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6~10話

>6

買い物から帰って来たリヴィが、買い物袋から水を垂らしつつ、何かを取り出す。

赤い。蛸だ。

「さて、今日はタコさんウインナーでボケちゃうぞ!」

「アンタの腸にそいつを詰めれば良いのか?」

「俺の腸は食えません!」

さっとリヴィが腹を庇う。その手には蛸。

軟体動物に這われたリヴィが、ひぃ、と気持ち悪い声を上げる。

「糞ぅ、このタコさんウインナーめ!」

「だから蛸だよしつけぇな」

「タコさんのウインナーあるだろ! ここに!」

「タコさんのはウインナーじゃねぇよ下ネタ止めろ!」

「あ、そだ! 俺のがタコさんのウインナーって事で」

「うるせぇよポークビッツ。美味しく頂かれてウインナーにでもなってろ!」

「何でそんなに俺の肉体でウインナー作ろうとするの君!?」

下ネタ男を無視して外に出る。

蛸は後でリヴィの口に入り、無事ウインナーの中身側になりました。


>7

ラインハルトさんはサディストだ。

気に入った相手を虐める傾向にある。そして、僕は彼にかなり好かれている。

「やぁフォルトゥナ君。アイスでも食べるかい?」

「狸爺の唾液摂取するのは癪ですけど下さい!」

あれ、と彼は首を傾げながらも、手に持っていたアイスを渡す。

残念ながらこの手のボケは僕には通用しない!

ボケ殺しですっきりしつつ、甘味で脳を癒す。幸せだ。

「君のそういう神経太いとこ好きだよ」

「アンタ趣味歪みに歪んでますよね!」

「折れない相手を屈服させるのが楽しいんだよ。誰彼構わず虐げる君よりマシだと思うなぁ」

「五十歩百歩だよ! アンタそもそも目的の為に利用してポイ捨てしてるから、被害はアンタのが大きいだろ!」

「人畜無害って難しいよね。なりたくもないけど」

全くもって同意だが、口に出したら負けである。

ふと、ド天然純粋培養なボスが、人畜無害どころか超有害な殺戮マシーンだった事を思い出す。

うん、世の中って難しい。


>8

ボスの素性を知る人間は、僕が知る限り、我らが参謀殿だけだった。

隠されれば気になる物。しかし中々どうして、ボスはガードが堅い。

「どうせ貴族のお坊ちゃんか何かでしょう。あ、私欲貪ってた貴族の生き残りだと、王様に殺されちゃいかねないんでしたっけ」

「今の王は潔癖症だ。悪人の首は片っ端から飛ばす」

自分の事は言わず、話題をずらす。やはりはぐらかされている。

彼は世間知らずの天然だ。しかし駆け引きにおいては、老獪な参謀仕込み。立ち向かうだけ無駄である。

「ボス、料理しましょう! ボスは俎板と包丁とお皿役で!」

「私は包丁にはなれるが俎板にはなれないぞ。君の方が断崖絶壁で良い塩梅だ、お皿も薄くて平坦だから君に任せよう」

「お肉はリヴィで手を打つんで、その俎板に喧嘩売ってる見事な胸から乳絞ってて下さい!」

「……乳は胸から出るのか?」

「何かこの辺素ボケ来るんじゃないかと思ってましたよ畜生!」

ラインハルトさんの教育は悪意しか感じない。やりたくない気持ちは分かるが性教育ちゃんとしろよ! 絶対面白半分だろ!

下手に教えると後が怖かったので、適当に濁してその場を去った。

その後、この問題の答えに窮しているラインハルトさんを見かけた。僕は幸せな気分でそれを観察した。


>9

僕の妹は反抗期だ。ただし僕限定で。

「私の友達が行方不明なんだけど、面貸しなさいこの殺人鬼」

「僕は人殺しなんてやらないよ! 死ねって思ったら割と死ぬけど」

「それわざとやった時点で殺してるのと同意義よこのサイコパス!」

「今回は知りませんー! 後基本は殺さず社会的精神的に殺してますー!」

「いやサイコっぷり変わらないから! むしろえげつなさは増してるし!」

僕は嘆息する。どうしてこの子は分かってくれないのだろう。守る為にやっているのに。

「良いだろー、どうせお前に近付く奴は人間の屑ばっかなんだから」

「アンタも含めてね!!」

妹は僕と反対で、幸運の女神に嫌われている。

彼女の周りにまともな人間は居ない。そろそろ一人ぐらい現れても良いはずなのだが。

「んー……あ、もしかして」

風に舞う新聞の切れ端を掴む。

詐欺師の女が捕まったという記事。年齢は妹と同じぐらいだ。

「こいつじゃね? 捕まって自殺してるってさ」

「マジ死ね糞野郎」

思いっきり頬を殴って妹は去って行く。

うーん、どうせ好感度底辺なんだし、見つけてやらずに引き延ばせば良かった。


>10

ボスがひき肉を作っていた。

珍しい。彼が人を手にかけている。

「それ今夜のご飯ですか?」

「雑食の肉は臭みがあって食えた物じゃないぞ」

「誰かの胃にこっそり突っ込むのが楽で足つきにくいですよ!」

「君は本当に人を殺した事無いんだよな!?」

何故だかいつも黒扱いされるが、僕は白だ。限りなく黒に近いけど。

彼の表情は暗い。

「……ふざけ始めたのラインハルトさんでしょ」

「私が気鬱に沈んでいたからな」

「そのお陰で最高にサイコで薬やってるとしか思えない電波集団になっているわけですが」

「大丈夫だ、問題ない。元からサイコ野郎しか居ない」

「うわぁ、この世界サイコ多過ぎぃ!」

流れ者の集うこの国で、一番大きなギルドというのは伊達じゃない。

そいつらがみんな螺子のかっ飛んだ狂人とか、この世界怖い。

僕は聞かなかった事にして、まともに見えてトップレベルに狂っている男が苦々しい顔で証拠隠滅するのをニコニコ眺めていた。

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