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~18.頼むから俺に選択権をください!(切実)~

諸事情により次回の投稿を延期いたします。

次回は6/3 21:00の予定です。もう少しだけお待ちくださいm(__)m


会場を出てから俺とウィンはなにも話さずに城まで歩き続けている。

俺達の後ろには当たり目のように警備隊が付き添い、護衛をしている。

しかしその護衛をしているのは…ルヴィアと男性一人だけだった。

人族で最も重要な人物であるにもかかわらず、たった二人だ。

普通ならもっと護衛をつけるのだが…ウィンは今回二人で充分と押し切った。

…まあ、これには理由がある。

ウィンは最初「トウヤは強いから護衛はいらない」と話した。

実際、俺が冥竜を倒した事もありそれで大丈夫だろうと納得しかけたそうだ。

しかしウィンはその後「それにわたしはトウヤと一緒にいるのを誰にも邪魔されたくないの!」とか言ったらしく、違った意味で俺が危険と判断されることとなった。

そのためウィンだけでなく俺にも警備隊がつく羽目になった。

特に二人でいるときは必ずウィンに盲し…ごほん、ウィンに忠誠心が高く、優秀な魔技使いであるルヴィアが護衛にまわることになっている(主に外敵からではない気がするが…)

そして単独のときは必ず護衛を一人つけることで、常にツーマンセルの状態にしている。

もう一人の警備隊員もかなり優秀であるため、まず護衛を失敗することはないだろう。

案の定、何事もなく城に到着すると俺達はウィンの部屋へと移動した。

全員が部屋に入ると、俺の護衛をしていた男性が床に手を置いた。

するとそこを中心に部屋全体が淡い光が広がっていく。

やがてその光は徐々に収まり、元々の発生源であった床に置いた手へと戻っていった。

「……よしっ。みんな話していいよ!」

護衛の言葉を皮切りに、俺達は一斉に「ふ~」と安堵のため息をついてソファに座った。

「おつかれ。ありがとうな…リム・・

俺は男性に声をかけると、その男性の体が急に炎に包まれる。

そして中から出てきたのは…紛れもないリムであった。

「う~ん…やっと戻れたぁ。バレるんじゃないかとずっとどきどきしてたよ~。」

「…とかいいつつ、歓声上げるほど余裕があったじゃん。」

俺の横に座ったリムにツッコミをいれると、「バレたか」といいながら俺のひざを枕にして寝転んだ。

こいつ本当に猫だな…ねこじゃらしとかこの世界で手に入らないかな?

「あんな感じでよかったのか?」

膝の猫はひとまず無視して、ティーカップに入った紅茶を飲みながらくつろいでいるウィンに話しかけた…というかどこから紅茶を出したんだ?

「ええ、あれで大丈夫よ。これで堂々と行動できるわ。」

「ならよかった…あんな勇者気取りのナルシストみたいなのはもう勘弁だ。」

「あら?結構かっこよかったわよ?特に…「見ていてください…勇者の力を!」とか…」

くすくすと笑いながらウィンは俺の物真似をした。

「やめろ!その台詞めちゃくちゃ恥ずかしかったんだぞ!」

「あたしはトウが矢を全部弾いたのがかっこよかった!」

「リムもやめろって!そんなたいした事してないって!」

「わたくしはアルテミスを防がれたときにあたればいいのにと思いましたよ!」

「や、やめろ…俺の人生が終わるだろ…」

いつの間にか人数分の紅茶を持ってきたルヴィアは最後に物騒なことを言ってきた。

多分、冗談…じゃないんだろうな。目が怪しく光ってるし。

そういえば式が始まる前にルヴィアに「あの部屋で俺の身体になにもしてないよな」って聞いたけど、微笑むだけで何も言わなかったんだよな…一番危険なのは身内なんじゃないだろうか…

「パンッ」

ウィンは一度空気をきるために手のひらをあわせて音を鳴らした。

俺はその音を聞いて、ソファに座っている姿勢を正した。

リムも俺の膝から離れちゃんと座りなおした。

その様子をみてウィンは嬉しそうに俺達を見回す。

そして一度咳払いをして、おもむろにソファから立ち上がった。

それにつられて俺達も立ち上がり、右の手のひらを強く握った。

「さあ、冥族を助けにいくわよ!」

「「「おー!」」」

ウィンが声を上げると俺達は拳を天に上げ、勢いよく返事をした。


時間は少し遡る。

「ゆ、勇者ってなんだよ!」

スピーチを終えたばかりのウィンに俺は詰め寄った。

その様子をみて「ごめんね」と言って手をあわせてウインクしながら謝罪した。

くっ、卑怯な…そんなのみたら許すしかないじゃないか…

「今からちゃんと説明するわ。ルヴィアも入ってきて。」

「かしこまりました。」

ウィンがそう言うとルヴィアもドアを開けて部屋の中に入った。

(すごいな…ドア越しとはいえ全然気配を感じなかったぞ)

