ACT:33 シスター・オブ・スズキタロウ
待たせたな!野郎ども!
間違えた。お待たせしまして申し訳ありませんでしたごめんなさいすいませんアイムソーリー!
活動報告で生存報告を催促されたので生存がてら一気に書いたよ!
急かしてくれれば動くよ! 急かされなくても動けよ!
はい、すみませんでした。最新話です。どーぞ。
巻いて、巻いて! と急かされているおれたちスズキタロウがあれからの出来事を語るぜ! 何を言ってるか分からないと思うが、おれもわからない!
とにかくだ。
方卓騎士団を破ったおれたちスズキタロウだけど、その後も当然ほかの参加者たちが試合するわけであって……。
第二試合は剣正たちの「キングダム」と「遠征開拓団」。
惑星開拓事業における双璧同士の激突になったわけだが、勝負の展開は観客やおれたちの想像とはかけ離れた展開になった。
と、言うのも試合は剣正が一人で相手五人を討ち取ったんだが……。
「……おいおいおいおい! もはや人間やめてるでしょ、あのおっさん」
「キタちゃんの言うとおりだぜ。そのうち『おれは人間をやめるぞ、スズキタロウゥ!』とか叫びだしそうだよな」
「それならおれは『キミがブサイクになるまで殴るのをやめないッ!』」
あのダンディズムフェイスを整形してやろうではないか。
「まぁ、それよりも見たかよ? タロー」
ローが話を戻しやがる。現実はいつも無情だよね。
双璧と謳われるだけあって「遠征開拓団」は非常に優秀なプレイヤー集団だ。それこそおれたち三人であってもおふざけは控える。
それこそおれたちが相手した「方卓騎士団」を子ども扱いできる程度には強いのだ。
それを星繰剣正とかいうおっさんはひとりで赤子の手を捻るように叩き潰した。
「ありゃ、勝負じゃねぇよ……」
「まさに蹴散らしたな……」
ルールはおれたちが行ったものと全く同じもの。試合開始と共に「遠征開拓団」は三人が剣正たちに、残りの二人が星玉の回収に分かれた。剣生たちは四人でのエントリーになっているのだが「遠征開拓団」は今回のイベントでは最大人数の五人でエントリーしている。
おれたちから見てもその選択は妥当なものだった。予選で剣正と当たったときを振り返ってもその考えは変わらなかった。
それを――――あのおっさんは越えやがったんだ。
「剣正のおっさんに突撃した二人は〝勇者〟のなかでもベテランだった筈だよな、タロー?」
「……ああ。くそおやじめ。相手の攻撃を避けもしねぇで受けやがった」
結果は剣正のアバターが傷つくどころか相手の武器が砕ける始末。
「ありゃどこかで見つけた新素材使ってるぜ。いくらなんでも情報が無いのはきついな……」
「キタちゃんの言うことはもっともだ。オレたち調査組だからなぁ。探索組、それこそ最前線の素材についてはなにも知らん」
ローの言う新素材とは惑星開拓によって発見された地球上には存在しなかった植物・鉱物などを含めた自然資源だ。
早い話、惑星開拓に参加するプレイヤーは最前線に近づくにつれ未知の素材に触れる機会が多くなる。ただ新素材とはいってもすべてがすべて、地球資源に優るとは限らないのがミソだ。
最前線で見つけたからとしても自分たちが求める性質を持つ資源など早々手に入らない。また、新素材はそれこそ色々な研究機関などを経て使い道が模索される。
剣正のアバターを形作る『未知の金属』もまたそういった経路を辿ったはずなんだが……。
「……遠征開拓団が知らなかったことを考えるとホント最近だな。あのおっさんのアバターが新調されたのは」
遠征開拓団もまた最前線を往く集団だ。そんな奴らが剣正のアバターの性能を把握していないのは普通あり得ない。最前線は情報が非常に重要で、それはほかのプレイヤーの情報も含まれるからだ。
「遠征開拓団がおっさんについて知っていたなら普通に勝負を仕掛けることはしなかった筈だ。多分だけどあのおっさん、このイベントにアバター二体用意してるぜ」
「はぁ!?」
「……なるほど。予選で俺たちとまともに勝負したのにおかしいと思ったんだよ。今まで使ってのアバターと新しいアバターを別々に持っていれば予選と本選で違うアバターにコネクト・インすることも出来るもんな」
「いやいやいや! タローもキタちゃんもちょっと待てよ!? そんなイベント中にアバターを交換することは有りなの!? それって汚くね!?」
「いやいや、ローこそ何年惑星開拓してんだよ。惑星開拓は常に変化する状況に対応できるように、出来る準備はすべて整えるのが基本だろ? イベントにしたってそれは変わらねぇし、主催者側も暗黙の了解さ」
「…………マジで?」
まじで。
まぁそれはともかく、相手の攻撃を防ぐ素振りすら見せずに受けた剣正は驚愕のあまり動きを止めた眼前の敵に容赦しなかった。
剛大剣アルマヒクが唸る。
その場に残されたのは無残に木端微塵に散らばるアバターだったモノだけだった。
「あのおっさん、年甲斐も無くはしゃぎやがって……!」
「どうする? あんなの見たら相手にするの面倒になってきたんだけど……」
ローとキタちゃんの言うことももっともだ。
おれとしてもはしゃぐおっさんほど面倒くさいこの上ない存在は知らない。
だから苦渋の決断を下すことにしたんだ……。
「帰るか……」
「帰るな! 馬鹿タレ!!」
あべしッ!
