ACT:17 〇年? β組! 群体先生スズキタロウ!
そういえばこの作品のコンセプトを思い出しました。
「ホントに同じ作者が書いてんの?」です。
そんなはっちゃけぶりを意識してます。
そんな作品ですが今の目標は総合100ポイント!
お気に入り登録ありがとうございます。おかげでこの目標です。
人という字は、人と人が支え合っているのです。
贈る~言葉~。
鈴木です。ちょうど夜の八時……ではありません。昼休みに叶たちを含め色々指導することになったおれ達。やるからには厳しくいくぜ?
「おれは教官、鈴木 太郎!」
「オレが教官、鈴北 楼!」
「俺こそ教官、珠洲 喜太郎!」
『サー、イエッサー! スズキタロウ教官!』
ハヤミンとジェントルがノリ良く返事を返すが、そのような返事でこの「スパルタン・スズキタロウ」をうなずかせられると思うなよ?
『バカモン! 一纏めにするんじゃない!!』
『申し訳ありません、スズキタロウ!』
……いや、あのね? 一応三人とも別々の意志で行動してるから……。どうやら未だこいつらにはおれ達個人を認識することは荷が重いらしい。
このように大声を出しているのも実は空元気で、ここ火星にコネクト・インする際に一悶着があったのだ。
曰く、
「お前たちを個人認識することはノーベル賞級だと霧ケ峰高校内では言われている。群体生物の細胞一つ一つを顕微鏡で観察し発見するように、お前達個人を認識するにはそれこそ何か道具が……」
必要ないわ! 何だ、そのおれ達三人単細胞説は!? 言葉面もバカ扱いじゃんか! ノーベル賞とか大袈裟すぎるわ! ツッコみどころしかねぇよ!!
曰く、
「実は、キミ達の存在は……七不思議に数えられてるんだ」
何で!? いや、何で!?
「名前が覚えられない、個人が識別できない、一塊でしか覚えられず認識も出来ない……正に不可思議、霧ケ峰高校七不思議〝三位一体スズキタロウ〟……」
うっさいわ! 三位一体とか微妙にうまいこと言うな!! てかお前らの脳味噌が不可思議だよ! 覚える努力をしてくれよぅ……。
そんな知りたくもない校内の評価をまた一つ知ってしまい落ち込んでしまったのだが……それでも元気よく振る舞う理由がある。
視線が、眩しいんです……。
叶たちの、期待の眼差しが、ではない。
すぐ後ろにいる弓奈とレイラの、ニヤニヤ顔の二人が向ける視線である。
「……何でいるの、お前ら?」
「何よ。彼女たちを推薦したのは私たちなんだから、いてもいいでしょ?」
「あぁ、ごめんなさい。でも今から訓練すると聞いて私達もちょうど時間に空きがあったので協力しようかと思ったの」
旧知なだけあって落ち込んでる姿は見せたくない。え? 慰められるのが男ながらに恥ずかしいのかって? 違う。それをネタに止めを刺されることが怖いのだ……。
コイツラ、マジ、アクマ。
ともかく。今ここであまりバカ騒ぎすることはやめておこう。弓奈たち勇者やおれ達魔王といった称号持ちであっても常にアバター破損の危険が付きまとう、月の「月読樹海」に並ぶ難所――「オリンポス山」である。
テラフォーミング後、地表面が植物などのおかげで堆積物が増えたにもかかわらず、標高およそ二五〇〇〇キロメートルなどというバカげた太陽系最大の「火山」だ。
因みに。月読樹海はかつて「嵐の大洋」と言われた月最大の海であった場所をまるごと樹木が埋め尽くした、現在太陽系最大の樹海である。面積はおよそ二一〇万二〇〇〇平方キロメートル。何がなんやら。
この規模を聞いてみて誰もが分かるとおり「探索未完了」の区域である。そしてこの二つよりも規模は劣る物でも地球の自然に比べると遥かに莫大なのが各惑星の地形の特徴だ。プレイヤーが完全に惑星の探索を終えるのは予測すら立っていないのが現状。
さて話が逸れた。おれ達は訓練のためにそのオリンポス山の標高およそ八千メートル地点の高原「シエル高原」に来ている。現在の火星探索における最前線のひとつです。
「……タロー君、ここって私たち来ても大丈夫なの?」
うむ。少し眉尻を下げるその顔もまたよし!
