第14話 観察者 祭り
私が固金に出会ったのは、小学校三年生の時だった。
当時、私には好きな人がいて、固金はその子の友達だった。
私が好きだった人は、勉強も運動も出来るイケメンだった。
あくまで小学生レベルでの話だ。
固金の第一印象は、薄気味悪いだった。
同級生の中ではとても静かで、常に本を読んでいた。
誰から見ても、真面目な優等生だった。
人間味の無い、人形。影でそう呼ばれるようになったのはいつからだっただろうか?
ちょうどその頃から、私は固金のことが気になるようになった。
はっきりと彼を好きになったのは、小学三年の冬だった。
下校し始めてすぐに、彼に肩を掴まれ、こう言われた。
「向こうに居る人、危ない人かもしれない」
固金の視線の先には車があり、男の人が落ち着きのない様子で、辺りを見回していた。
「一緒に来て」
固金に手を握られ、学校へと歩き出す。
その後、固金は職員室に向かい先生と話をした。
その先生は、あまり子供の話を聞いてくれないと、皆から嫌われている人だったが、話を聞いた後、電話を掛けていた。
暫くして、学校に連絡が来た。内容は、先生の通報で車に乗っていた人達が逮捕されたという物だった。
当時は、よく分からなかったが、固金が凄いことをしたのは分かった。
事件の詳細を知ったのは、それから数年後。
警察が到着したとき、一人の女生徒が誘拐される直前だったらしく、現行犯逮捕されたらしい。
当時、ニュースにもなったらしくて、母が覚えていた。
犯人の男たちは、当時地元で有名だった中学一年生の女の子を狙っていたらしい。
その子は、年の割に大人っぽい美少女で、よくナンパされていたそうだ。
もし固金が気付かなかったら、その人はどうなっていたんだろう。明らかに強姦が目的だったろうし。
中学生になると、男子は性に関する下卑た会話をするようになった。・・・女子もだけど。
あんな事件が身近で起こったと思うと、男子や男性教員が性犯罪者に見えて仕方ない。
私がかつて好きだった人も、女の子の胸やお尻の話をしていたので、本気でショックだった。
そんな環境でも、固金はぶれない。どれ程うるさくても黙って本を読んでる。
素敵♡
固金は、そんじょそこらの男子とは違う。
言動と空気感が違う。
ぼっちなのに、何故かみんなに信頼されている。
もっとこの人のことが知りたい。
気付けば私は、固金の後を付けていました。
まずは、家を突き止めた。
偶然を装って、スーパーなどで話し掛けてみたりした。運命感じたりしてくれないかな。
一度だけ、彼が教室のゴミ箱に捨てた紙を回収したことがある。武器や、動物について書かれていた。中二病という奴かな。宝物にしよ♡
暫くして、固金が地元を離れて進学すると聞いた。
あの手この手で進学先と住む場所を突き止め、必死に行動した。時間との勝負だったよ。
高校でクラスが一緒になったのは偶然だった。
住む場所が隣の建物になったのは、私のミスだ。本当は隣の部屋にするつもりだったのに!見た目が同じだったから、間違えちゃったじゃない。
バイト先は、学校の方から紹介されたので苦労せず一緒になれた。
一人暮らしを始めたことで、門限が無くなり、部活にも入らずに済んだので、一日中固金を観察出来る日もあった。
隣の部屋ならもっと楽なのに。
そうして、あっという間に一年が過ぎ、突然変化が起きた。
その日、固金よりも私の方が早く出勤しなければならず、泣く泣くバイトへと向かった。
遅れて出勤して来た固金は、疲れているようだったが、どこか幸せそうに見えた。
理由を探ろうとアパートの外で観察していたけど、すぐに就寝してしまった。
固金の料理美味しそうだな。
次の日、固金とマリアが付き合い始めた事を知った。
その日、私は授業にまったく集中出来なかった。昨日、私が観察していなかった一時間の間に何が起きたの。
二日後のデートの日、私はバイトが入っていたので観察には行けなかった。
私が固金の帰りを伺っていると、三人の人影が見えた。
一人は固金、もう一人はマリアさん、最後の一人は知らない女だった。
誰だよ!!しかも凄い美人!
マリアさんに引けをとらない美人なんて初めて見たよ。
あの格好はコスプレ?結構大胆な格好をしている。
一時間もしないうちに三人は出てきた。
三人とも荷物を抱えている。さっきは、持っていなかったのに?
急に、マリアさんの口から不穏な言葉が飛び出た。
「さあ、早く帰りましょう♡三人の家に!」
・・・・・どういう事?
これから、あの三人で暮らし始めるということ?
おかしくない?
何としても、事実を突き止めないと!
三人の後を付けて辿り着いたのは、高級マンションだった。
えっ!ここで暮らすの?こんな凄い所で?羨まし過ぎる。
結局、この日の観察はここまでだった。
マンションに侵入する方法を見つけられなかったからだ。
次の日、バイト終わりの固金を付けた。
バイト中は、イライラして仕方なかった。あの固金が、女の子二人と同棲とかあり得ない。裏切られた気分になりながら、処分する本をまとめていた。
固金に気付かれないように、こっそりロックの内側に侵入。非常階段から屋上に出る。
さすが高級マンション。まさかヘリポートがあるとは。
試行錯誤をしながら、なんとか下に降りる算段をつけた。
降りた先の窓から、薄らと固金が見えた。
どんだけでかい風呂に入ってんの、こいつ。またイライラしてきた。
ガタッ!
私のドジ!これまでに何度もやった失敗をまた。
なんか騒いでる。今回こそ気付かれた!
あれ、三人身を寄せ合って入浴してる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帰ろう。
よく分かったわよ。・・・もう、私が好きだった暗崎固金はいないんだ。
☆
アパートに着くと、自然と涙がこぼれた。
いろんな感情が溢れてきて、自分じゃどうしようもなくて。
「ヒックヒック・・・・・・やっぱり・・やっばじ好ぎだよこがねええええーーーー!!」
どうしたら良いのか分からない。
諦められないのに、私なんかじゃ釣り合わないっていう思いもあって、もうどうすれば良いのよーーー!
☆
昨日は、泣き疲れて眠っちゃった。
アパートに居ても落ち着かないから、早々に学校に来た。
この時間だと、生徒は居ないか。
やっぱり、私には固金しかいないや。それが、朝になって出た結論だった。
綺麗な裏庭だな。異様なほどに真ん中の大時計が目立っているけど。
今の私の心境にソックリ。
何かスッキリした分、別の不安が生まれている。
「こういうのを切ないって言うんだろうな~」
今、時計の辺りで何か光った?
近くに行ってみると、銀色のアクセサリーが落ちていた。
「ネックレス?何でこんな場所に?」
ネックレスに触れた瞬間、世界が黒で塗りつぶされた。
★
何が起きたの?
いつの間にか知らない場所に居る。
実は、まだアパートで眠っているとか?
「何で、祭りが居るんだ!?」
男の声に振り向くと、そこに固金が居た。
失恋したのに、諦められないと思った相手が、そこに居てくてた。




