11~15話
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何故か今日はリヴィの自宅に誘われ、ハンバーグを出された。
「今日のご飯は俺特製ハンバーグでーす!」
「材料自分とか言うなよ!? 絶対だぞ!?」
「それ振りじゃないよな!? そんな体張ったボケやる程マゾじゃねーぞ!」
だが彼の左手は、料理している間に半分消え失せた。
「じゃあ僕に何のドッキリしかけてるんだよ。腕無くなってる時点で体張り過ぎだろ」
「それはあれだ、焼いてたらうっかり爆発して」
「料理音痴ってレベルじゃねーぞ!」
火を爆発させる男が料理を作れるとは思えない。
ならこれは何だ。一見普通のハンバーグに見える。
冷めていて美味しそうではない。
「……ん? 冷めてる?」
今出して来たばかりなのに。
皿を持つ。そしてリヴィの顔面めがけて、パイ投げの如く押し付けた。
奇声が上がった。肉餅から。
「何これ!? 何食わせようとしてたんだアンタ!」
手を離すと、リヴィは即ハンバーグもどきを引き剥がす。
何か口がある。お肉もしゃもしゃしてる。
先輩の顔面は見ない事にした。
「いやー……気付くだろうなぁって思って……」
「めっちゃ体張ってんじゃねぇか! っつーかマジで何だこれ!」
「知らん。落ちてたからそれっぽく焦げ目つけて調味料で誤摩化してみた」
「不死身のアンタ基準で考えんの止めろ!」
リヴィは大人しくそれを叩き潰し、食った。
この人もこの国もヤバい。僕は慰謝料として財布を拝借し、夕飯を買いに行った。
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ボスも参謀も、料理するのは趣味だ。
ただしその方向性は真逆である。
「君が野菜を食べられるようにと思ったんだが……どうかね?」
「アンタの格好でゲロ吐きそうだけど美味しいです」
強面の大男が、ピンク色でフリフリのエプロンを着ている。彼のお家芸である。
上目遣いで不安げに見上げて来るのが計算か天然かは分からない。だが効果は抜群だ。
「甘い物ばかり食べてはいけないぞ。君は長生きしそうだからな、体を大事にしたまえ」
「うぅ、せめて性別が逆ならなぁ……あ、駄目だ、メスゴリラだ」
オカンなのは良いがやって来るボケが割とえげつない。なぜなら頭は良いから。
今も視界の端でガッツポーズしてる。可愛さの演出である。ほんと止めてキツいから。
「そうだよね、長生きしたら若い頃の無茶が祟るからね。というわけで僕からのプレゼントだ」
そう言って裸エプロンの変質者が差し出して来たのは特大のケーキ。
「苦しんで死ねって事ですね分かります!」
「糖尿病で早死にしろって事だよ、少年」
彼は良い笑顔でアイスとプリン、焼き菓子を追加する。
やべぇこの人、殺意満々だ。
「わ……私にも半分分けて貰えないだろうか……」
「君の分も作っておいたよ。早死にするだろうから先の事気にしなくて良いよね?」
フォローに入ろうとしたボスを、鍋に直接盛られたパフェが足止めする。
僕は嬉しさ半分怖さ半分で、孤独に好物の山との死闘を制した。
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僕両親に愛して貰った事無くて。
そう言ったらボスが親馬鹿し始めた。解せぬ。
「どうだ、何か欲しい物はあるかね? 行きたい所があるなら連れて行ってやるぞ」
「物で釣る父親か! 別にそーゆーの求めてないんで良いですよ!」
「じゃあ食べたい物はあるか、作ってやるぞ」
「オカンか! チョコレートケーキお願いします!」
彼はいそいそと上着を脱ぎ、エプロンをつける。甘やかしたいならしれっと精神攻撃してくんの止めろよ。
「何があの人をそうさせるんだ……」
「いやだって君、子供扱いされると顔に出るから」
後ろからにゅっと伸びて来た手がバニラシェイクを差し出す。
うーん、また飲みかけだ。対僕用の持ちネタと化している。
気にせず飲むと、良い子だ、とラインハルトさんが頭を撫でる。嫌がらせに付き合って褒められるって一体。
「僕子供扱いされて怒った覚えないですけど……」
「君子供に見えて22だものなぁ」
今度は鏡が背後から回り込んで来る。
何となく嬉しそうな少年の顔があった。
吹いた。
