ACT:32 本領発揮!? スズキタロウ! その四
タローの戦闘シーンがこれ以上ないくらいの出来だと思います。
スズキタロウの格好よさが爆発してます、マジで。
ローとキタちゃんが勝った。
いまいち格好よさに欠けるが……とはいえ勝ちは勝ちだ。しかも余裕での勝利。これでおれたちの評価も少しは上向くんじゃなかろうか。
現におれの目の前にいる黒騎士とやらは愕然と呟いているのだから。
「そんなバカな……我々方卓騎士団がこうも容易く……」
しかも奴の持つ剣は半ばですっぱりと斬れている。
インストールウエポン「粘金」を起動し、更に「ガラドボルグ」を展開したおれのアバターは正直いって凄まじいと自慢できる。
粘金はスライムアバターの液状の身体に金属の性質を付与させるもので、早い話が液体金属だ。
そしてガラドボルグ。指輪型の(指ないんだが……体の中に浮いてる)「身武一体」を標榜する第三世代兵装であるこいつは「自身の能動的運動エネルギーを薄板一枚状にして射出する」というものだ。
殴っても斬れる。でこピンしても斬れる。ある意味イロモノ武器である。
これが触手を生やす自由度の高いおれのアバターで行うと鎌鼬も真っ青の多刀流にして軟剣、しかして斬れぬもの殆ど無しといったことになる。
粘金で身体を硬くしたのは自由度が高すぎるため自らの体を誤って切らない為の保険である。
「こんな、貴様らみたいなふざけた存在に負けて良いことがあるものか……我々は方卓騎士団だぞ……勇者の、エリートの集団が」
…………ぶつぶつとフルフェイスで呟くさまは怖い。
精神衛生上良くないぜ。折角の勇者のイメージが崩れちゃうだろ。
はぁ……どうして魔王たるおれが勇者のイメージを心配せなならんのだ。
しかしこれでも一プレイヤーとして惑星開拓を愛する身。事業の心象が悪くなるような事態は避けねばなるまい。
「そしてローやキタちゃんとは違って格好いいところを確実に演出することにより叶のハートを掴む……ッ!」
「貴様らなんかにぃぃぃ!」
っと、ひとり一大決心をしているところに呟きを終えて逆上という結論を出した黒騎士が折れた剣で襲い掛かってきた。
うむ。その意気やよし。
「だがそのエリート然とした考えは好きじゃないなぁ。そんな勘違い野郎には魔王七つ道具をもって教えてやるしかあるまい。エリートが勝つんじゃない。強い奴が勝つんだよ!」
触手が黒騎士の右腕を斬り飛ばす。
「ぐあっ!」
たたらを踏んで後退する黒騎士。その分開いた距離は魔王七つ道具を準備するには十分な距離だ。
「音ってどんな現象か知ってるか?」
そしておれはそう尋ねることでこの試合の幕引きへとシナリオを立てていた。
●×●×●×●×
『さぁ、勝負も佳境になってまいりました! 誰も勝利条件の〝星玉〟を回収しないでバトルしてるんですけど、開拓者としてはいいんでしょうかコレ!?』
「どうなんだろう……?」
鳴ちゃんの実況に思わず零れたわたしの問いだったが、ちゃんと応えはあった。
「そうねぇ。まぁ探索中にも異星生物が襲い掛かってくることがあるから、それを迎え撃つという選択は有りだと思うわよ」
「弓奈さん……」
「まぁ、受けて立つにしても彼我の戦力を見極めることが大切なんだけれども。それは群体スズキタロウなら大丈夫でしょう。
それにいくら惑星開拓のプレイヤーの実力を測ると言っても、結局は人対人を見せものにしたイベントだから、そこまで大きな評価対象ではないでしょうし」
『ソレを言ったらおしまいだよ!』
時々思うけれど鳴ちゃんのアバターの集音能力はかなり異常な気がすると思うのはわたしだけだろうか……?
「ともかく……じゃあタロー君の活躍に期待してればいいですか? 単純に」
「なんか大分ストレートになってきてないかい? 叶ちゃん……」
「その問いには過度な期待はやめておいた方が言いと答えましょう」
深々と溜息を吐くレイラさん。
確かに前の二人――珠洲くんと鈴北くんの勝負を見ていれば何となく察しは付きそうだけども。勝っているのに格好がつかないというのも変な話だよね……。
「いいですか? 叶さん。群体スズキタロウを語る、もしくは見守るにあたって先達から一つの真理を授けましょう」
「……」
急に雰囲気が堅くなる――わたしはレイラさんの真剣な表情に思わず喉を鳴らしてしまった。
ぴん、と人差し指を伸ばして告げる言葉は、
「あれらの行動は自ずとあれそうでないであれ、終わりよければすべて良しに繋がります」
「…………」
えー……?
