又弱者
2 又弱者
数多の視界が行き来する往来に、一日のうち何度捕えられたか、そんな覚束無い泥濘のような認識も、いつからか鮮明この上ない。もしかすると、それを可能にしたのは、自己防衛からくる最後の自尊心であったかもしれない。なにしろ客が入らない。客がいなければする事がない。しかるに、本屋と家電量販店との境で、客を待ち焦がれているうち、不毛な計量が始まったのである。そうして往来に耐えた。なぜなら全く意識せずに通り過ぎるのではない。大抵が訝しげな、憐憫の眼差しでちらと見やって、すぐさま視線を前にするのであった。だからこの醜い老婆をみとめた者の数は、往来の数と殆ど等しいのであった。
毎朝十時の開店のために、十分程経てもう準備を済ませている。エスカレーターを、時には一番乗りで使い、二階の本屋と家電量販店との間に、簡易机と、椅子二脚を並べ、そして手書きの看板を掲げれば(それは掲げるというよりも机に立て掛けられていた)事は済むのである。始めのうちよい顔をしなかった本屋の店員や、家電量販店の店員も、今には意識をすらしない。商売の邪魔にならない事がわかっていたし、たとい醜い老婆といえども、慣れてしまえばそれは柱と変わらないからである。
客が入ったのは、もう随分前の事で、半年も遡る。それもその客というのが、冷やかし半分の中学生である。暇を持て余した中学生は、時折常識というものに左右されない。老婆は中学生から、千円札を二枚取った。
老婆は占い館なるものをやっていた。もっともそれは、住宅街にある、こじんまりとしたショッピングモールの店と店との間に許可なく広げた、バザーの出店に似ていた。




