったのに馴れ馴れしいな。
「何?何なの?二人は知り合いなの?」
祭りが、動揺している。
取り敢えず落ちつかせよう。
マリアの時は、全然余裕が無かったんだな、俺。まっ先にフォローすることが出来なかった。
「大丈夫だ祭り。状況は大体分かってるから」
「ほ、本当に?」
『ハイ、ハイ・・・・ハイ、分かりました』
グリューンが耳の辺りに手を置いて、独り言を呟いていた。
『本来であれば、シャスティング第一回戦を行うところですが、代わりに特別ステージを用意することになりました。特別ステージをクリアできれば、今後そちらの方は、マリア様と共に召喚されるようになり、次は三回戦からとなります』
つまり、マリアと祭りで、何度もシャスティングをする必要は無いということか。
『ルールについては、シャスティング直前に説明されます。シャスティング開始は一時間後。それまでに、その娘に状況を説明しておいて下さい。それじゃ、サヨナラーー』
あっという間に、グリューンは姿を消してしまった。
「本当に、一体なんなの?」
「祭り、説明するから着いてきてくれ」
半ば強引に、待機室へと移動した。
★
待機室に移動した後、俺は祭りに、シャスティングに関することを一から教えた。
「マリアさんも、これを拾ったんだ」
マリアが持っている銀のネックレスと、同じ物を手にしながら、祭りが呟いた。細部のデザインは違うが。
「ねえ、何でアンタがプレーヤーに選ばれたの?」
せっかく、ぼやかして話したのに、聞いてしまうのか。まあ、聞くよな、普通。
「わ、私が!・・・アンタの事・・・・好きだから・・かな・・」
今なんて言った?
「お前、俺のこと・・・・好きだったの?」
「・・・・そうだけど・・」
やっぱり、正直に言って置いた方が良いな。
「・・・プレーヤーに選ばれるのは、ネックレスを拾った人間を、最も愛している人らしい」
「それって!」
そんなはず無いんだけどな。
祭りへの想いは、とっくに冷めているはずだし。
今は、マリアも居るし。
「固金は、もっと一途な男だと思ってた」
「・・・俺もだよ」
やっぱり、何かの間違いなんじゃないか?
「固金は私のこと、好きなの?」
「・・初めて会ったとき、一目惚れしたんだよ。それが初恋だった。でもお前、達也が好きだったろ。それで、すぐに諦めたんだ。俺のお前への気持ちなんて、その程度なんだよ」
あの頃は、復讐のためにシャスティングで役立ちそうなものを片っ端から勉強していた。
恋に現を抜かしている場合じゃなかった。
「一目惚れ♡・・初恋♡・・固金が・・私に!?」
都合の良い部分しか聞いてねえーーーーーーー!
「祭り、俺の話をちゃんと聞いていたのか!?」
「必ず勝って、二人で帰るわよ!」
「・・・・・・ハイ」
駄目だ、全然聞いてない。
その後は、祭りのスキルを調べて作戦を練った。
ルールが分からない以上、やれることは限られていたが。
アナウンスが流れる前に、俺達はゲームフィールドに移動する事にした。
★
『もう良いんですか?なら、すぐにでも始めますけど』
「ああ、構わない」
俺と祭りがゲームフィールドに来たとき、グリューンは、既に待ち構えていた。
『じゃ、マテリア様。お願いしまーす!』
グリューンの言葉が響くと、バトルフィールドの中央上空に、黒い炎が現れる。
ゲーム開始の合図同様、中央に落ちるが爆発せず、黒い骸骨の姿を形作っていく。
黒い炎をローブのように纏いながら、黒の骸骨が口を開く。
『我は平等、不条理、制約を司る神”マテリア”。シャスティングの神でもある』
くぐもったような男の声で語り出すマテリア。
こいつが、全ての原因なのか?
不気味にも見えれば、どこか清廉潔白な?純粋な存在という感じがする。
『此度のルールを説明する。初戦と同じ条件で、三体のゴーレムを倒して貰う。三分以内に三体全て破壊できれば貴様らの勝利だ。尚、ゴーレムは一切の行動をしない』
反撃してこないということか。それだけ破壊するのが難しいんだろうな。
『敗北した場合は、プレーヤーに死を。勝利すればスキルクリスタルを二つ与える』
スキルが手に入るなら、今後のシャスティングが有利になる。
『では、五分後に強制開始する』
そう、言い残して消えるマテリア。って、五分で準備しないと!!
「祭り!言うの忘れてた。急いで衣装と武器を選べ!」
「何それ!もっと早く言いなさいよ!」
「だから忘れてたんだよ!」
なんか、祭りとは気安く話せるな。こんな掛け合いが楽しくて仕方ない。
「こっちは準備出来た。そっちは!」
「え!えええええと、じゃあ、これで!」
もう時間がない。
「セッティング!カード展開!急げ祭り!」
「えーと、スタンバイ!」
「ディード!って、なんだその格好!!」
プレシャス用の陣地に現れた祭りの格好を見て驚く。
「うっさい!うっさい!見んな!見んな!バーカ!バーカ!」
そんなに嫌なら選ぶなよ。顔真っ赤だし!
俺だって、初恋の人がそんな格好しているのを見るのは、嫌だったよ。