「正直言おう……常時危険が付きまとう」
叶の顔が固まった。シャッターチャンスだ! レア顔、ゲットだぜーッ!! 悶素多ポ~ズ!! おれの心を悶えさせる素敵で多彩な表情は、このクエストカードのメモリに保護だ! ハイ、チ~ズ♪
「……その手を放してもらおうか、弓奈。シャッターが押せんだろう」
「……あんたこそ不躾に女の子の顔を撮ろうとしないの」
「……所詮、勇者か!! おれ達魔王とは相容れぬ!」
「……今ここで討伐してあげる、魔王覚悟!!」
魔王と勇者、神代から人が思い描いてきた相容れぬ者たちの激闘が今……!
そこでおれの脳天と弓奈の脳天に手刀が繰り出された。
『ぷぎゃっ』
「あぁ、ごめんなさい。でも今ここで〝ロールプレイごっこ〟をやってる場合じゃないでしょ? タロー達は叶さんたちに訓練場所に何故ここを選んだのか理由を言う」
何があってもおれ達が守りますとも! どんな苦境だって脱してみせる!
たとえ火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中、あの子のスカートの中……最後だけは突撃したい。
神「そりゃそうじゃ!」
じゃなくて。ちゃんと説明しよう。心なしか叶たち女子勢が冷ややかな目でこちらを見ながら、皆スカートじゃない人も含めて裾を抑えてる。おれの煩悩はそこまでわかりやすいだろうか?
キタちゃん、ローともどもクエストカードをしまう。
「どうしてここ、シエル高原を選んだかというと経験を積んでもらうためだ」
「経験って……勇者認定試験はプレイヤー同士の戦いでしょ?」
ボーダー子さんが言う。
「……あんた、今、かなり失礼なこと考えなかった?」
ソーリー。じゃあ普通に中山津さんで。質問に答えましょう。
「プレイヤー同士の戦いって言うけど、勇者認定試験のようなイベントだからペナルティなしで、本気で戦えるんだぞ?」
『あ』
ふふふ、気づいたか。アバター破損にペナルティがあることを忘れてはいないのだよ。サポートセンター主催のイベントであるからこそ、アバターの保証も完全に保証されているのだ。
だがいくら訓練といえどプレイヤー同士で戦闘訓練、その果てにアバターが破損すると三か月間のアバター使用停止命令が下される。
このペナルティについても少し説明しよう。実際は新たにアバターを準備する期間がそのくらい必要なのだ。個人でいろいろチューンしてるしね。じゃあ何故イベント時は大丈夫? そう言われると思うが、こういったイベントではかなり長いエントリー期間が設定されていて、その間にアバターの準備をハイピッチで進めるのだ。
サポートセンターは常時それだけの実力は持っているのだが、そう簡単に直してしまうと無謀な挑戦をするプレイヤーが増えてしまう。なので三か月の「謹慎期間」なのだ。また不用意に喧嘩をさせないための予防線にもなっている、というわけ。
「……つまり、特訓といえども安易にプレイヤー同士では行えないというわけね」
さすがに物わかりが良いですね、上代さん。
「じゃあどういった特訓するの? あ、キミ達は称号者だから大丈夫とか? よし! ロー君覚悟!!」
「アイ・リザイン」
ロー、即座の降伏。
「いやいや。俺達も普通にプレイヤーだからそんなリスクは負えないよ。実際シャッテン海窟で見せてもらったけれど弥生たちの実力は中々高いと思うし俺達のアバターでも長い間相手にしていたら壊れちゃうし」
キタちゃんが慌てて言うようにおれ達もアバターはとても大切なんですよ? わかりましたね南野さん。だからその両腕を降ろしてやって……
「……それにどこかの誰かさんのおかげで〝勇者×魔王 称号者統一トーナメント〟に参加せにゃならんからな。おれ達もアバターは壊せない」
こらそこの二人。目を逸らすんじゃない。大人になっても口笛が「ひゅ~ひゅ~」なのはどうなんだ?
しかし実際アバター破損のリスクなしに戦闘訓練が出来るなどと虫のいい話が無いのも事実。だったらせめていつもの惑星探索よりもランクの高い場所に行って戦闘技術と生存能力を養おうというのが「スパルタン・スズキタロウ」の考案した特訓なのだ!