●×●×●×●×
アホなことを抜かすバカ兄を思いっきり引っ叩いてやったけど、自分は悪くないと思う。
そもそもカナたちが何のために今回のイベントに向けて頑張ってきたのだと思ってるのか、この三バカは?
「しっかり目立ちたいと思うなら、いまあそこで正に注目の的になってる剣正さんを倒してくるくらい言えないからお兄ちゃんたちはスズキタロウなのよ!」
「「「名前だからねッ!?」」」
間違えた。
「ヘタレめ」
「…………妹ながらその眼はどうにかならんのか。そろそろ物理的に痛いんだけど」
「雑魚め」
「超毒舌! どうしたのお前!?」
「あのね。カナたちは曲がりなりにもお兄ちゃんたちに吊り合いたいと思って今回のイベントに参加してるわけ。あんた達は優勝がどうこうに興味は無いかもしれないけどさ、頑張ってる女の子を放り出すのはいただけないなぁ」
「「「う、うぐぅ……」」」
大体、私からしてみればお兄ちゃんたちも『甘え』ているんだよ?
実力はあるんだからもっと素直になればいいのに、コンプレックスを言い訳に周囲の人たちを刺激しないようにしてることに気づいてる?
私はもっと刺激しても良いと思うのに、一歩引いちゃうから変わらないんだよ?
「変わりたいなら……本気で変わりたいと思うなら踏み出さないと。格好悪くたっていいじゃない。負けたっていいと思う。本当にスゴイ人は周りを変えられる人だもん。世界中の誰がお兄ちゃんたちのことをすごくないと言ったって、私だけは認めてあげるわ」
「……どうした? 沙知。熱でもあんのか?」
「失礼ね!」
自分でも変なこと言ってる自覚はあるわよッ!
「ともかく! 帰ったらダメだかんね!?」
●×●×●×●×
なんだったんだ、あれは……。
沙知がおれに妹属性を付与させる危険性を孕んでいることをハッキリと認識した後、叶たちもやってくる。
「タロー君。次の試合はわたし達と……」
「刀華、ロロだな」
「見てて。わたし達を『その気』にさせたのはタロー君たちなんだから」
「お、おう……」
アバターだからとか関係なしに、澄んだ瞳がおれを射すくめる。
「わたし達が……ううん、勝てなくてもタロー君たちが自信を持てる試合にするよ」
そう言い残して叶たちも走り去る。
おれたち三人はただ茫然とそれを見送った。
●×●×●×●×
「あっははははは!」
わたしたちは試合会場に向かう途中で笑い転げていた。
「はっずかしー! なに言ってんだろ、私!?」
笑いすぎたあまり零れる涙を拭っているのは沙知ちゃん。なにやらタロー君たちに発破をかけていたようだけど思い返して笑いが止まらないんだとか。
夏海、弥生にしても抑えようとした声が零れてる。
「いやぁ、お兄ちゃんたちがやる気なさそうにしてたからどうにか奮い立たせようと思ったら……ないわぁ、思い返してもないわぁ……」
「青春してるよね、私たち!」
「夏海の言うとおりだわ。まさか自分が男の子の為に頑張ってみようなんて思う日が来るなんて思っても無かった。ねぇ、カナ?」
「弥生……。でもそうだね。タロー君たちはまだまだ遊びだけど私たちは本気だもん。次は私たちが本気にさせてあげないと」
「だいたいさぁ、お兄ちゃんたちはもっと自信持ってもいいんだって! ホントええかっこしいなんだからさ」
沙知ちゃんの言う通りで、タロー君たちは目立ちたいと言うけれど私たちとしては別にそこはどうでもいいのだ。
ただ、ちゃんと気づいてほしい――――『私たちは見てる』と言うことを。
「アピールしてもまだ群体がぁ~とか言ってるし。いい加減ちゃんと見てほしいもんね」
「そうそう……剣正さんたちの相手してるときにしても不特定多数ばっか意識しちゃって。キタちゃんたちからしたら仕方ないのかもしれないけど。男の子は目立ちたがりでもあるわけだし」
「弥生の言うことももっともで、周りじゃなくて私を見てよ! って思うんだけど、タロー君たちの気持ちも何となく分かる気がするんだ。だってやっぱり好きな人にはいい恰好したいもん。タロー君たちは実力はあるけど周りの評価がそれに見合わないからイマイチ自信が持てないんじゃないかな?」
