1~5話
>1
我がギルドは、冒険者の集まるこの国で、一際巨大な戦士ギルドだった。
理由は簡単。電波から犬以下のアホまで、多種多様な人材を受け入れているからである。
そんなわけで、うちのギルドは常に愉快な事が起こっていた。
その内にみんな進んでボケ始め、常識人と突っ込みが消えて無くなってしまっていた。
そして気付いた時には、大喜利ギルドとして有名になってしまっていたのである。
「おーい、フォルトゥナ。今日はさる闇組織に地獄見せに行ってやるんだが、どっちが良いと思う?」
「えぇ? ハァ、山葵と唐辛子? そんなの拷問の内にも入らないだろ、馬鹿なりに根性見せろよ先輩」
「えー、じゃあタマネギも合わせてグリグリ鼻から目から塗り込んで」
「食い物を粗末にすんな! 奴等にそんな価値はねぇ、目潰しして被害者と遺族の前にでも転がしとけ!」
「ぎゃー、何かすげぇ大惨事になりそうな回答返ってきた!?」
尚、僕も絶賛毒され中である。
>2
リヴィは僕の先輩である。凄くうざい上に脳味噌が鳩並みなので、みんなスルーしている。
付き合ってやる僕に犬の如く懐いている為、大体セットだ。
「フォルトゥナー、ボスに悪戯しようぜー!」
「野球でもやるノリで地獄行きの切符押しつけてくんな、一人でドナドナされてろ」
「もう机にエロ本置いてきた!」
「何がアンタを死に急がせるんだ……」
トイレに出ていたらしいボスが帰ってくる。
堅物の彼は机の前のブツを見て固まる。その後ろには怖い怖い、過保護な我等が参謀。
「リヴィ、今日はお前でハンバーグだ」
良い笑顔で彼は本をリヴィに投げつける。
反論する間も無く昏倒、二人は廊下に消える。
黙祷。
「ところでボス、どんな子が好みなんですか?」
「は、せ、清楚で家事の得意な、私を支えてくれる人……?」
「うーん、普通」
「はっ、しまった、ボケなければ! えぇと、あれだ、性格破綻してる親馬鹿腹黒策士なんかも良いんじゃないか!」
「それ洒落にならんから止めて」
ちなみに幸運の女神に愛されている僕の、最近の趣味はボス弄りである。
>3
ボスは多分良いとこのお坊ちゃんである。
参謀であるラインハルトさんは、彼が10に満たぬ子供の頃からその面倒を見ているらしい。
尚、どう見てもボスが年上である。
「ラインハルトさんって何歳なんですか?」
「ふふ、秘密。ミステリアスな方が魅力的だろ?」
「そう言えば私も知らんな。気になる」
「284歳」
「ぶれねぇなアンタ」
しかもとんでもない数値が出てきた。
見た目は完璧に人間だ。まぁこの町には人造人間とか不老不死とかゴロゴロ転がってるから今更だが。
「そう言えば昔からお前はちっとも変わらなかったな」
「君もあの頃から変わらないよ。真っ直ぐで純粋で可愛い」
尚、ボスは強面の大男である。推定二十代後半。
「何でこんなむさいオッサンを純粋培養しちゃったんですかアンタは」
「昔はほんと可愛かったんだってば。今でも可愛いけど」
「だから止めろ親馬鹿」
押しつけられた写真はほんとに可愛かった。
今でさえ親馬鹿なこの人を見て、このまま育たなくて良かったと思いました。まる。
>4
そう言えば、僕はリヴィの事をよく知らない。
僕が知っているのは、ミンチからでも蘇る不死身の三枚目だと言う事ぐらいだ。
「リヴィはここ出身なのか?」
「んー? 忘れた!」
「レベル高ぇな鳥頭!」
「過ぎた事は気にしねぇ事にしてんの! お前こそどこよ」
「ここ」
「ご愁傷様」
この国の治安は底辺だ。
路地裏を歩けば拉致られるし、病院に行ったら臓器を盗まれる。
綺麗な姉ちゃんについてったら未工事で掘られるし、目に入れても痛くない程可愛い妹は僕を見るなり殺しにかかる。
「ちょっ、哀れむの止めろ! 僕盗みとか殺人とかせず普通に生きてきたから! めっちゃ恵まれてましたから!」
「何か変質者に襲われる日々を過ごしてたみたいな面してる」
「僕の幸運舐めんな! 妹に寄りつく虫を去勢する毎日だったわ!」
「怖ぇわこのヤンデレシスコン男!」
思春期来る前に妹からは二度と視界に入ってこないでと言われた。
幸運の女神は時々微笑まない。
>5
ラインハルトさんの趣味はボスのストーカーだ。
半分ぐらいの人間からはホモ扱いされるが、どこ吹く風。彼の頭にはボスの事しかない。
「何でそんなにボスの事好きなんですか」
「触れる物皆傷付けた時期があってね……」
「現在進行形ですよねそれ」
「うっかりヘマした僕を助けて、共に理想を歩む仲間として迎い入れてくれたのさ」
年齢一桁代の子供に何を言われたのか凄く気になったが、話すと長そうなので話題を変える。
「ラインハルトさんでもヘマするんですね」
「そりゃあ人間だからね、長く生きてりゃ致命的な失敗もする。あの子に父親殺すとこ見られちゃったり」
「何さらっととんでもない事してんすかアンタ!」
「だって目障りだったから。機嫌直すの大変だったなぁ」
「機嫌で済んでる辺りが色々と恐ろしいんですけど……」
もうやだこのヤンデレ。
また語り始める前に逃げようとしたが、肩を掴まれる。
「ところで僕があの子についていこうって思った理由なんだけどね!」
「あの僕仕事が」
「あれ君の相方に投げといたから」
「朝からロックオンされてた……だと……」
結局真っ昼間から夜中まで、延々電波気味なうちの子自慢をされた。
僕は二度とこの人と二人にならないと誓った。