「あーあーあーあー、ちょっ、無し! オフレコでお願いします!」
「何言ってるんだ君は。何で可愛がられてるか教えてやっただけだぞ」
「この年で子供扱いされて喜んでる方が色々キツいですー!」
しばらく彼とじゃれていると、チョコレートケーキが現れた。
美味しく頂いた。その後、一緒にドーナツ屋に行った。
開き直りって大事だと思います。
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この国は、『塔』を中心に作られた国だ。
『塔』が何なのかは、誰も知らない。中には外と違う生態系が広がり、頂上には何でも願いを叶える聖杯があると言う。
中の物を持ち帰れば高く売れ、上手くいけばどんな願いも叶えられる。
だからこそ、世界中から多くの人間が集まり、国が出来た。
「もし聖杯が手に入ったら何に使います?」
部屋で休憩しているいつものメンバーに聞く。
「世界平和」
ボスは即答する。分かりきった答えだ。
これが分かりきってるのはヤバいと思う。というか、実際に願ったらどうなるんだろ。怖い。
「えー、金かなぁ。女も食い物も手に入るし、好きな事出来る」
リヴィも予定調和。ここはボケねばなるまい。
「妹関連だろ」
「ボケ潰し止めろ!」
潰されたからには斜め上に走らなくてはならない。
「妹が僕を神の如く愛してくれるようにするかな……いや、いっそ僕と妹しか入れない空間に閉じ込めるか」
「身構えてたのに怖いです先生」
「ふふ、勝った!」
尚本心である。ボスがドン引きしている。貴重な表情だ。
良い笑顔でラインハルトさんがカメラを取り出す。そちらにもドン引きした顔が向く。
「さて、ここは僕がドカンと決めなきゃならないよね」
自信満々だ。嫌な予感に背筋が冷える。
リヴィも聞く前から嫌な顔だった。
「この世を常に争いの絶えない地獄にする。どいつにも平等に凶悪な力をくれてやろう」
ボスと正反対の事を言った。本当に側近かこの男。
「殺すか殺されるかしか無い世界で、力に驕る愚者共を踏み潰していく。最高だと思わないかい?」
「戦闘狂の気持ちは分からないです!」
ボスの方を見る。彼は首を傾げた。
「それは現実とどう違うんだ?」
……この人の目には何が見えているんだろう。
空気が固まる。怖くなって、僕はリヴィに目配せし、二人でそそくさと逃げた。
その後、ソファーで死んでいるラインハルトさんを見つけ、二人で励ましてやった。
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夜中にラインハルトさんと歩いていると、後ろから女が走って来た。
避けるかなと思ったら、彼は背中で受け止める。
煌めくナイフ。いつか夜道で刺されるとは思ってたけど、何も僕の横で刺されなくても。
あっ。
「死ね、この浮気者! アタシは男以下かよ!」
「それ僕ですかボスですか」
「ハァ!? チビからデブからオッサンから、何でも良いのかよ!」
えぇぇ……。
もはや突っ込む気力も無く見守る。下手な事を言えば僕が刺される。
「ふぅ、背中に鉄巻いてなきゃ危なかった」
「何やってんすか。鉄にナイフ刺さってるのも怖いですけど、ならこの血は一体」
「みんな大好きケチャップさんだ」
まぁ横で不自然に刺されるならボケだよね。いつから仕込んでたのか謎だけど。
「てめぇっ」
「ちなみにこの柄の悪い子はでっかい商店の娘で、その気にさせただけで手は出してない」
「あぁ、ふざけてんのかてめぇ!」
「ふざけるのが僕らの仕事だ」
「いや違います」
依頼を受けて何かを倒したり、国の中心にある『塔』を探索して素材を持ち帰るのが僕らの仕事だ。
女が再度ナイフを振りかざす前に、彼は彼女の首に手を回し、絞め落とした。
「罰としてここに転がしとこう」
治安が悪い中に女性を置いていく。えげつない仕打ちだ。
尤も、人を殺そうとした以上は仕方ないが。
「ナイスタイミングだったよ。お礼にケチャップで死体に偽装してあげよう」
ラインハルトさんが善意か嫌がらせか微妙な事をし始める。
「その鉄いつ仕込んだんですか」
「さっきの店でトイレ行った時。そろそろ来ると思って」
「アンタのその無駄なハイスペックさ何なのほんとに!」
何事も無かったかのように僕らは立ち去る。
デブは聞かなかった事にした。