だから、タロー君たちを見て変わった私たちを見てもらう。
それで自信を持ってもらうんだ。あなたたちは『それだけ』のモノを持ってるし、そうさせるだけの魅力は既に在るのだと。
「……カナ、あんた良い子すぎるわ」
沙知ちゃんの言葉にむず痒い思いをした直後、試合会場が目に飛び込んできた。
●×●×●×●×
『さぁ! 本選トーナメント一回戦も残すところ最後のカードとなったワケで、どーも立灯 怜で引き続き実況していきます!』
奴は小まめに自己紹介しないと気が済まないのか……。
おれたち三人が見下ろす会場では立灯の紹介の通りに二つのチームが向かい合っていた。
叶。上代。南野。そして沙知。
対するは刀華。ロロ。そしてマントを纏った最後の一人。
「お? マントを取るぜ」
キタちゃんが言った通り、会場では予選から姿を隠してきた人物が姿を露わにするところだった。
その姿を見て、おれは――――。
「おいおい、ハヤミン。あいつ知ってたんか、コレ」
人型アバターの少女はハヤミンの幼馴染である棚嶋響だ。
思ったより世間は狭いらしい。
●×●×●×●×
「ありゃ~……」
あちらさんも青春してんなぁと思っちゃった私は間違っていない。
お兄ちゃんの知り合いである速水くんの幼馴染さんだったか。あの先輩の繰り広げていた甘酸っぱい『限りなく成就したも同然の告白』の相手だった筈。
たしかに挑戦したいことがあるとか言ってたけどよりによってカナたちと同じような展開で、これまた対戦相手とは。
「……リア充爆発しろ」
「夏海、心の声が漏れてるわ。気持ちは分かるけど」
「や、弥生まで……」
たしかに参加しなくてもいいだろとは思うけど、こればかりは本人の問題なんだろう。響さん、あまり我が強そうではないし。
このイベントでいい結果を出すことで速水さんに吊り合えるという自信が欲しいと言ったところか……イケメソェ。
「ま、カナたち三人は響さんと星玉探しを競ってもらおうかね」
「え? 沙知ちゃんは?」
「前の二試合でもそうだったけど、相手チームの全滅だけが勝利条件じゃない。多分相手は響さんに星玉の捜索って保険を掛けつつ、残りの二人でこちらの全滅を狙うだろうし」
刀華さんとロロさんの眼がそれを爛々と語っている。二人とも隠し事は不得意そうだ。
「じゃあ私たちもそうすればいいじゃない? どうして三人で星玉捜索なの?」
「こちらの保険は私」
あくまで私は助っ人だ。
カナたちを勝たせるためにこちらのチームに居る。
「いくらなんでも刀華さんとロロさんの相手は、いまのカナたち三人じゃキツイわ。だからもう一つの勝利条件である星玉の確保を狙った方がいい」
「大丈夫なの?」
「ダイジョブ、ダイジョブ! これでもスズキタロウの妹にして幼馴染だぜ?」
私はニヤリと笑ってやった。
●×●×●×●×
『それでは、一回戦第三試合始めてください!』
実況の怜っちの合図とともにカナたち三人と響さんが周囲へと散る。
それを横目で確認しつつ、堂々とこちらに向かって歩いてくる二人に視線を向けた。
「……本当に一人で私たち二人を相手にする気なんだ? タローの妹とはいえさすがにちょっとムッときちゃうわ」
「刀華、刀華。気に入らない者は全て排除ですよ」
前から思ってたけどロロさんは本能に少し忠実すぎるんじゃなかろうか……。
「ま、あれの妹がどんなもんか思い知ってくれればいいよ」
「言うのね。そちらこそ剣正の娘というブランド、そしてそれだけではないことを教えてあげるわよ」
「刀華、刀華! 龍皇のブランドも忘れたらいけませんよ」
軽い雰囲気で会話しながらも刀華さんとロロさんは己の得物に手を掛けた。
「レヴァンティンにトリシューラ。どちらも第六世代の武器。そのなかでも最高の呼び声も高い二つね」
第一世代はただ素材に強さを求め。
第二世代は広範囲に破壊を撒き散らし。
