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異世界からの来訪者

約1年ぶりの更新です。

最近ずっとアーク・ザ・ストーリーを描いていたので久々過ぎて上手く描けているか微妙ですね(笑)

アーク・ザ・ストーリーとイクタベーレでは描き方が違うので。

 

 ………………ピキっ!


 その日、空間が歪んだ。

 転移魔法(ソウテン)での歪みではない。転移魔法(ソウテン)での歪みは精霊の蠢きによるもので、魔導に明るくない者には感じ取れない。

 そう見える(・・・)ものではなく感じ取るものなのだ。

 また転移魔法(ソウテン)は五芒星の魔法陣が先に現れる。しかし、それも見えなく突如空間が歪んだのだ。

 場所は聖王国ユグドラシルの西のあたりである。

 そしてやがて空間が割れ、黒い靄のようなものがかかる。そこから1人の青年が現れた。年は20歳行くか行かないかくらいだ。


「ここが星々(スターライト)世界ね」


 青年が呟いた……。






 ◆◇◆◇◆◇◆


 第二次暗黒魔王戦争が終局し半年が経つ……。

 ここ聖王国ユグドラシルの執務室では、やつれた顔をしたロッカ女王が執務に追われていた。

 彼女は終戦後女王に戴冠し、ユグドラシル大陸の事を取り仕切っている。

 ただ過去に聖王国ユグドラシルは、暗黒魔王戦争の首謀者である暗黒魔王ガディウスを造るという暴挙に出た事を大陸中に公表してしまい休む暇がなくなってしまったのだ。

 聖王国ユグドラシルは交易面、政治面で中心に位置し、その権威が失われると大陸中が数十年の困窮を迎える事になる。

 それ故にそうならないように必死に取り仕切っているのだ。

 まだ10代中盤の身としては酷使し過ぎている。


 コンコン……。


 その執務室にノックの音が鳴り響く。


「はい」

「失礼します」


 そう言って入ってきたのは聖王国ユグドラシルに仕える弓騎士ジェリドだ。大陸一の弓騎士として名が知れ渡っている。


「もう来られたのですか?」

「はい。お通ししますか?」

「お願い致します」

「ロッカ様……」

「何でしょうか?」

「……いえ、失礼しました」


 ジェリドは苦言を言おうとしたが引っ込め、執務室から出て行った。

 本当は少しお休みになられてくださいと言いたかったのだ。しかし、それを言ったところでロッカは休もうとしない。

 それが良くわかっているので引っ込めた。


 コンコン……。


 しばらくし再びノックが響いた。


「はい」

「お連れしました」


 ジェリドがそう言って連れて来たのはタルミッタ王国の王女であるディーネとその側近であるサラだ。サラは終戦後ディーネに仕える事になった。


「ロッカ様お久しぶりです」


 優雅にスカートの裾を掴みお辞儀をした。

 尚、サラとジェリドはディーネの少し後ろに控えている。


「ええ。ディーネもお久しぶりです」

「ロッカ様……少し、いやかなりお疲れですね」

「誰のせいだと思っているのですか?」


 ロッカがディーネを睨む。


「さて、誰のせいでしょうね~」


 そう言って目線を逸らす。それを見て後ろに控えていたサラとジェリドは苦笑を溢す。


「……貴女のせいでしょう?」


 そう過去の聖王国ユグドラシルの失態を公表するべきと進言……いや半ば脅したのはディーネなのだ。


「申し訳ございません」


 そう言って再びスカートの裾を掴みお辞儀をするディーネ。


「まぁ貴女もアルス様と早く婚姻したいのでしょうけど」

「いえ、これは(わたくし)が選んだ事ですので」


 公表した事による大陸の混乱、その煽りは当然聖王国ユグドラシル王族の分家にあたるタルミッタ王国にも及んでいる。

 いや、それどころかガディウスを造り隠しているのはタルミッタなので国民の反感は大きい。

 そんな中で、婚約者でありガディウスを討ったイクタベーレの英雄王アルスエードとの婚姻をするわけには行かないと先延ばしにしているのだ。


「いつくらいになりそうなのです?」

「まだ数年はかかります」


 数年は婚姻するわけには行かないとディーネは言う。


「いくら星々の解放者スターライト・リベレイターでも、ディーネを解放できないようですね」


 ロッカがフっと笑い、珍しく皮肉を溢す。

 ロッカ自身疲れており、皮肉の1つでも言わないとやってられないのだ。

 ちなみに星々の解放者スターライト・リベレイターというのは、ガディウスを討ったアルスを星々が遣わせた邪悪の帳を引き裂く解放者……星々の解放者スターライト・リベレイターと民衆が言い出したのだ。


