最悪の事態
「でっ、貴様の落し物とやらは見つかったのか?」
「ま、まだだけど・・・」
どうしよう。まずい、非常にまずい。
先に鉱脈の中に入って、アミュレット(お守り)とかを拾うふりをして誤魔化そうと考えていたのに・・・まさか、エイデンのやつが先に鉱脈に入るなんて・・・
「落し物なんか無いんじゃないのか?」
「い、いや、あるよ。エイデンが邪魔で見つからないだけだからっ。鉱脈から出てよ。」
「逆だろ?俺が探しても見つからないんだから、無いんだろうが」
エイデンは胡乱な目つきをしている。そして、それは正しい。だが、認めるわけにはいかない。
「うーん、鉱脈の中に落としたと思っていたけど勘違いだったのかなぁ。あはは・・・」
「いや、貴様は確かに落としたな」
「えっ?」
「記憶を落としたんだよ、バーカッ」
「むっ・・・」
本当に腹が立つ。しかし、ここは耐えよう。エイデン相手とはいえ嘘をついているのは事実だ。私にも罪悪感はある。それに、癪だがエイデン相手に喧嘩をしても勝てる見込みは少しもない。今、私はエイデンと二人っきりなのだ。いつものような口喧嘩だけで済むのなら、言い返しても良い。だが、エイデンを諫めてくれる人が誰もいない状態でエイデンを挑発するのは危険だ。耐えるしかない。
「はぁ、くっだらねぇ。俺は・・・・」
「・・・急に黙ってどうしたの?」
「おい、なんか聞こえないか」
「えっ、聞こえるって、何が。魔獣の声?」
「いや」
ドドドドドドドドドドドド
「えっ」
「「うぁあああああああああああああ」」