ACT:22 スズキタロウ、勇者を語る
大変、お待たせしました……! お待たせして申し訳ありません!
ちょっと休みが少ない週でして……。
とりあえず、書きました。
『おぉ~っと!? これは意外な展開だ!』
一体何事か。実況の立灯がまたも騒ぐ。今はおれ達ゲストの紹介も含めた開会式が幕を閉じ、試験に入る……と言うところだったんだが。試験方法をランダムで決めているところだ。会場に設置されたスクリーンにはスロットみたいにいくつかの試験内容として名乗りを上げた文字が回転し、丁度止まったところだ。
どうやらサポートセンターも勇者認定者たちの実力について、そのバラつきは問題ありと考えていたらしい。従来の集団戦トーナメント一択の試験内容ではなく、予選、本選各試合ごとに勝敗条件を変更し、それによってプレイヤー達の戦略も大きく変わるということだ。
『勇者認定者の評価基準は今までは純粋な戦闘力だけでしたからね。それが惑星開拓活動になると、称号持ちにも関わらずクエストを中々上手く成功にまで持っていくことが出来ないという弊害を生んでいたわけです』
『ほほう。魔王のくせに語りますね、Aさん』
『お前、礼儀というモノを一体どこに置いてきた?』
『主に、母の胎内にですかね』
『それでですね』
『スルー!?』
こいつに付き合ってたら話が全く進まないことを直感したため、おれはちゃんと解説の仕事を果たすことにした。これはとても些細な活動だが、個人認識に至るためには重要な第一歩である。群体脱出、こつこつと。
『開拓、というと未確認生物の討伐にばかり目が行く昨今であるため、戦闘力が重視されたのも仕方ないのかもしれません。しかし一口に開拓と言っても、多岐にわたることは中々知られてはいないのです』
そもそも「土地を開墾」するのだ。討伐という活動の方が珍しい。
『未開拓地域の探索調査、資源の調達、集落の構築に防衛などなど。実はそういった活動も人型プレイヤーの主な活動です。人の生活に密接に結び付く活動がメイン。だから〝人型〟なんです。因みに私たち、魔物型の活動は自然保護地域の巡回、地球外生命の生態調査、開拓済み地域の緻密な調査による生態系の確認など、それらを基礎にした生態系の維持。人外に重きを置いた活動を主としているプレイヤーです。まぁ、ある程度経験を積めばアバタータイプに依らずどのような活動もこなしますが』
『成る程。とりあえず試験内容の目的を言うならば……今回からは戦闘能力だけが評価基準ではなくなったわけですね?』
『その通りです。サポートセンターも勇者プレイヤーの信頼が低迷している現状には頭を悩ませていたのでしょうが、そもそも勇者の称号に広範な能力を求めるなら単純な評価基準ではダメだったんですね。しかもこの試験内容の変更を今まで誰にも明かさない徹底ぶり。今回はサポートセンターの本気が垣間見えます』
『つまり、これから始まる一次予選も勇者には必須になるであろう能力を求めていると言えるわけですね?』
『そう思いますよ。まぁこの結論に至るまでに過去十七回既に試験が行われている時点で少し遅かったかもしれませんが、今回ばかりは個人的にサポートセンターに対する評価が急上昇しましたよ。巷には外道勇者と呼称される乱暴者も多くいる中で、この試験内容。確かにそのようなプレイヤーには勝ち残ることはまず難しいでしょうし、人当たりにも目を向けたあたりにプレイヤーには〝好感度〟を、サポートセンターには〝親しみやすさ〟重視しようという試みでしょう』
『説明有り難うございます。それでは早速一次予選に入りましょう! 記念すべきリニューアル勇者認定試験、初めての試験内容は――〝どきっ! 瑞々しいよ水泳競技! 水着審査もあるのかも……?〟でぇ~す!』
「「「なんで!?」」」
参加者の絶叫が竜宮城を包む群青のドーム内に木霊する。正直勇者と一体なんの関係があるのか。先ほどのおれの説明はなんだったのか。
それはともかくおれ達は実況席より上、VIP席に居るサポートセンターの重鎮たちに振り向いて互いにサムズアップを示した。
水着、ぐっじょぶ。
●×●×●×●×
先ほどの広場から外に出て、これまた大きな湖のような場所にやってきた。ここ、火星の竜宮城は海中都市なので海の中に、対岸が黙視できない広大な湖があるよう。流石に地球の自然とはスケールの大きさが違うと感じられる。
「……どうでもいいけど、本当に水着を着る必要があるの?」