俺は心の中で驚き、ルヴィアが優秀な警備隊であることを再認識した。

ルヴィアはウィンと少し話し合うと、窓に向かって魔技レソナを放った。

するとそこから、ホワイトボードのようなものが出現した。

よく見るとすでに何か書かれている。

「ウィンヒールの学べるニュース…?ってどこかで聞いたことあるフレーズだな。」

なんか凄く分かりやすく説明してくれそうな気がする!

「こほん。ではよろしいですか?」

ウィンはそういうと赤いめがねを指でクイッと動かした…いつの間に。

「まず以前にも話したけれど、この世界では三年前の事件の犯人は冥族とされているわ。実際にそのときの目撃談はなかったけれど今回のように冥族がフィジレスの使用したケースが今までに数件も確認されているわ…今のところ死者は数十人に及び、源炉フィジの力を吸い取られ、魔技レソナが使えなくなった人は数百人以上いると報告されているのよ。」

「かなり被害が大きいな…」

この世界の人口がどれくらいいるかは分からないが、俺の住んでる世界だったら普通に世界的なニュースになる程だろう。

「それで現在、種族の代表たちが議論した結果、冥族はこの世界を暴力で支配しようとしていると判断されてしまったわ。そして…世界は冥族を殲滅することを容認することになった…」

「…。」

その話を聞いて言葉を発することができなかった。

冥族を殲滅するという決定はかなり残酷だと思う。

…しかし、分からなくもない。

確かに自分の命が危なければ誰だって逃げ出すだろう。

それが頼みの綱である魔技レソナが封じられるのならばなおさらである。

その場合の対策は逃げ続けるか、協力して戦うか二つしかない。

いくら同じ世界にする種族でも、冥族は間違いなく「悪」とされている。

どの世界でも「悪」は存在し、忌み嫌われる象徴である…だから殲滅されても仕方が無い。

と、頭では理解できるが俺は納得できそうにない。

特にリムと会っているからなおさらだ。

リムはすごく人懐っこい性格をしている。彼女を冥族の代表として見るのは変かもしれないが、少なくとも周りの人が良くなければそんな性格にはならないだろう。

そんな種族が世界を支配するなんて企むとは到底思えない。

彼らを殲滅するのではなくて助ける方法はないのか…?

「…よかった。トウヤはわたしと一緒ね。」

「えっ?」

俺が考え事をしていると、不意にウィンから声がかかった。

気がついて周りを見ると全員が俺の方を見ていた…なんかみんな嬉しそうだ。

「な、なにが一緒?」

「わたしも冥族がそんなことするなんて思えないし、殲滅するのには反対しているわ。」

「どうして俺が考えていることがわかった?」

「だって顔に書いてあるもの。「どうにかできないのか?」って、ねぇ~。」

話をリムとルヴィアにふると、二人とも大きく頷いた。

「なっ…そ、それはいいから!それより俺を勇者っていったかの説明!」

俺は恥ずかしさを誤魔化すために説明の続きを催促した。

すると「はいはい」とウィンにニヤついて続きを話し始めた。

な、なんか負けた感があるぞ…

「それで、各種族は冥族を殲滅するための部隊を作ったわ。わたし達は「警備隊」という名前ね。でも実際にはほとんど部隊は出動しなかったわ。」

「どうして?」

「それはフィジレスの脅威ね。どんなに強い部隊でも魔技レソナがつかえないならただの歩兵でしかないわ。特に相手は変化魔技レソナを得意としているのよ?体格でも勝ち目がないのよ。」

「なるほど。迂闊に攻められないな。」

例えるなら蟻が象に肉弾戦を望むようなものだ。結果は見えている。

「対抗できるのは相手がフィジレスを展開する前にこちらが遠距離攻撃の魔技レソナを当てること。そのため部隊は必然的に遠距離型の魔技使いで構成され、「狙撃者スナイパー」と呼ばれるようになったわ。」

