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ACT:28  ロード・メイカーvs魔王Aスズキタロウ! 前哨戦

長らくお待たせしました。通勤直前の投稿です。

これだけ更新が遅いと折角のお気に入りも減るのは当たり前です。

自らの至らなさを反省してます……。

それでもいまだに見てくれる人には感謝を。

 おれの目前で地面が弾けた。

 剣正の踏込み、その一歩の衝撃で地面が揺さぶられたのだ。いくらアバターの持つ超人的な身体性能があると言っても、その人工の肉体を操る意志は普段生身の体を操っているただの人間だ。

 実は惑星開拓事業に於いてプレイヤー間でもっとも実力の差を助長していると言われているのは、アバターの性能でも各種ウエポンの性能でもなく、それらをどれだけ使いこなせるか――即ち身体制御と呼ばれる領域である。

 人間の体は脳がリミッターを設けているため「本当の全力」は出せないようになっているという話は聞いたことがあると思う。早い話、体が耐えきれないので防衛機構としてのリミッターが必要であるということだ。

 それは人間の意志がアバターと接続しても同じことで、無意識の壁が各プレイヤー達の惑星開拓に立ち塞がる。

 さて。

 では「生きた伝説」とまで目される勇者認定プレイヤーである剣正は一体どれほどの身体制御技術を持っているのかということになるんだが……

「大概バケモンだな! いい歳してはしゃぐなよ!」

 おれは自らの体を水に溶けさせ剣正の正面から離脱。そのまま大きく弧を描くように背後に回って実体化する。

 ちらっと周りに目を向ければ剣正の踏込で生じた衝撃でひっくり返っているプレイヤーがいくらか目に入る。はっきり言って武器要らないじゃん、あのおっさん。

 だが、おれとて魔王認定されたプレイヤーである。あそこまで人外ではないが身体制御には自信がある。というかある程度自信が無いと魔物型アバターを選択はしない。体の構造が人とは異なるため常識にとらわれないことが大切なのだ。

 そう「常識」。

 惑星開拓に於いて始めに求められるのはそれを捨てることなのだから。

 あんな動きはムリだ、不可能だという常識をぶち壊す人間たちが「惑星開拓者(プレイヤー)」である。

 おれの体が虹色に煌めく。第三世代兵装「インストールウエポン:ガラドボルグ」がおれのアバターの内部で走っている証拠である。幻想的な色合いはファンの増加につながるだろう。とくと見るがいい! これが魔王スズキタロウの常識外れの能力だ!

 ぴロぴロぴ~!

「……カラフルな粘体って結構キモいな」

「なんかアレだ。床屋の入り口に立ってる……」

「ああ! 三色の? 言われてみればあれが七色になったみたいだな……」

「とりあえず目が疲れる」

 大不評! そんなバカな……いいんだいいんだ。おれは叶がいればそれだけで。

 心の拠り所へと縋るように目を向けて、

「タ、タロー君! 後ろ後ろー!」

「ん?」

「余所見たぁいい度胸だ!」

 剣正が振りかぶったアル・マヒクを振り降ろすところだった。

 おっと、やばいと思った時にはおれの視界は真っ暗だった。


 ●×●×●×●×


『…………ボッって言いましたよ。ボッって』

 実況の怜ちゃんが呆然と言ってるけど、それも無理はないと思う光景だった。プレイヤーとしての格が違いすぎることを思い知らされる一撃は、足元の水をモーゼの十戒のように割り、天のドームを突き破り頭上の海を掻き分け、海中都市であるはずのここ竜宮城から剣閃に沿って水蒸気が掻き回されたのか一直線に雲が奔り、ついでに思い出したようにさり気なくタロー君を跡形もなく消し飛ばした。

 て言うかそれ以前に、

「……っかしぃなぁ。鈴木君があまりに存在感薄くていつの間にか見失っちゃった」

「おいおい夏海。しっかりしてくれよ。あいつは解説席だろ?」

「お前こそしっかりしろよな、ロー。あいつは今日ここに来てないだろ。なぁ弥生」

「え? 誰?」

「素! 素で疑問形だよ弥生ちゃん! その死すら希薄過ぎて正確に把握できないとは我が兄ながら恐るべし……! いや、待って…………私って一人っ子だっけ、カナちゃん?」

 存在が無かったことになってる! ひどいよみんな!


