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戦慄のイクタベーレ ~敗退せし者達の母国奪還の軌跡~  作者: ユウキ
最終章 戦慄のイクタベーレ
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エピソード アルスエード①

 ああ…もうわかっている。これが本物の星剣ベーレシオン(理想と解放の剣)だって事は……。

 しかし鉄の剣のままだ。

 それは私が弱いから……いつも誰か力を貸して貰っている。

 最初は、見間違えでただの鉄の剣かもしれないと思った事もあった。

 だが、微かな違和感を感じたのはあの時だ……。



「貴様が殺しに来るとはな、あの気弱な小僧が……」


 酷く脅えた様子のジキルス国王と対峙した時。


「私は貴方と話し合う為に此処まで来たのです」

「信用できるか!ガイルバっハの小伜め!」

「……陛下」

「騙せれぬぞ、貴様はわしを殺す気なのだ。二年前イクタベーレを背後から襲撃を命じたのは、このわしなのだ。貴様の故国を暗黒魔王軍に売ったわしを復讐しに来たのだ!違うかっ!?」

「ジキルス陛下……確かに私はこの二年間ずっと貴方に対する復讐心を持ち続けた。父を…母を…姉を…そして国の者達を思い出す度に貴方を憎んだ。それは事実だっ!!」


 この時は、ジキルス国王に憎しみを抱いた。今すぐにも殺してやりたいとそう思った。

 それでもそれを必死に抑えた


「だけど……貴方を殺したところで何も解決しない……そんなに簡単じゃないんだっ!!」


 目の前の男を殺したい。でも、それではバルマーラとなんら変わらない。もっと別の道がある筈だと思った。


 ドンっ!!


 この剣を腰帯から外して机の上に叩きつけた。

 この時だ。微かな脈動を剣から感じたのは。最初は気のせいだと思う程、小さな脈動。



 そして、その剣が脈動してるのをはっきり感じたのはあの時だ……。


「君に確り確認したい事がある。今まで言いそびれたが、これからも君と一緒にいるか否か重要な事だ」

「……はい」


 ディーネと過去のユグドラシルの事で話した時……正直聞きたくない。でも聞かないといけないと思った。


「ユグドラシルの戦いで……リュウザンを殺した草人が言っていたんだ。正直信じ難い、だが、嘘とも思えない……本当なのか? ディーネ…ユグドラシルがガディウスを生み出し、私の祖先イクタを利用したというのは?」

「ははは……」


 ディーネが、から笑いを浮かべ虚空を眺める。


「な~んだ…アルス様は知っていたのか……私の口からお話する筈だったんだけどなぁ」

「じゃあ……」


 その先は聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない……でも、聞かないといけない


「事実です」

「っ!?」


 この時、剣から伝わる脈動がピタっと止まった。私が信じていたのが揺らいだからだ。

 そして、ロッカ様もこの場に来られて……。


「ロッカ様、率直にお伺いします。ロッカ様は私を利用しておられますか?」


 そう問うた時だ


「はい…利用しております」


 目の前が真っ暗になった。


「そ、それは聖王国ユグドラシルの失態を隠す為にですか?」

「失態? ……聖王国ユグドラシルが陥ちたのは周知の事実。隠しようがないと思いますが?」


 でも、誤解だと知った。


「アルス様、そういう意味での利用はしておりません」


 あの時、ロッカ様はそう言った。


「そういう意味?」

「はい…こう言ってしまうとディーネには申し訳ございませんが……」


 其処で言葉を切り。ロッカ様は言葉を選ぶようにしばしの黙考が続く。


「ロッカ様、何でしょうか?」


 痺れを切らしディーネが問い掛ける。


「そのまま伝えた方が良いでしょうか……我がユグドラシルとディーネのタルミッタでは役目が違います」

「役目ですか?」


 ロッカ様は悩んだ挙句、そのまま言う事にしたようだ。それに対し私がが訊き返した。


「我がユグドラシルは大陸を導く事、タルミッタはかつてのユグドラシルの失態を隠す事がそれぞれ役目でございます」

「ロッカ様、その物言いですと……」

「はい…ですからディーネには申し訳ないと申したのです。(わたくし)は、その件に重きを置いておりません」


 ディーネの言葉を遮り、ロッカ様がきっぱりそう言った。


「ですが、かつてのユグドラシルが罪を犯したのは事実。ですから一刻も早く大陸解放をする事が、(わたくし)なりの責任を果たし方と考えております」

「ロッカ様のお考えはわかりました」


 ロッカ様のお考えが強く伝わって来た。


「では、ロッカ様は先程、私を利用してると仰いましたが、どう言った意味ですか?」


 先程のロッカ様の言葉に引っ掛かりを感じたので、私はそれを問うてみた。


「大陸解放です。ただ一つ勘違いされないようにお伝え致しますが、アルス様には選択の余地を与えております」

「選択の余地ですか?」

「ルンゲンの腕輪でございます」


 私の左腕にはロッカ様から託されたルンゲンの腕輪が嵌めらている。


「それを(わたくし)にお返しするという選択です」


 ロッカ様がそう続ける。


「これを……」

「ルンゲンの腕輪を持つ者は聖王国ユグドラシルの名の元に、その行動全てが聖王国ユグドラシルに承認されたものになります。それがあれば、例えば(わたくし)を殺め、聖王国ユグドラシルの王位を簒奪する事もまた聖王国ユグドラシルの承認を受けた事になります」

