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ACT:21  どうもワタクシ、コメンテーター・スズキタロウ

総合百ポイントいきました! ありがとうございます!

前回、画策中とありましたが、本当に到達できると思っていなかったので何も準備してません。

一応次回までには何か形にしてみよう……可能な限り。


とりあえず、最新話。待たせた割に短くてすいません。

 今日は勇者認定試験が開催される日だ。

 え? いきなりすぎる? これを「古典的表現技法」という。起伏のない日々、早送り。

 舞台は火星海底都市「竜宮城」。頭上を見上げれば、どこぞの水族館の水中トンネルのような光景が広がるが、規模が違う。その光景は見渡す限り、端が見えないし高さは本物の空のごとく果てしない。イッツ・ビューティフル。

 その「蒼穹」とは違う「群青」の空を持つ海底都市の中心にそびえるは、都市そのものの名として認識されることになった竜宮城。いくつか見える尖塔の屋根は某ゲームのスライムが巨大な金色になって鎮座しているようである。アラビアン風味。

「……ついに、来ちまったな。この日が……」

 その気持ちはよくわかるぞ、ロー。剣正とライナスからの「お前娘(まむす)」(お前に娘はやらん! の略)があってからの日は怒涛の勢いだった。

 まず、ジェントルクーデター勃発。奴の主張は「ずるい」であった。淑女の皆さんが、

「努力せずしてモテは無し」

 という格言を残し収束したくだらな……哀しい蜂起だった。とりあえず奴のやる気を出させるために学校側に応援を要請するという無茶振り。しかし一応大規模なイベントであったため、また自校の生徒が出るのであればということで大規模な応援団が組まれることになった。これ「勇者×魔王 称号者統一トーナメント」参加者のおれ達もチャンスじゃね?

 さておき。次に、ハヤミンラブ・アタック。(くだん)の幼馴染を呼び出して、

「俺が勇者の称号を得られたら……付き合ってほしい」

 と、ほざ……宣言した。それを受けて幼馴染――名前は棚嶋(たなしま) (ひびき)。ついでにここでハヤミンのフルネームも紹介しておこう。奴は速水 秀祐(しゅうすけ)という。話が逸れたな、その響嬢の返事は、というかその後の甘いVTRをどうぞ。

「……本当に、私でいいの?」

「響しか、考えられないんだ!」

「……私、秀くんには見向きもされてないと思ってた。秀くん、年が上がるにつれて女の子にモテていくから……」

「俺は……俺は響のことだけずっと……!」

 ここらでスズキタロウは「勇者認定試験要らんだろ? もう他所で続けてくださいリア充」と思ったそうだが、熱い青春の疾駆者は止まらない。

「私、うれしいわ。だけどまだ秀くんに釣り合うって自信が持てないの。だから秀くんが勇者認定試験で称号を得るのと同じように……私も一つ挑戦したいことがあるの。本当に秀くんが私のこと好きなら、その私の姿を見て、もっと惚れてほしいな」

 頬を染めて言う響嬢。

 はいはい、ご馳走様でしたぁ! はにかむ幼馴染はさぞかわいいでしょうなぁ……!

 え? リア充爆発しろ? そんな小さいこと言わんよ。魔王だよボクら? 魔王。分かる? フハハハハハ! 爆発如きで済むと思うなぁ……! リア充ビッグバン!!

「途中参加のメンバーでは唯一、中山津さんだけが普通に黙々と己を磨いていたよ。叶たち三人と放課後早くから特訓をしてたよな」

「あぁ、とても濃い日々だった……」

 いや、ほんとに。古典的表現技法で早送りだけどな!

 とにかく迎えた今日、竜宮城内にある闘技場で行われる勇者認定試験。そこで叶たちは「霧ケ峰高校チーム」としてエントリーしている。おれ達の高校でも探せば勇者認定を受けている奴はいるだろうが……おれ達の魔王認定と同じように知られていない場合もある。勇者は魔王よりも数が多いし有名どころ以外は本当にマイナーになったりするからな。学校側が応援団を了承したのも、わかりやすい学校の看板になると踏んだからだろう。

 叶たちは学校のヤツらと火星に訪れることになっている。それで今は受付にでも言ったのかと言うと……まだ、来てない。おれ達が早く来ただけである。何故かって? スズキタロウだからさ!