神『いや、お前さんもついでにとかさりげなくとか結構ひどかったぞ? まぁつまり、こういうことじゃろう?』







          今までご愛読ありがとうございました! 

          わたくしlosedogの次回作にも御付き合い下さると嬉しいです! 

          その希薄感から気づかれることなく最終回を迎えていたんです!

          それでは!




                  〈〈前  目次


















 こらこらこらこら!

 終わらねぇよ!? 死んでないから! なに? 死すら希薄過ぎて認識できないって……。生きながらに幽霊より存在感薄いってどういうこと?


神『これがホントの生霊じゃな』


 っさいわ! 神が何ぼのモンじゃ! おれは鈴木 太郎だぞ!? だからどうした? ですよねー。

『お? おお? おおーっと!? 水が盛り上がり現れるは魔王A! あそこまで木端微塵になっているのに再生できるとは! あのアバターには破損という状態が存在しないのかぁ!』

「ふふふ……お答えしよう」

『あ、いいです……』

 いや、聞けよ! 聞いてくださいお願いします!

 このアバター何を隠そう物理耐性が高いとかの領域を越えて、物理無効だから。まぁその特性ゆえに扱える人間が居なくて生産中止になった初期アバターなんだけど。

 このスライム型アバターを弱そうだと馬鹿にした奴は咽び泣くがいい! 人型アバターには持ちえない、変わった特徴を持つものが多い魔物型アバターの中でもスライム型はまた異質だということを見せてやる。

「おいおい……タローよぉ。お前、今それは使うべきじゃないだろ?」

「くくく。おれは魔王だぜ剣正? 己の目的のためには手段は選ばん!」

 おれの体から不気味な音が出ているのが聞こえるのだろう。観客席は静まり返っている。注目されるってなんと気分のいいことだろうか……!

「出た。タローの魔王七道具」

「ロー君知ってるの?」

 南野の質問にしかしローは答えない。気持ちは分かる。おれの魔王七道具は相手にしたアバターを百%の確率で全損に追い込んだというまさに悪魔の兵装だからな。

「いまのあれでも一番弱い奴なんだよ……」

「キタちゃんも大概だと思ってたけど……」

「話だけは聞いたことがあるけどあれが? お兄ちゃん、群体スズキタロウって言われても語呂から苗字がスズキ、名前がタロウを連想するからリーダー格はおれだーって豪語してたけど」

 妹よ、内弁慶なおれの心を外部に晒すのはやめてくれ……。

「しかし見ろ! これこそ魔王七道具と呼ばれしインストールウエポン、その一つ……! その名も――〝黙示録の赤い竜(アポカリプス)〟!」

 おれの体が恐ろしきドラゴンへと形を変える。液体状のアバターならではの変態能力。

 見晒せっ! 魔王Aの真の姿を! ふふふ……私はまだ七段階の変形を残している!

「……――変っ、身っ!」
















「「「青いけど!!」」」

 ありとあらゆる人間、三百六十度からのツッコみって壮観ですね。


 ●×●×●×●×


「しかもちっちゃ……!」

「沙知ちゃん、落ち着いて……」

「だってカナちゃん! 黙示録の赤い竜とか勿体ぶりながらアクアブルーだよあれ! スライムだから仕方ないけど! しかもあのサイズ! 手乗りじゃん! ヤモリだよ!」

 沙知ちゃんの言うとおり、かわいいデフォルメされた手乗りドラゴンは光に照らされてアクアブルーの肉体を惜しげもなく晒していた。魔王七道具とか大層な名前の割に見た目が和むのはいわゆるスズキタロウクオリティなのかな?

「馬鹿! 刺激したらダメだ沙知ちゃん!」

「ローの言うとおりだ! タローが最弱とは言え魔王七道具を使用したってことは……」

「……ことは、何よキタちゃん?」

 心の中で弥生に続く。ことは……?