「まぁロッカ様ったら」


 ディーネは苦笑いをしてしまう。


「さて、では本日から数日サラをお借りしますね」

「わかりました。じゃあサラ、数日後に迎えに来るわ」


 ロッカに答えると後ろを振り返りサラにそう言った。


「わかった。ディーネも無理するなよ」

「大丈夫よ」


 とは言うものの実はディーネもロッカ程はないにしろ疲れ切っていた。

 ディーネ本人が、過去の失態を口外するなら全力でロッカの補佐をすると言ったのだ。しかし、結局大陸の混乱の煽りがタルミッタにも来ており、なかなか難しい状況ではあったが……。

 それでもディーネは、やれる範囲はやっていた。それこそ愛するアルスと結ばれるのを先延ばしにする程に。

 実際ここ半年、アルスと会う回数よりロッカと会う回数のが多い。具体的に言うとこの半年、アルスとは一度しか会っておらず、ロッカとは月に最低一回、多い月では三回は会っている。


「ジェリド、サラに手を出したら承知しないからね」


 相変わらずディーネは眉を吊り上げツンツンし出す。ロッカと話していた時は王女の顔だったのに。実に残念である。


「出しませんよ」

「……君が欲しい」


 キリっ!

 それだけ言い残すと退室して行った。ジェリドは顔を引き攣らせる。

 過去にサラの力を欲して言った言葉だったのだが、度々からかわれるのだ。


「では、参りましょうか。今回はサラが手に入りますよ?」


 サラの力が(・・・)手に入るとロッカが言い出す。正確には借りるのだが。


「ロッカ様も止めてください」

「ふふふ……」


 ロッカは懐から水色の扇子を取り出し口元に当て、優雅に笑う。


「では、(わたくし)が言います」


 そう言うとサラに扇子の先を向け……。


「君が欲しい」

「ええ。ロッカになら喜んで。横のにはあげないが」

「横のって言うな!」

「ではサラと……えっと横の(・・)参りますよ」

「ロッカ様も簡便してください」


 ジェリドは苦笑を溢し先に執務室から出ると、ロッカが出やすいように扉を抑える。



挿絵(By みてみん)



 ロッカはジェリドとサラ。他にユグドラシル兵を数人連れてユグドラシル領にあるヘルヘイムという村に来ていた。

 今回ディーネが、サラを連れて来たのはユグドラシル領にある膿を潰す為だ。この村は旅人を襲うという所業を行っている。

 サラとジェリド、そして今は亡き2人と旅をしていたヤザンが被害に合った。それ故にサラも来たというわけだ。


「なっ!?」


 サラが驚き声をあげる。他の面々も驚きのあまり閉口してしまう。

 ヘルヘイムの村に入ると死体の山があったのだ。そしてその死体の山の上に一人の青年が座っていた。


「……お主がやったのか?」


 驚きによる硬直が真っ先に解けたサラが問い掛ける。


「ん? そうだが? ……よっと」


 その青年が死体の山から飛び降りる。


「で、あんたは?」

「何故これだけの事をして平然としていられる?」

「これだけの事?」


 青年が何の事かわからないと言った感じで首を傾げる。


「一体何人殺したのだ?」

「殺した? 何の事?」


 先程これをやったと言いつつ何の事かわからないという態度だ。それがサラの頭に来た。


「しらばっくれなっ!」


 めきっ!


