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波に呑まれる老眼鏡
自宅の居間で、佐藤は『チャートの読み方』とスマホの証券アプリを並べ、猛勉強を始めていた。
極大文字モードのスマホ画面には、投資信託の値動きを示す折れ線グラフが表示されている。だが文字が大きすぎるため、グラフ全体が画面に収まらず、一部分だけがドデカく拡大されていた。
「ぬぬ……! 画面を少し横にスクロールしただけで、グラフが垂直落下しているように見えてしまうぞ!」
本で覚えた「ローソク足」の知識を当てはめようとするが、画面の大部分を文字が占領しているため、全体の流れがまったく掴めない。
「だめだ……! 上がっているのか下がっているのか、この拡大された画面では嵐のど真ん中にいるようでさっぱり分からん!」
生真面目な佐藤は「すべてを理解してから買わねば」と考えれば考えるほど、指がすくんで「注文」のボタンが押せなくなっていく。
「……よし、ここはプロに聞くのが筋だな。相場の『波』との付き合い方を、斎藤くんに教えてもらおう」
慎重で不器用な佐藤は、本とスマホを抱え、再び三井の証券会社の窓口へと向かうのだった。