「……そんなワケでここなの? でもここあまりの過酷さに〝称号者の墓場〟とまで言われてるオリンポス山だよ」
「う~ん、叶が言うように難所ではあるんだけどそれは中堅の勇者プレイヤーがここに訪れちゃうからなんだよね。勇者の称号認定方式のマイナス面というか、増えすぎちゃったんだよね、勇者」
「増えすぎた?」
「そう、だから同じ勇者称号者でも差が開いてるんだ。まぁ安全のためにトップクラスの二人もわざわざ来てるし大丈夫。とにかくここに生息する地球外生物はほとんど〝徘徊者〟クラスの要駆除指定だからバンバン戦闘しよう」
「なんか、不安……」
おれが居るから大丈夫ですよ、叶さん!
●×●×●×●×
「違うだろう、ジェントル! そこは短期詠唱だよ!」
そして現在、おれ達三人と勇者二人を除いた六人でパーティーを組んで戦闘の機微を見ながら指摘してるんだが……
「相手がある程度の知能を持つと途端に苦戦するんだよねぇ……」
そこ、頷いてないで少しは見てやれ。
叶たちのアバターについてはおれ達も知っている。
残りの三人速水は「剣士型」で補助線目視システムを備えた汎用型。その動きは彼にだけ見える剣の軌道を乗せるべき線に沿って的確。また自力で参加資格を掴んでいたあたり中々の実力だ。
中山津は「銃士型」。上代と同じく動作最適化システムを備えているがこちらは「目測」に関して最適化システムが実装されている割と少ないタイプだ。その超視力は狙い過たず敵を撃っていく。
ジェントルは「魔法使い型」。どこまでホ〇ワーツなんだ……。音声干渉システムにより周りの地形を利用したりするんだが。
ジェントルが長い設定言語を言い終えそのシステムにより足元の土が意志ある蛇用に持ちあがる。その首が向く先には勿論地球外生物。
「喰らうがいい! 〝アース・スネーク〟!」
疑似重力で操ってるのか。しかし先ほど指摘したように詠唱が長すぎる。速水と上代が相手を抑えていたのに抜け出してしまった。地面に頭から突っ込み砕ける蛇さん。
相手にしてるのはパイク・ホーンという名の山羊にも似た生物。その角は名前の通り鋭くアバターも軽く貫くのだろう。
「何やってんの!」
「お前こそちゃんと抑えておけよ!」
中々、前途多難です。
●×●×●×●×
パイク・ホーンを退けて一旦集合させる。
「反省点を言おうか」
目の前には気まずそうに正座の六人。そうだろう、そうだろう。倒したのは弓奈とレイラの二人だから。いや、おれ達も助けに入ったんですよ? ところがあの山羊ガチ無視。地球外生物にも認識されていないスズキタロウクオリティ……。
「確かに勇者認定試験とは違い相手は人じゃない。でも本番はパーティーを組んだ集団戦なんだぜ?」
『……え?』
え? じゃないよ! 皆知らなかったの!?
「そもそも探索は集団で行うもんだ。個人の実力が突出してるプレイヤーですらどこかの集団に所属してる。ここはゲームの世界じゃなくて、地球ではないけどちゃんとした惑星の現実なんだから。ゲームのソロプレイのような行動が続けられるほど生易しい環境でも、容易い世界でもない」
『……』
「だから〝未知の世界の冒険〟と謳うサポートセンターが未だ生身の人間に開拓をさせないんだ。アバターという技術の粋を用いて安全を確保していく。人はそれほど脆弱なんだから」
溜息をついて、頭を掻き毟「プルン」スライムでした、おれ。
「集団で助け合いながら一歩一歩前進していくのが開拓を主にするプレイヤーの基本。だから開拓を行うプレイヤーの称号である勇者を評価するのも集団戦。
戦闘時のチームワーク、リーダーの判断、突出した行動を控える自制心など必要な物はいくらでもある。そもそも皆は他のアバターの特徴については知ってた?」
ローの言葉に皆と一緒にふるふると力なく首振る叶さんはマジシャッターチャンス。でもここは心を鬼にして指導するのだよ。おれ達も皆には頑張ってほしいから。キタちゃんに目配せして解説をお願いする。
「弥生と中山津のアバターは特化型。これはね特化したばかりに他の部分は性能が低い。弥生は攻撃に特化したばかりにアバターの耐久度、周囲の探知能力は六人の中では最低だろうし、中山津は探知・補足に優れていても遠距離を想定したため移動速度は遅い。
南野と氷室、速水は汎用型だ。色々な状況に対応できるのは長所だけど、ここぞという決定力に欠けるのは短所でもある。