「結果だけを見れば勝利でも格好良かったとか、苦戦を強いられた熱い試合だったとか、余裕でまだまだ底が見えないため慄くだとか…………そういった面白みが全くありません」
●×●×●×●×
「なんか失礼なこと言われてないか!?」
●×●×●×●×
う、う~ん……。
強く反論できないなぁ……。
タロー君たちもいいところがちゃんとあるんだけど、万人には分かりづらいというか、見た目じゃなくて内面が良いと言うのか。
「あれですよね……見た目が悪いのにめっちゃうまそうな料理、みたいな」
「それだ!」
「それだじゃないでしょう、弓奈。それでも分かる人が見れば、頑張っていることがとてもわかる子たちでもあります。だから期待せずともあなたは自然と気づくでしょう。
恋は盲目とは言いますけれど、その目を通してしかわからない良さもあるということですかね」
「えっ!? いやいや!? そんな、恋だなんてッ!? たっ、確かにす、す、す…………………………ぅきですけどぉ」
他人からはっきり指摘されると恥ずかしい……。
頭がカッカッと熱を持ってぼぅっとする。レイラさん、そんな真正面から言わないでください……。
「あらあらまぁまぁ、指をツンツンしちゃってか~わぁいい! 初心ねぇ」
「弓奈……反応がおばさん臭いぞ」
「あぁん!?」
隣で世紀末的な夫婦げんかが始まりそうなのを慌てて止めながら、タロー君を見守る。
そうだね。
格好いい姿は見れないかもしれないけど、一生懸命頑張る姿は見せてほしいな。
●×●×●×●×
「くそっ、くそっ、くそっ!」
「いや、質問にはせめて答えてほしいんだけどな……」
ここまで来てまさか認識されていない、だと!?
「一体なんなんだ、お前っ!」
「あ、認識されてたや。何だと聞かれればこう答えよう……。
始原の魔王A! その名はす『は~い、さっさとしてくれませんかねぇ』実況って口出しすんの!?」
思わず振り返った実況席では立灯が腕を回していた。
「まいて、まいて、じゃねぇよ!? いつからTVスタッフになったのお前!?」
『分かって無い! 分かって無いよ、タロー君! きみ達、ぽっと出の敵に1年弱掛けているんだよ!? これを急げと言わずしてなんと言えと!?』
「おれ、お前の言っていることが何ひとつわかんねぇんだけど!?」
くそう、相手にするんじゃなかった……。
あいつは時々何か降りてきてるんじゃないかと思わせる発言をするから侮れん……。
「で、何だっけ……そうそう、音だよ音。あんた、音って何か知ってるか?」
「音だと? こんな時に何を! それより貴様! おれがこれで諦めるとでも思ったか!」
あー、ハイハイ。
我を取り戻して無手で殴りにかかってきちゃったよ、黒騎士さん。まぁアバターの膂力があれば徒手空拳でも脅威ではあるんだけど、それでもアバタータイプがモンクじゃない以上、無手に適したインストールウエポンの実装は無いだろう。
ただでさえ物理攻撃に強いおれのスライムアバターにその選択は最悪だ。
「あんたも惑星開拓を行うプレイヤーなら引き際も肝心だぜ?」
「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇ!」
だめだこりゃ。興ざめしちゃったぜ。
「でも使うと言った以上は使わせてもらうか。
で、話を戻すけど。音ってのは振動だよな。そんであまりに大きな振動って音って言うよりも衝撃になるんだぜ?
なぁ、お前。ソニックウェーブって知ってるか?」
「死にサラせぇぇぇぇ!」
見せてやろう! 魔王七つ道具「黙示録の青い竜」以上の破壊力!
「見さらせっ……! これが魔王七つ道具の一つ〝震撃の呼塵〟!」
●×●×●×●×
その名前を聞いた瞬間、顔をあちこち腫らした剣生さんが叫んだので驚いた。
「なにっ!? 〝究極的な頭文字Z〟にも数えられる武装を!?」
「知ってるんですか、剣正さん」
「うむ……効果はすごい。惑星開拓事業が進むにあたってインストールウエポンや世代兵装など、ありとあらゆるアバター装備が生まれたわけだが……」
そう言ってゆっくりと両手を顔の横に持っていく剣生さん。その視線は気のせいだろうか、胡乱気だった。
それほどに気を揉む効果を持つのだろうか……?
「プレイヤーに二つ名があるようにそれらの装備にも有名なものについては名前が付くものがある。
そしてタローが起動した〝震撃の呼塵〟は〝究極的な頭文字Z〟と揶揄される装備の一つだ。効果は……見てれば分かる。とりあえず、耳を塞いどいたほうがいいぞ」
「? はい」
素直に耳を塞いだ瞬間、ソレは始まった。
●×●×●×●×
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ビリビリとおれの放つ大音声が大地を、大気を揺るがしていく。
魔王七つ道具〝震撃の呼塵〟はただの声である。だがそれは周囲一帯を破壊し尽くすソニックウェーブという暴威となって現れる。
強力なのだが、その凄まじい威力にアバターが耐えられないという血管兵装でもあるんだが、それもおれのスライムアバターなら問題ない!
おれのアバターが振動に晒されるが無傷。ただこの漢らしい気合の音声だけを攻撃手段とするこの兵装をおれは気に入っている。
その姿には誰だって目を奪われるだろうと思うのだ。
そう、叶だって。
さぁ、括目するがいい!
おれの、魂を、世界を揺さぶる咆哮を!
●×●×●×●×
ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるんぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷりんぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるっぷるっぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるるん。
●×●×●×●×
「ぐはぁっ……」
『試合終了~!』
「えっ、終わり!?」
スライムが震えてただけなんだけど!?
こんな勝ちで良いの、タロー君!?
終わりなんだな、これが!
「究極的な頭文字ZANNEN」
また次回!