途方に暮れたような声音は、紫穂先輩。先輩の手に摘ままれているのは、薄緑色のビキニ。人型アバターって、現実の体と動きに違和感が出ないように身体データも同じなのよね。こんなにも多くの人が観戦に来るイベントで、肌を露出するには少し抵抗があるなぁ……。
「でも、水着を着なかったらどういった状況になるかもわかりませんよ? ふざけていることは否めなくとも、サポートセンターですからね。どれだけの目的が込められた種目なのか見当もつきませんし……」
弥生の言うことには私も少し不安がある。色んな場面で思い出すことが良くあることなんだけど、この惑星開拓を主に取り仕切っているのはサポートセンターを経営している「惑星開拓公社」で、実は弓奈さんとかはこの公社に雇われているプレイヤーだ。私たちはフリーだけど。それでこの公社、開拓事業に娯楽要素を盛り込んだだけあって、事あるごとに重要な目的を持つ活動であっても遊び心を忘れない、困った……と言うか遊び心に富んだ集団で。
「羽目の外しようには定評があるからね……」
そう言いつつ、水着を物色している夏海に倣い私たちも水着を選ぶことにした。
「生きてて、良かった……」
「俺には響が……!」
更衣室から出てくると同じパーティーの速水君と氷室先輩が既に待っていた。二人ともトランクスタイプの水着。正直ビキニタイプを選んでたらどうしようかとも思ったけれど、目のやり場には困ることはなさそうだ。
でも、他の参加者含めて男性の目線はハッキリとわかるので勘弁してほしいな……。
そんな私たちの水着は。
私がホルタ―ネックタイプのタンキニ。ボトムスの上にカーゴパンツを履くことで、気持ちボーイッシュにまとめてみた。
弥生はチューブトップタイプ。ボトムズは私と同じようにカーゴパンツを履いているけれど、その剣道で引き締まったウエストは自慢と受け取っていいのかしら?
夏海はセパレートタイプの水着。ボトムズはミニスカートみたいなデザイン。すらっとした脚が相変わらず羨ましい……。
紫穂先輩は普通にビキニだった。この場で普通に着こなせるあたり、先輩も十分きれいだと思う。〝淑女〟とかはっちゃけちゃったから、異性が寄り付かなかったんじゃないかな。
私たちのパーティー以外にも女性プレイヤーはもちろん参加してるし、皆どことなく居心地が悪そう。男性プレイヤーの視線の一部がどこかおぞましく感じちゃうほどに、注目されているのは間違いない。
と、そんな中に怜ちゃんの実況が耳に届く。
『プレイヤーの皆さ~ん! 着替えは済みましたか? それでは早速競技内容を説明してもらいましょう! 解説の魔王さ~ん?』
『はい、こちらAです』
『Bです』
『Cも居ます』
人を模したスライムが! ビキニを履いているッ!! タロー君、ちょっとかわいい……。珠洲君と鈴北君は短パンタイプだけど、そちらも中々かわいいなぁ……。
『競技の説明は私、Cが説明しましょう。皆さんの中には水着なんかに着替える必要があるのかとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、これには大変重要な意味があります』
鈴北君が参加女性プレイヤー全員の内心を吹き荒ぶ疑問に答えてくれるらしい。
『目の、保養です』
「「「…………………………」」」
長~い沈黙。冷えた視線と、熱気のこもる視線が魔王Cを貫いた。こもった感情はそれぞれ主に敵視と感謝だと思う。
『まぁ冗談は置いておいて』
「冗談とは思えないよ、ロー君!」
珍しく感情を素直に表して夏海が叫んだけれど、タイムスケジュールが押しているのだろうか。玲ちゃんが開会式をあれだけカットしたのに、鈴北君は淀みなく話し続ける。
『さて一次予選の水泳競技ですが、水泳とは言いますが火星のように水が大部分を占める環境は地球を含め、テラフォーミング後の惑星も持つ特徴の一つです。言いかえれば水中の活動は上級プレイヤーにとってはとても重視される必須技能とも言えるのです』
「もっともらしいこと言ってんじゃないわよ!」
「むっつりー!」
『…………こほん。それでは始めてもらいましょう。一次予選は〝水中鬼ごっこ〟。競技名に惑わされることなく、必要な技術を用いて目的を果たしてください。鬼役はエウロパからのゲスト、セイレーンの皆さんです』
『よろしく~!』
「カナ―! 弥生! ナツミン! 捕まえられるもんなら捕まえてみてね!」
あ、マーレもいる……。
●×●×●×●×
『さぁ、始まりました。第十八回勇者認定試験! 広大な湖を多数のプレイヤーが十人のセイレーンを追って泳ぐ! 泳ぐ! どう見ますかBさん?』
『いや~。目に眩しいですね。瑞々しい肌とか、水しぶきとか、肌色とか、笑顔とか、水をはじく肌とか』
