14 探訪
土曜も日曜も、ずっと美月とあの男の事を考えていて、全く勉強は進まなかった。
あの時美月は間違いなく"ご馳走様です"と言った。
俺が休日に飯にと誘ったのは、即答で"行かないよ"だった癖に……
いや、当たり前の事なんだけど……
「おい、陽平。お前またなんかあったんだろ?」
「……お前はいつから相談屋を始めたんだ?」
「はっ、別にんなもん始めてねぇよ。ただ、お前が相談出来るのなんて、俺ぐらいなもんだろ?」
「……」
「あとはあれだな。仕返し」
「仕返し?」
「お前には散々な目に遭わされたからな。お前をからかってやってんだよ」
「このやろ……」
月曜日。
美月に金曜の夜の事を聞けずに悶々としていた俺に、岡島が声をかけてきた。
にやにやと明らかにバカにしている様子ではあるが、不思議と殴りたいとは思わない。
「……お前さ、美月の家族とか、交友関係とかについてなんか知ってるか?」
「あ? それはお前の方が詳しいだろ? ここ最近はずっと一緒に帰ってただろ?」
「一緒に帰ってんじゃねぇよ。俺が勝手に美月の隣を歩いていただけだ」
「拗ねてんな?」
拗ねたくもなる。
あんなもんを見せられたんだ。
いや、正確にいえば相手の男を見てはいないんだが……
あの時の美月の様子からして、相手は男、それも美月よりは相応に歳上の男だ。
しかも夜ご飯を奢ってもらっていたのも間違いない。
美月の反応からして、頼りにしている相手のような雰囲気が……
「花園に親しい男でもいたんか?」
「親しい男ってか、なんか、美月に飯奢ってる歳上の男」
「家族じゃなくてか?」
「家族って感じじゃなかったな。親戚とかかも知れねぇけど……」
あの美月に限って、援交やパパ活な訳はない。
歳上彼氏ってのは考えたくない。
でも親戚って感じでもなかったんだよな……親戚との距離感なんて、各家庭で違うもんだろうけど。
「花園に勉強とか、教えてもらったらどうだ?」
「はぁ?」
「あいつは困ってる奴なら、自分に暴力を振るった奴でも助ける奴だぞ? 勉強進まなくて困ってるって言えば、教えてくれるだろ?」
「そりゃ教えてくれるだろうけど、バカって思われるのは……いや、美月はそんな事思わねぇだろうけど」
「花園の家で勉強会。花園の家に入れるし、趣味とか交友関係も少しは分かるだろ」
「……お前、バカなのに天才だな!」
そうか、その手があったのか。
美月は困っている人を見捨てたりしない、最高のヒーローだ。
その善意に漬け込む形になるのは申し訳ないと思うが、美月とこれまで以上に仲良くなれるかもしれねぇ。
家庭環境も知れるし、美月の好みが分かる可能性もある。
となれば早速……
「なぁ、美月。ちょっと勉強教えてほしいんだけど?」
「勉強? うん、いいよ。放課後の教室でいいかな?」
「あ、いや……お前の家とかで……」
「うん、いいよ」
「……いいのか」
あっさりOK……
この間俺の家にも平気で来たとはいえ、あん時は俺は風邪で、病人だった。
今度は別になんでもないのに、こんな当たり前に……
俺が男だという認識がないのか……?
全く意識されてないだけなのか……?
何にせよ、許可はもらったんだ。
これで美月の家に行ける。
美月の部屋に入れる。
美月の事が……流石にちょっと、緊張するんだけど。
放課後になり、また当然のように美月と一緒に帰る。
俺に勉強を教えるという用事があるからなのか、今日も美月は駅前や公園へは寄ろうとしなかった。
今日の授業の内容とかを適当に話しながら歩いて、遂にいつも美月と別れる分岐の道を、別れる事なく美月についていく。
美月は何も言わない。
来るなと言わないんだから、本当に行ってもいいってことなんだろうけど……
「なぁ、家に家族はいるのか?」
「……」
「あ、別に変な意味で聞いたんじゃなくてだな、その、俺が急に来ることになっても大丈夫なのかと……」
「大丈夫だよ。私、1人暮らしだから」
「そうなのか。一緒だな」
「うん」
一緒だなに対するうん……
こんな些細な事でも、美月と俺に共通点があったという事実を嬉しく思う。
にしても1人暮らしか。
まぁ、俺の家に平気で泊まっていた事から考えて、1人暮らしの可能性は高いと思っていたけど。
「えっと、ここか?」
「うん」
随分なボロアパートだな?
防犯とか、大丈夫か?
「どうぞ」
「お、お邪魔します……」
案内してもらった美月の部屋は、本当にシンプルな空間だった。
ワンルームの狭い空間。
置いてあるものは、ベッドとテーブルと小さな棚。
あとはハンガーラックに少量の衣類が並んでいるだけで……
趣味の物と思われる物は1つもない、どこか寂しさを感じるような空間だった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