第三世代はアバターとの融合による新境地を見出し。
第四世代は自律思考を用いた支援を請け負い。
第五世代は疑似的に自然現象を掌握し。
第六世代は一撃の爆発力を求め。
第七世代は特殊機能を以て万難に立ち向かう。
「へぇ、大きな口ばかり叩くから私たちのこと詳しく知らないのかと思ってた」
「冗談。知らない筈がないじゃない」
「知ってて言ってたんですか?」
「ところで二人に聞いてみたいんですけど、最高の武器って第何世代のどんな武器だと思います?」
「え? うーん……パパの使うアルマヒク? いや、でも私のレーヴァティンだってなかなか……」
「トリシューラ、と言いたいところですけど私は父の『天地を切り分けた刃物』を推しましょう。アルマヒクすら凌ぐ可能性を秘めた第一世代最大の剣です」
「って、どうしてそんなこと聞くのよ」
刀華さんがぶすっとしてしまった。
まぁこれから勝負って時に高めていた緊張を質問で散らされたのだから仕方ないかな。
ただ、私としては必要だったんだ。
「うん、どれも最強には名を連ねるかもしれない。でも最高はあり得ない」
「……なら、あなたが思う最高の武器はなによ?」
「まぁまぁ。えっと、惑星開拓でプレイヤーが使う武器はいろいろな神話とか物語とかが参考になってますよね? 新素材、新技術、それらが正に伝説の武器の機能を再現とは言わなくても、似た能力なり名前に見合った機能なりを備えさせることを可能にしたんですから」
「何が言いたいのですか? 時間稼ぎでしたらこれ以上付き合う義理は有りませんけど?」
「まぁ、私の答えとしては神話などで最高の武器がそのまま惑星開拓でも最高なんだと思うんですよ」
「はっ。何を言うかと思えば、どうせエクスカリバーとかグラムとか娯楽作品でよく目にする、誰が聞いてもわかりそうな武器だって言いたいの? 有名だからって強いとは限らないでしょ?」
刀華さんは呆れ、ロロさんは痺れを切らしている。もういいか。演出としては十分だろうし、これだけの啖呵を切っておけば妹としての義理は十分でもあると思うし。
「いやいや、私はもっと相応しい剣があると思ってるんです。それこそ私の愛剣なんか特に」
「……へぇ?」
「名は体を表すとも言うでしょう? 格好いい名前とか、聖剣のような通り名。成る程確かに強そうだ。しかしもっと単純でいいと思うんです。そんな由来の剣が――――」
「いい加減、長いです!」
焦れたロロさんが私に向かって突撃を掛ける。
速い。いくらアバターとは言え防御も間に合わないし、間に合ったとしてもロロさんの膂力とトリシューラの一撃の強さの前には為す術もないだろう。
でも私は言葉を止めなかった。止める必要が無かった。
「――――此処に在る」
「なッ!?」
私の眼前。
トリシューラの穂先を受け止めるのは一本の剣。それは唐突に私の体から飛び出した。
「自立武器!? 第四世代……いや、でも武器が単体で活動できるなんてあり得るの!?」
「刀華さんの言うとおり。第四世代ですよ」
宙を舞う長剣。
それが私の武器。
「……いつの間に」
一本だと思えたそれは、いまは十を数えるほどになっていた。
気付かれるはずがない。だって予選よりずっと前、それこそ会場に入る前からずっと遠くに待機させてたんだから。
第四世代最古にして最高を謳われる、シリアルナンバー四〇一。
それは北欧神話において本来活躍すべき場面で活躍できなかった剣。名前が武器として最高の目的を冠している剣。
「言ったはずだよね? 私のお兄ちゃんたちはそう安くないって。まずは私に敗北を刻んでみなよ? 舞踏剣姫さんに武闘破龍さん?」
私、鈴木沙知の惑星開拓プレイヤーとして勇者の通り名は『常勝不敗』。
「敵を討て、勝利の剣!」
剣群が躍る。
ここで駄犬から説明しよう!
棚嶋響とはだれぞや? と思った方も多いはず。
おれも思った。
ACT21でイケメソが『リア充』を醸し出してるのでそこで確認できます。