「…でも、それだけじゃ命中しても致命傷になる前にフィジレスを使われてお終いだろ?」

「そうね…でも、それが全方位。しかも一発じゃなくて数十、数百発が同時に来たら?」

「それは防ぐのは難しいだろ…ってまさか!」

「そう。今度はすべての種族が一斉に殲滅する作戦が立てられたわ…作戦名「流星スターダスト…やることは全種族での冥族へ遠距離の一斉攻撃。それこそ一人残らず殺すことよ。」

「ふざけやがって!」

俺は思わず顔を歪めて叫んだ。

相手を殺すまで攻撃するという残忍極まりない。それも冥族であれば老若男女問わない。

とても人とは思えない愚行を勝手に決めつけた正義の名のもとに正当化しようというのか…

俺はやろうとしている事へ激しい怒りを覚えた。

「言いたいことはわかるわ。でもそれしか自分達を守る方法がないのも事実よ…これまでわね。」

「……これまでは?」

含みのあるウィンの言い方に俺は怒りを静めて聞き返した。

「そう。もし魔技レソナもフィジレスも無効化できて、戦闘に強くて、わたし達の見方が現れたら?」

「そうか!そうしたらその作戦をしなくてもいけるな。」

「ええ。そこでわたしはあなたをここに呼んだの。」

「そういうことだったのか…思っていたよりも壮大な理由だったんだな。」

「しかも幸いなことにトウヤはフィジレスだけを破壊してリムを救うことが出来たわ。それは冥族を倒すのではなく救うことが出来る唯一の人物…だからトウヤにこの世界の救世主、勇者になってもらいたいの!」

「なるほど…」

「さあ勇者トウヤよ。わたしと一緒に冥族…世界を救いましょう!」

「いいえ」

ウィンの芝居じみた言葉に俺はさわやかに断った。

…うん無理。ただの学生にその内容は重過ぎる。

今回はなんとかフィジレスを破壊できたのも正直運がよかっただけだ。

もし相手が攻撃魔技を多彩に使えるやつとか、あの竜が複数いるとかだったら間違いなく死んでいた。ただでさえこれでもかって思うほど悪条件ばかりなのに…、

ウィン達のことを守るとかなら考えるけどそんな大それたこと出来るわけないじゃないか。

俺の発言を聞き、ウィンはうなだれ、リムは苦笑して、ルヴィアは殺気を放っていた。

その様子を見て俺は違和感に気付いた。

(でもおかしいな…この説明が始まってから二人とも話してこないなんて。)

ルヴィアはともかくいつも明るいリムがなにも言わないのは明らかに変だ。

目を凝らすとなにやら口元にうっすらと×印が付いているのが見えた。

…お手つきでもしたのか?

という冗談はともかく俺のためにみんなが黙るように魔技レソナを使ったんだろう。

正直、言葉というよりも気配そのものが薄く感じられる。

その気遣いは嬉しいんだけど…ごめんな。

俺は心の中で二人に謝罪をすると、再度気まずい雰囲気を感じながらウィンのほうを見た。

「そんな…」

予想通り、ウィンは悲しい表情をしている…こんな顔をさせたくなかったな。

「ウィンを護ることは出来るけど、冥族全員を護ることは多分俺じゃできない。せっかく召喚してもらったのに…ほんとごめん。」

彼女にいえることは自分の胸の内を話して謝罪することだけだ。

俺は頭を深く下げて彼女の言葉を待った。

すこしの間…俺にとってはすごく長い時間が過ぎ、ウィンはゆっくりと口を開いた。

「さあ勇者トウヤよ。わたしと一緒に冥族…世界を救いましょう!」

えっ~っと…どういうこと?

俺の聞き間違いじゃなければ以前にも同じ台詞を聞いたような気がするぞ。

「いいえ。」

俺はもう一度断った。

「そんな…。…さあ勇者トウヤよ。わたしと一緒に冥族…世界を救いましょう!」

「いいえ。」

「そんな…。…さあ勇者トウヤよ。わたしと一緒に…」

「強制イベントかよ!」

なんでこんなにゲームっぽい感じになってるんだよ…確かに竜とか倒したけど!

というかさっきの罪悪感を返してくれ!

とか俺が全力でツッコミをしている間もウィンはずっと俺を見て答えを待っている…しかも上目遣いで。

おのれ、卑怯な…

「リム。助けてくれ!」

このままでは埒が明かない。とりあえず俺はリムに助けを求めた。

無論ルヴィアに求めなかったのはどんな答えでも五体満足で帰れる気がしなかったからだ。

「…しょうがないなぁ~。」

リムはそういうと邪魔をしていた魔技レソナを打ち消した。今は君だけが頼りだリム。

「えっとね。この場合はハイかイエスで答えればいいと思うよ!」

「なるほど。それなら大丈夫…ってどっちも肯定じゃねぇか!」

「さあ!答えてみよう!」

俺のツッコミは完全に無視したリムはウィンの背中を押して、わざわざ俺の目の前まで連れてきた。

おのれ、余計なことを!