「……大規模なイベントになればなるほど忘れられるんだもんな」

 平たく言うと学校側の名簿に漏れたのさ……。一応参加できる人は極力参加形式の応援という学園行事なのだが、おれ達の名前は終ぞ思い出されなかった。

 つまりおれ達は自分たちだけで、個人的に、自宅から普通にコネクト・インである。

「ターゲット・オブ・スズキタロウはなんだったんだろうな……」

「言うな、キタちゃん。おれ達三人、生まれた時は違えども認識されるときは同じだ。いつか必ず……!」

「……自分から一緒に参加しに行けばいいじゃない」

 全く持って正論である。そんなことを言うのは物好きにも応援団ではなくおれ達とともに火星に来た沙知だ。

「そういう風に能動的な活動できるなら、今頃こんな扱いじゃねぇ!」

 スズキタロウ魂の叫び。おれ達は受動的な人間だからね……!

「……ヘタレ」

 沙知のぼそりと呟いた言葉はおれ達には届かない。何故かって? スズキタロウだからさ!

「ふっ。何を今更。そのヘタレさえも認識されないクオリティを舐めるな」

「……なんか、ゴメン」

「……そこで謝んなよ、空しくなんだろ……?」

 ぞろぞろと観戦目的プレイヤーや参加者達が集まってきて、どんどん存在感が薄くなるおれ達。それでも沙知は周りから視線を集めるが。おれの妹にしては中々目を引く容姿をしているのだこいつは。多分おれは存在感を母の中に置いてきたんだろう。

 生まれる前からスズキタロウ説が浮上したころ、見覚えのあるアバターのプレイヤーが六人こちらに近づいてきた。叶たちだ。

「おはよう、タロー君」

「キタちゃんもおはよう」

「ロー君、おっはよう!」

 ひょいっと抱き上げられるおれ達は既にプレイヤーではなくてオプションや装備品扱いで見られることが多いこの頃である。他のプレイヤーから「このオブジェクトどこで手に入るんですか」と聞かれたことは忘れない……。

 とにかく、そんなこんなで第十八回勇者認定試験、始まるよ!


 ●×●×●×●×


「生涯ソロプレイを覚悟している俺が、こんな大舞台に立つことになるとは……」

 入場した会場、私の後方で零れた呟きは氷室先輩のモノだ。どことなく発言する内容がタロー君たちと似通っている先輩だけど、タロー君と違って貪欲に行動する人だ。結果は伴わないけど。

 会場ではパーティーごとに整列して待機している。闘技場の真ん中で参加者は開会式を待っているのだ。リーダーの私を先頭に、弥生、夏海、紫穂先輩、速水君、氷室先輩の順である。勇者認定は悪く言えばプレイヤーにピンからキリが居るため称号を得たからって必ずしも人気者になるわけではないけれど、チャンスであることには間違いないので氷室先輩の高揚も頷ける。でも生涯ソロプレイとか、先輩も中々自虐しすぎではないだろうか?

「……見ててくれ、響」

 と、思ったけれどどう考えても恵まれすぎている速水君が目の前に居たら仕方ないのかも。

「……今まで地味に頑張ってきたことって無駄にはならないのね。学校では淑女とか言って腐ってたけど参加資格の案内が来たとき、ターゲット・オブ・スズキタロウであなた達が言った言葉が頭をよぎったの。もう少し頑張ってみようかなって。だからお礼を言うわ、ありがとう」

 紫穂先輩がしみじみとそう言ったのに対し、

「早いですよ、先輩? お礼は勇者認定を得てからです」

「そうそう。まだまだ通過点ってね!」

 弥生と夏海が言う。

「そうですよ、先輩。私たちがここに居るのは何も奇跡なんかじゃありません。それに……タロー君たちが魔王になれているって思うと、なんだか大層なものじゃなくてちょっとしたご褒美なんだと思えるんです」

「ご褒美?」

「充実した毎日を過ごすことが出来た自分の選択への、です。タロー君たち、なんだかんだ言って充実した生活だと思うんですよ。だからそんなタロー君に興味を持てて、良かったって。タロー君みたいに今を楽しんでいるご褒美です」