「剣正、死……!」

「うちの夫を殺すな!」

 スパコーン! と烏天狗の頭を叩いて現れたのはタロー君と戦っている剣正さんの奥さんだった。

「あ、弓奈さん」

「叶ちゃん、弥生ちゃん、夏海ちゃん勇者認定おめでとー」

「私からもお祝いの言葉を、おめでとうございます。遅れてすみません」

「あ、いえ。レイラさんも気にしないでください。お礼を貰えるだけでも十分です」

「そうだよー! 龍妃さまっ!」

「夏海……少しは言葉遣いにも気を付けなさいよ……」

 剣正さんのパーティーとタロー君のパーティー、それに私たちのパーティーが集まっているのは二人にそれなりに近いので他のパーティーは巻き添えを恐れて近づかない。

 見れば刀華さんとロロさんのパーティーも近づけていないようだ。もう一人のパーティーメンバーはフードを深くかぶって顔が見えない。誰なんだろう?

「でもあの状態のタローと剣正がやり合えば、まず間違いなく竜宮城は全損だぜ?」

「貴様……我が家を壊すというのか」

 我が家!? ここ全部!? でもライナスさんは龍皇と呼ばれるプレイヤーである以前に火星人のトップでもあるわけだから不思議じゃないのか。

「見てみろ」

 鈴北君の言葉に皆が二人の方へ向く。丁度アポカリプスタロー君が剣正さんに向かって小さなお口を開けていた。

「ぬおぉぉぉぉ!」

 冷や汗と共に決死の表情でアル・マヒクを構えたあたりで様子がおかしいと思ったがアポカリプスタロー君の外見が緊迫感を許してくれない。

「ぽぅ!」

 変な掛け声と伴にアポカリプスタロー君が吠えた。その瞬間アクアブルーの小さな身体が太陽のように輝いた。そして、







 チュッッッッッ…………ド―――――――――――ン!!!!!!







「「「………………」」」

「あの状態のタローは体内に取り込んだ光を乱反射させて打ち出すとかなんとか……。なんて言ったっけ、キタちゃん?」

「太陽光収束型呼吸式光学迫撃砲だよ。通称ブレス」

 タロー君、恐ろしい子……!