「さあ勇者トウヤよ。わたしと一緒に冥族…世界を救いましょう!」

うっ、どうする?…選択肢を選んでください。


[▽はい▽イエス]


「…ってほんとに選択肢が二つしかねぇぇぇ!」

というかなんで選択肢画面になるんだよ!なんか変なカーソル見えたし。

(だ、だめだ。リムもあっちの味方だ。)

こうなったら残すは最後の門番…ルヴィアしかいない。

かなり危険な賭けだが、俺はそれに勝ってみせる!

そう思って振り返りルヴィアを見た瞬間に凍りついた。

笑顔だ。美人なルヴィアの満面の笑みだ。

見ているものは誰もが魅了されてしまうような顔ではあるが、俺には違って見えた。

その笑顔の奥からは巨大なプレッシャーを感じる。

背後からはゴゴゴッという音が聞こえそうな効果音とともに阿修羅像が見えた気がする。

よく見ると右手から光が溢れて、弓のような形状に伸びている。

(やばい。断ったら殺される…)

目を合わせてから冷や汗が止まらない。

どっちに答えても俺死ぬんじゃないのか?

(…ここまで期待されたら仕方ないよなぁ)

俺は半ば諦めながらウィンに話しかけた。

「…ひとつだけ条件がある。」

「条件ってなに?ある程度なら答えるわ。」

そう答えるウィンの声は勝ち誇ったような余裕が感じられる。

悔しいと思いつつ、それでもいいかなと思えるのはウィンだからなのかもしれない。

俺はウィンに近づくとそっと耳打ちをした。

『なんで俺を選んだのか後でちゃんと教えること。』

「え、えええええ!どうして知ってるの?」

それを聞いたウィンは先程の顔とは一変して顔が真っ赤になった。

俺とウィンが会ったのは偶然じゃないだろう。

こんなに短時間に俺もウィンも信頼し合っているのはおかしい…絶対に何か隠していると思ってカマをかけたら、どうやら大当たりみたいだ。

(…道理で最初の挨拶に「はじめまして」がなかったわけだ)

「まあ、せめてこの辺は知っておきたいからな…どうする?」

今度は俺が優位にたって話を持ちかける…なんか端のほうで弓を構えている人が居るがあえて見ないようにした。

「わ、わかったわ。ちゃんと話す。」

まだ照れているのかぎこちない声でウィンは答えた。

俺は無意識にウィンの頭を優しく撫でた。

「なら…しょうがない。俺はこれから勇者になるよ。」

こうして俺はなし崩しではあるが、自らの意思で勇者になることにした。

「そうと決まれば、ルヴィア様。殺りましょ……こほん、やりましょう。」

ルヴィアは光の弓を解除して、勢いよく立ち上がった。

「ちょっと待て!今の言葉も聞き捨てならないけど、どういうことだ?」

「あはは。楽しくなりそうだね。」

俺の質問はスルーされている間に、リムも立ち上がると二人は俺の両腕を取った。

な、なんか両腕に柔らかいものが当たるんですけど…これが天国…か…?

などと喜んでいると、いきなりスピードをあげて後方へと引っ張られる。

「いてて!一体何なんだよ。」

わけが分からない俺は叫ぶしかなかった。

「決まってるでしょ?今から全世界にお披露目よ。」

ウィンは先程のお返しとばかりに俺の鼻を指で押す。

「お、お披露目だと!…んな目立つこと今すぐやめろ!」

「「「それは無理」」」

「は、はい…」

文句を言おうとすると三人が凄い勢いで睨んできた。

…俺に選択権はないんですね。

「さて全世界に生中継でいくわよ!あとはまかせて!」

「おまえら絶対楽しんでるだろ~!やめろ、離せっ~……」

…こうして叫び声はむなしくフェードアウトして連れ去られた俺は、あのようなデモンストレーションをやらされる羽目となった


いつも読んでいただきありがとうございます。

今回はかなり文章が多いので、正直書くのに必死でした。

多分ところどころで誤字脱字があるとおもいますので後で修正しま。

本当に申し訳ございません。

次回は6/3 21:00の予定です。

宜しくお願いします。

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