 サラの地面が少し抉れる。彼女が激昂した際に闘気が溢れたのだ。


「おー良い気を放つねー。君が欲しく(・・・・・)なるなねぇ」

「もうそれは良いっ!」


 サラが背中に携えている槍を抜き一気に間合いを詰め突き出す。


「もうそれは良いって?」


 首を傾げつつ青年が楽々躱す。青年が首を傾げるのも無理はない。そのネタは散々ここに来る前にやった事なのだから。それを青年が知る由もない。


『レイガ』


 氷系中級魔法(レイガ)を繰り出す。


「ほー魔法もか。なら……『パラーマ』」


 青年の掌から三角錐の炎が発せられる。それが氷系中級魔法(レイガ)を包み込む。


 ジュ~~~。


 お互いにぶつかり消滅し合う。


「な、何だ今のは?」

「何だと言われても、そっちと同じく魔法だけど?」


 飄々と答える青年。

 その数秒の攻防を見ていたロッカ、ジェリド、他数名の兵達もポカーンと眺めていた。


「こ、これだけの者が、まだこの大陸にいたのですね」


 やがてロッカがポツリ呟く。


「サンダースピアー」


 その間も攻防が続く。サラがサンダーランスによる電撃を飛ばす。


「特殊な槍のような気はしてたけど、電撃を飛ばすとはな~」


 感心しつつまたしても軽々と躱す。


「はっ!」


 それを予測してたと言わんばかりに躱した先に槍を突き出す。


「なっ!? 消えた?」


 しかし、槍の矛先には誰もいない。


「消えてないよ。こっちだよ」

「っ!?」


 いつのまにか後ろに回り込まれており背中を軽く押された。

 サラは直ぐ様、前に飛び振り返る。


「何故、今何もしなかった? 後ろに回り込んだなら攻撃できただろ?」

「理由もないし。君可愛いからね。俺は可愛い女の子を嬲る趣味はない」


 飄々と答え、しかもサラが何もしないと動きもしない。それが余計にサラの癇に障る。


「ならっ! サンダースピアーっ!」


 半身後ろを向きサンダースピアーを放ち、それと同時に地を蹴り跳ねる。それによりサラが吹き飛ぶ。


「面白い使い方するね」


 青年は、自分の方へ突っ込んで来てるというのに動きもせず平然とそう言う。


「電光一文字突きーっ!!」

「おっとっ!」

「なっ!?」


 青年は槍の矛先を右手で掴む。


「何故平然と掴める?」

「平然とじゃねぇよ。手が火傷しちまったよ……よっと」


 そう答えつつ槍を放す。


「そういう事ではないっ!」


 サラは再び突く……が、やはり平然と躱される。


「サラが押されるとは……それにしても何故援護しないのですか?」


 ロッカがジェリドに話を振る。


「相手にその気がないからです。それに少し気になる事もありますので」

「……そうですか」


 ロッカはそれ以上何も言わず押し黙る。

 ジェリドは洞察力に優れており、その場その場の状況を正確に把握できる。そのジェリドが気になると言うのだ。何かあるのだろうとロッカは感じた。


『星々よ、我が呼び掛けに応えよ!』


 シュシュシュシュシュ……。


 素早い突きの連打を繰り出しつつ魔法の詠唱を開始した。


「高速攻撃しつつ詠唱か。やるな」


 そう言うが余裕綽々と言った面持ちだ。


『闇をも凍り付かせる鳥魔よ! 我が力とならん!』


 バックステップで距離を取る。


『ダイヤモンドダストーっ!!』


 サラの掌から人が三人は乗れそうな大きな氷の鳥が飛び出した。


「いやダイヤモンドダストじゃないよね? それ」


 ツッコミつつ右手を前に突き出す。

 青年がそう言うのも当然だ。ダイヤモンドダストとは寒冷地法において空気中の水蒸気が結晶化しキラキラと輝く様子が、まるでダイヤモンドのようであるという様の事を言う。


 ピキピキ……。


 青年の右腕が凍り付く……が、そこで止まる。

 本来なら全身が凍り付く程の上級魔法だというのに……。


「どこまでもでたらめな奴めっ!」


 サラが吐き捨てる。


「デタラメって言われてもねぇ……『パラミ』」


 左手から炎系初級魔法と思しきものが発せられ、右腕の氷を溶かす。


「はい。そこまで」

「何故止める?」


 そこでジェリドの制止の言葉が入る。


「なぁあんた、あれ死んでないだろ?」


 ジェリドは青年に向かって言い死体の山を指差す。


「うん、まぁ」

「あんた、もしかしてここで宿を取り襲われた?」

「イエス!」

「いえす?」

「はいの意。誰も殺していないよ」

「という事です。ロッカ様」

「どうしてわかったのですか?」


 死体の山……正確には死んでないようだが、全く動かい。それ故、死体にしか見えない。


「最初の彼の言動です。あれをやったのは認めましたが、殺したのかという問いには何の事? と答えました。そして微かにですが胸のあたりが動いています。呼吸を行っている証拠でございます」

「そうですか。それで貴方?」

「何? あんたは一番身分が高そうだな? お貴族か何か?」

「ロッカ様を知らぬのか?」

「女王に向かってなんたる態度」

「立場を弁えろ!」


 兵達がどよめき出す。


「は~。女王? あのさ俺は、この国の人間でもなければその人に仕えてるわけでもない。何を弁えるってんだよ?」


 青年が溜息を溢し呆れたように言う。


「だとしても女王に対する態度ではない」

「あ? 何殺る? あそこの可愛い女の子なら嬲る気はないが、男なら話は別だぞコラ!」


 サラを指差しそう言うと、いきなり殺気が増す。それにより兵達が怯む。


「止めなさい。彼の言う通り(わたくし)に仕えていないのですから、多少は目溢ししなさい」

「はっ!」

「それにしても貴方……」

「うわっ! なんか凄い蔑みの目で見られている」


 ロッカは青年に蔑視の眼差しを向けて来た。


「……お主のような軽薄な男を嫌うのだ」


 ボソっとサラが呟く。


「え? そうなの? って言われてもな~」

「まぁ良いでしょう。それで貴方は何者でございますか?」

「俺は武。武=渡内。えーっと、ロッカちゃんかな?」


 これが異世界からの来訪者であるタケルとロッカ達の邂逅だった……。

タケルが何なのかはアーク・ザ・ストーリーの方で。

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