「カナらしいわね。私はキタちゃんに追い付きたい。これからどういう風にこの関係が変わっていくのかわからないけれど、対等でありたいわ。そうしたらもっと色々共有できることが増えると思うもの。時間、話題、そしてこの惑星開拓だって」

「私はロー君と一緒だとなんでも楽しいなぁ。このイベントだってロー君と交流を持ってからでしょ? これからどんなワクワクが待ってるのか、彼と一緒に見ていきたい」

 本人たちが前に居ると恥ずかしくて言えないことを三人で先輩に打ち明ける。後ろの男子二人に聞こえないように少しボリュームを落とした女子トーク。

「……そうね。これも私たちにとっては青春の一ページに過ぎないのかも。それなら……楽しまないとね!」

「わっ!?」

「あっ」

「おぉう?」

 紫穂先輩が私たち三人の肩を抱え込む。「俺も抱え込んでくれ!」と背後で聞こえたけどスルー。と、

『――お待たせしましたっ! 只今より第十八回勇者認定試験開会式を行います! 司会進行及び競技実況はわたくし〝天啓的アナウンス〟こと立灯 怜が担当させていただきます! まず、実行委員長からのあいさつ――はカットで!』

『何でだ!?』

『あ、委員長居たんですか? だって話長いですし。ほらご覧の皆様も展開が遅いぞって思うかもしれないじゃないですか。早く競技に行かないと』

『うんうん。ただでさえ一週間以上という長い期間が空いちゃってね……って、何をわけのわからんことを!』

『はい、委員長のあいさつでした』

 …………怜ちゃん、どこでもマイウェイを走るんだね。

『はいはい、さっさと進めちゃうよ!』

 それからも怜ちゃんのマイウェイ進行が功を奏し(?)ものの五分ほどで開会式のほとんどが消化されちゃった。隅の方で涙を流す実行委員の人たちが哀愁を誘う。

「どうでもいいけどアバターって泣けるんだねぇ」

「本当にどうでもいいわね」

「夏海も弥生もお気楽ね」

「どうでもいいって言えば、氷室。あんたの目的が一番どうでもいい」

「貴様! 中山津! 顔は悪くても実力があればモテるという会員たちの希望……もとい推測をどうでもいいと抜かすか!?」

「……推測って。なんか空しくないですか、先輩?」

「いいか速水。モテるって漢字で書くとどんな字か、教えてやろう」

「え? あれって漢字なんですか?」

「お前はモテる。何故か? お前はいろんなものを生まれ持ったからだ。容姿、身体能力、幼馴染、主人公属性……モテるとは〝持てる〟と書く。つまりモテない俺たちは〝持たざる者〟なのさ……」

「氷室、あんた……」

「なんだ、中山津? 見直したか?」

「上手いこと言ってるようでキモい」

「ぐはぁっ……!」

「先輩、気を確かに! 傷は浅いです!」

『はーい、そこぉ! 私の歌を……じゃなかった。話を聞け~! まぁとにかくあとはゲストの紹介だね。今回は魔王称号者から三名のゲストを呼びました』

 勇者認定試験なのに魔王を呼んじゃった!

『まず、総合解説の魔王A! そして用語解説の魔王B! 戦術解説の魔王Cの皆さんです! 本日はよろしくお願いします』

『どうもワタクシ、コメンテーター魔王Aことスズキタロウです』

『どうもワタクシ、コメンテーター魔王Bことスズキタロウです』

『どうもワタクシ、コメンテーター魔王Cことスズキタロウです』

 見覚えのある三人を目にした私たちはパーティー皆で思わず叫んじゃったよ、もう……。あとで注意しなきゃと思いながら。

『何やってんの!?』

 会場では「え? 魔王どこ?」「なんかオブジェが三つある」という声が多発しているのがまた彼ららしいと言えばらしいけど……。私たちの勇者認定試験はそんな風に幕を開けた。


次回からやっと始まる予定。

ご意見、誤字報告、感想・質問など受け付けています。

お気軽にください。


また、次回!

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