「「っ!?」」


 勿論私は、そんな事をするつもりはないが、其処まで考えていた事に驚いた。


「何故其処まで?」

「利用するからには、(わたくし)もそれなりの覚悟を持っているという事ですわ」

「ロッカ様、それは利用するとは言いませんよ」


 これでは利用する側は私ではないか……。


「そうですね。しかし先程のお二人を見ていたら、そう言うべきと思いました。それがまさか、かつてのユグドラシルの失態のお話だったとは……お恥ずかしいですわ。ふふふ……」


 ロッカ様が扇子を口元に当て優雅に笑う。


「では、ロッカ様…どうして王位を簒奪される危険を冒してまで私にこれを託されたのですか?」

「ガディウスが力を付けるのは混乱と混沌、逆に打ちのめすのは人々が互いを信じ合う事だと(わたくし)は考えております。ライアーラ城で初めてアルス様の戦いを見て、その可能性を垣間見ました」

「そうだったのですか」

「ですが、それは茨の道……アルス様の抱く理想を突き進むならば、きっとまたお辛い目に合うでしょう。心折れたならば、その時はどうぞルンゲンの腕輪をお返しください」

「いえ、是非最後まで私は利用してください」


 ロッカ様の覚悟を知り、先程のような疑念などは私の中からなくなり、おどけて言った。

 そう…やはり私が信じた道を最後まで、貫くべきなんだ。


「あらあら、ふふふ……では、お言葉に甘えさせて頂きますわ」


 この時だ。


 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……。


 剣から感じる脈動をはっきり感じた……。




 しかし、だと言うのにまた脈動が微かなものになってしまう。


「どういうつもりだソラ? てめぇの部隊は裏手口から進入し、挟み撃ちにする作戦だった筈だっ!!」


 イスカが怒鳴り散らす。

 せっかくイクタベーレに帰って来たのにソラの様子がおかしかった。

 それでも期待出来ない策を立ててソラに期待した。それは願いに近いものだったのかもしれない。

 ソラはイクタベーレ陥落時からずっと一緒に戦ってきた仲間なのだから……。


「なのに何故動かなかったっ!?」


 尚もイスカの糾弾の声が響く。


「……この程度の砦なら、そこまでしなくとも楽に陥せると思った」


 何かに取り付かれかのような虚ろいだ眼で答えるソラ。決してイスカと視線を合わせない。


「確かにセイラがほとんどカタを付けた……だがよ、ふざけんなよ! 理由になるかよっ! そんな事……おかしいぞ近頃のお前…リュウザンの事があってから……!」


 ビクッ! 


 ソラは一瞬だけ反応したが直ぐに何かに取り付かれたような虚ろな瞳に戻ってしまう……。


「もう良いじゃないですかイスカさん」


 背後からリビティナがイスカの肩に手を置いた。


「しかしっ!」


 尚も止まらないイスカ。


「もう良いっ!!」


 珍しくリビティナが怒鳴った。

 次にじっとソラを見詰める。


「ソラさん、今回の事はもう良いです。ですがこれっきりでお願い致します……今はアルス様にとって大事な時だと思います……それはあの時から一緒にいる貴方なら良くわかっているのではないですか? イクタベーレが陥ちた時、自分もいたので良くわかります」


 ソラは無言でそっぽを向いたままだ。

 そうあの時から一緒にいる。だから疑いたくない。


「イスカさん! 行きましょう」


 リビティナは踵を返す。


「ちっ! クソがっ!!」


 最後までイスカが悪態をついていたな。

 この時、ホリンの言葉を思い出した。


【この部隊はだいぶ大きくなった。それは諸刃の剣なんだ。一歩間違えれば、一気に崩壊しかねない……そして、クラヴィスが眼を付けてるのも、たぶん其処だ。だからアイツはこの部隊に入り込んで、その仕事を終えて去って行ったと思った方が良い。何処かに災いをもたらす人物……言わば災いの火種を仕込み終えている可能性が高いと思う】


 勿論ソラは信じた。そんな事無いと自分に言い聞かせた。災いの火種である筈が無い。

 それでもほんの僅かに疑ってしまった。その瞬間、剣からの脈動が微かなものになってしまう……。

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