『ありがとうございました』
『いやいや。終わらないよ? この水泳競技ですが惑星開拓で水中技能は〝マリンスキル〟とも呼ばれる、水中探索にはとても重要なものになってきます。水棲のセイレーン達の水中移動速度は半端なく速いですから、そう易々と捕まえられるとは思いません』
『おぉっと? Bさんの言うとおり、ただ泳ぐだけで一向に追い付く気配の無かった受験者たちに動きが出ましたよ? 何でしょう?』
『……ほう! これは勇者候補に過ぎないプレイヤーでありながら貴重な武器を持っているものです。あれは……アルマス! 〝抜けば珠散る氷の刃〟とまで称される剣ですね』
『用語解説はお手の物です、Bさん。それではCさん。あれはいったい何をやっているのでしょう?』
『ふむ。見たところあの女性プレイヤーですね? これまた形の良いおっ……ゴホン。え~、あれはセイレーンの移動手段を封じようということです。水中を移動するのが得意であるのならば、そもそもの条件を変えてしまえばいい。つまり〝水中〟という環境を取り払おうというわけですね』
『ほほう。それで湖が徐々に氷を張っているわけですか。セイレーン達を陸地にあげるように氷で移動速度を奪うのが狙いのようです』
『直面した問題に対して現状の自分では直接的な対応が出来ない場合、直面した問題の条件を省みたのは良い着眼点です。マリンスキルが伴わないので、それが不必要な状況を生み出そうという狙いでしょう』
『結果、マリンスキルが使えなくてもセイレーン捕獲の可能性がグンと上昇するわけですね……あ、Bさんあれは一体なんでしょう!? 水が割れています!』
『な……あの武器は魔王プレイヤー〝エウロパの斬り裂き魔王〟ジャックマンの武器のはず! 何故あの武器を称号なしの人型プレイヤーが……!?』
『……ダーインスレイヴ』
『Aさん、それは……?』
『斬れぬものは無し、と豪語した魔王型プレイヤーが使用した武器の名前です。魔王プレイヤーはインストールウエポンが特徴ですが、やはりごく普通に武器を使った戦闘の方がアバターと現実の体との間に違和感が小さいのです。そのためごく普通に武器も使用するのですが……』
『では、あの武器はその魔王プレイヤーが譲った……?』
『……いえ、今しがた情報が入りましたよ。ダーインスレイヴを使用しているプレイヤーの名前はギリアム。エウロパを拠点にしたプレイヤーですね。情報によると、ジャックマンに弟子入りしたとか……』
『おぉ? 人型プレイヤーが魔物型プレイヤーに弟子入りとは……。勇者希望者が魔王の手ほどきを受けているとか……色々と突っ込みどころの満載な参加者だー!』
『……セイレーンが、跳ねてますね』
『活きが良い』
『新鮮そうだな』
『割れた水の道を悠然と歩くギリアム! あ、あぁ!? さらに剣を振りかぶる~! 移動力が著しく低下したセイレーンを逃がさないと言わんばかりです! 目的のためには手段は選ばないのか!? 果たして勇者に必要なのは情か、目的達成能力か~!?』
『……ノリノリですね。それはともかく。セイレーン達もアバターを使用しているとはいえ、少し心配になる行為です。心象が良い行動とは思えません』
『そして、剣がぁあぁぁぁっと!? ダーインスレイヴを受け止めているぅぅぅ!? 立ち塞がったのは、六人のパーティーだぁぁぁ!』
『高校生のパーティーですね。参加名は……霧ケ峰高校。一応言っておくが、身内だぞ? 立灯……』
『剣を受け止めたのは、女性プレイヤーですね、Aさん』
『個人的に一押しのプレイヤーですよぉ! イケメンはこのパーティーに入らないですね排除でお願いします』
『Bとしてはチューブトップのプレイヤーがお勧めです。後ろのパッとしない男はスルーで』
『Cはセパレートのプレイヤーに光るものを感じます。まず男はいらないですよね』
『……………………………………ノリノリだな、オイ。魔王ども』
『何を言う! ちゃんとした解説ですよ! 翻る剣閃! 響く剣戟! 水弾く肌! 濡れたうなじッ!』
『交錯する視線! 高まる緊張! 煌めく銀光! 太陽光に映える白い脚! 髪の張り付く額ッ!』
『背に庇うセイレーン! 対峙するプレイヤー! 対面する双丘! 振りまかれる魅惑ッ!』
『オイ。途中から煩悩に切り替わってんぞ魔王ども。とりあえず! 互いの掲げる〝勇者像〟を胸にプレイヤー同士の激突だぁぁぁ!』
こいつらや惑星開拓公社は「勇者」に何を求めているのか……。
感想などあればお気軽に送って下さるとうれしいです。
また、次回!




