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弱者
世間には必ず異端が存在する。
1 弱者
不思議なもので、感覚というのは絶対的でない。とても危うい所を通っている。百円硬貨が心の拠り所となっていた事が、今となっては褪せた夢の色をしている。この一万円札をどこに落とすか知らん。いくらか考えたけれど、もっともらしい使い道が浮かばない。百円玉があれば、食べたくもないアイスを買って、不味そうにしていたろう。しかし滅多に財布に入れた事のない一万円札がいざ手元にあると、もうそれだけで満足なのである。感覚というところはとても危うい所を通っている。数多のそれに支えつくられる世間だなんて信用ならない。一のものがすぐさま百になり、百倍されて千で割られるだろう。そうやって世間は回っているのだ。すると歩いているうちに腹が立ってきた。なるほど世間は信用ならない。つい一秒前には一万円札のせいで得々としていたのに、もう立腹の様相である。一万円札を誰か困窮の人にくれてやって、外の空気を一杯に吸いたいと思った。それが自分にできる精一杯の抵抗であると思った。こんな時、人には思いがけない事が起こるものである。思い悩んだこの少年は、まだ14歳という若年だった。