「あー……」

「見ろ、タローの攻撃力を。存在感の全てをアバターに詰め込んだオレ達の性能は半端じゃあ無いんだ……」

 鈴北君、そんなことするから目立たないんだよ……それはともかくこの破壊力は結構厄介だと思う。珠洲君の言った会場であるここが消し飛ぶという心配にも頷けるくらいだ。

 爆発の余波が晴れた先では煤けた剣正さんが息を切らして立っていた。それを遥かに見上げるアポカリプスタロー君。

 あれが魔王だとはとても思えない……。

「仕方ないわねぇ。会場が壊されないうちに他の参加者を落としちゃいましょう」

「おい弓奈。貴様……剣正の許可なく手の内をさらしてもいいのか?」

「気にしない気にしない。あの人に私がどうにかできて?」

「「「勇者尻に敷かれてんだけど!」」」

「まっ。そういうわけで。レイラは周りの警戒をお願いね。一応」

「嫌々ながら受け持ちましょう。ああ叶さんたちこちらへ、一緒にお茶でも。ローとキタちゃんはどことなりへとでもお行きなさい」

「ちょっとぉ!?」

「冷たい! 冷たいよレイラさん!」

「俺等も守ってください!」

 釣れない態度をとったレイラさんに弓奈さんと珠洲君、鈴北君が噛みつくが当の本人は表情一つ揺るがない。役者が違うなぁ……。

 でも任せても大丈夫なんだろうか? それとなく不安……。

「まったく……。じゃあやるわよ――〝アルテミス〟起動」


 ●×●×●×●×


「タロー……貴様ぁ……」

 おれの目に映るは〝黙示録の青い竜〟のブレスを受けてなお五体満足な〝ロードメイカー〟星繰 剣正。流石と褒めてやるところだ。

 だが……

「お前めっちゃアフロ。ぷぷっ……!」

「観客が大勢いる前でそれを使う奴があるか! お前はいつも考えが足りねぇんだよ!」

「なんだと! お前がおれの攻撃を受け止められないわけがないだろうが! どうだこの敵ながら築かれた信頼関係!」

「うっさいわ! お前の信頼なんぞ嬉しくも無い! 大体お前……青いじゃねぇか!」

「おまっ! それを言ったらおしまいだろ!? そんなこと言ったらこのプルプル震える体だって許容できなくなるだろ! そこはかとなく目をつむるんだよそこは!」

「つむれるか! いつもいつもふざけた成りしてデタラメな!」

「お前の方がデタラメだよ! バーカ、バーカ!」

「バカって言った方がバカなんだよ小僧! アホめ!」

「お前の奥さんでべそ!」

「貴様弓奈の体を見たことあんのか!? 貴様の存在感ミジンコ級!」

「……あ、うん。ほんと……どうしたら目立てるんだろうね……?」

「あっ……すまん……。これを言うのは不公平だな……紛う事なき事実だし……」

 その反応の方が堪えるんですけど……ミジンコ級て。紛うことなき事実って。

ブロウクンハートのおれを余所に外野では事態が進行していたらしく子供じみてきた勇者と魔王の決闘に水を差したのは、海底都市であるはずの竜宮城に降り注ぐ流星群だった。

「これは……弓奈か?」

 連続する空からの光弓は他の参加パーティーを容赦なく射抜いていく。

「アルテミス……!」

 またの名を月の射撃神話。そのまた別の名を絶対必中流星群。またまた別の名を、

「ぬおっ!? おい弓奈! 俺にも攻撃来てる!」

「ははは! ざまぁ! 勇者のくせにパーティーにやられるがいいわ……ぎゃー!?」

 怒れる勇者の妻は勇者と魔王も容赦なくロックオンしたようである。一撃一撃は先程のおれのブレスには劣るが、それでも高威力の射撃が連続して、しかも空恐ろし精密度を以て上空から降り注いでくるというのだから堪らない。

 この恐怖感と言ったら……!

「これ、狙撃とかじゃなくて無差別じゃね!?」

「弓奈! おい弓奈! 愛する夫がここに居ます! 弓奈~!」

 おれと剣正はそうして光の柱の乱立に呑み込まれていった。


 ●×●×●×●×


『……え、え~。只今を持ちまして残存パーティー数が既定の数になりましたので予選を終了したいと思います』

 怜ちゃんのひきつった実況が空しく響き渡る。立っているパーティーはだいぶ少なくなって、遠目には息を切らした刀華さんたちが見える。どうやら母親の攻撃に晒されたらしい。

 傍にいるのは夏海と弥生。それに攻撃した本人である弓奈さん、レイラさん、ライナスさん。珠洲君と鈴北君は攻撃が始まってすぐさり気なく攻撃の元へ放り投げられていた。

「ふっ……またつまらぬものを撃ってしまった……」

「会場全部絨毯爆撃ですけどね」

「お、俺の家が……」

 タロー君たちは無事なんだろうかと思った時瓦礫を押しのけて数人のアバターが現れた。

「弓奈! 俺まで撃つとは……泣いちゃうぞ!?」

「勝手に泣いてろ! あんな無差別攻撃女と結婚したお前が一番信じられん!」

「落ち着けよタロー。まずその魔王七道具を解除しろよ……オレのトラウマが甦るから」

「レイラ! ローともども俺を放り出すなんて薄情じゃないか! やるならローだけにしろ!」

 みんな焦げたりしてて色々残念な様子だけど五体満足でいるあたりどんぐりの背比べである。そんな様子を見て横の弓奈さんは気持ちよさそうに額の汗をぬぐう動作をとって、

「計算通―り!」

「嘘おっしゃい」

 レイラさんに叩かれていた。

 とにもかくにも本戦にまでコマを進められたようである。


更新遅いくせに何をと思うかもしれませんが。

読者数がどうにか増えないかとあらすじやキーワードをちょくちょく弄ってます。

そちらも含めてご意見ご感想などありましたらお願いします。



また、次回!

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