最後に羽場下は万能型。ただ万能型とは言うけれどそれはプレイヤー自身の能力が高いからであってアバター自体には専用のシステムは実装されていない。まぁ基本性能は六人の中で頭一つ出てるだろうけど……これだけの違いがあるんだ。当然皆の役割も違ってくる」
皆が膝の上で拳を握りしめている。悔しいんだろうな……でもここは言わなければならないところだ。
「さっきの戦闘では上代と速水が敵を抑えて氷室が攻撃、中山津が補助、叶が周囲の警戒して南野はその傍に控えてるって状態。アバターの特徴を踏まえたうえで最も効果的に動き回るためにはどうするべきだった?」
ちらりと目をやれば上代がおずおずと口を開く。
「……相手が単独の場合、抑えるのはどんな状況にも対応できる汎用型の三人。近距離に夏海と速水君、距離を置いてサポートに氷室先輩。周りの索敵は中山津先輩で状況によっては遠距離から相手の逃走などを阻止する妨害行動も請け負う。万能型を使う叶は私たちの中で最も判断力があるだろうから全体の指揮。一撃の威力が高い私は止め要員、または危地を脱するための切り札」
よくできました。それだけ理解できれば次はもっといい戦闘ができるだろう。
「それだけわかれば大丈夫。勇者の称号ってのは〝失敗を恐れない勇気〟をこそ湛えられた称号なんだから。これで一つ仲間の特徴という〝未知〟が開拓されたわけだ」
「話が長い! あんたらいつも三人でしか行動してないくせに集団行動について語ってもありがたみが無いわぁ」
「あぁ、ごめんんさい。そんなに縮こまらなくてもいいのよ。大体タロー達は火星生物にも相手にされないんだからまともに相手にしなくても誰も気にしないから」
「……お前ら真面目な話を茶化すんじゃないよ。いいこと言ったよね、おれ? いま結構いいこと言わなかった?」
以上、群体先生スズキタロウのお言葉でした。
●×●×●×●×
その後は順調に戦闘をこなし今日のところは解散してそれぞれが帰宅の途に着いた。夜の八時を回った今は家にいる。風呂から上がったおれは、放課後に火星に行っていたので今日はもうコネクト・インする気もなく暇を持て余していた。
「お兄ちゃん〝勇者×魔王 称号者統一トーナメント〟に出るんだって?」
「ん? お前誰から聞いたんだ沙知?」
「サポートセンターから出場者の連絡がエントリーごとに来るの。昨日お兄ちゃんたちエントリーしたでしょ?」
弓奈がな!
「お兄ちゃんがあの〝月の射撃神話〟や〝龍妃〟の知り合いの魔王だからって手加減はしないからね!」
「はいはい……はい? お前今なんて言った?」
「手加減しないよって。私これでも勇者として結構有望視されてるんだよ」
なん、だと……?
「お前、勇者なの?」
「そうだよ! お兄ちゃんの微妙な評価も〝私の兄〟っていうタグで覆してあげる」
勝気そうにふふんという沙知は兄想いなのか、馬鹿にしてるのか。あとタグって言うなタグって。
そんなこんなで兄妹水入らずの会話をしていた時におれのクエストカードがメールの受信を知らせる。
「……? 珍しいね、お兄ちゃんのクエストカードが音出すの」
妹よ。兄にメールは一切来ないというわけではない。三か月に一回は「人」からくる。それ以外は……黙秘権を行使する。
とりあえずメールを見ると……ゲッ、弓奈か。あの女のメールは碌な内容じゃない場合が多いからなぁ。それでも来たモンは仕方ない。おれは内容を確かめる。
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From:星繰 弓奈
To:鈴木 太郎
To:鈴北 楼
To:珠洲 喜太郎
Subject:今のうちに謝っとく
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うちの娘が、あなた達の居場所を突き止めました。ご愁傷さまです。
夫と私が気付いた時には転校手続きまで終えちゃってました、テヘ❤
明日から娘があなた達のもとに襲来すると思うので連絡です。
以上第三回〝ツンデレーヴァテイン注意報〟でした。
追記:〝龍皇女〟も赴くというレイラからの死刑宣告にも等しいお告げも受け賜りました
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………………は?
他の作品ともども感想などお待ちしています。
暇があれば「スズキ」以外も読んでいただけると嬉しいです。
そのうえでご意見などもいただけると大変嬉しいです。
ではまた次回! 楽しんでいただけるように頑張ります!




