第一話 元公務員、最果ての地に立つ
この作品はAIで作られた文章が多いですが、自分自身読んでて面白かった作品なので、どうぞ一話だけでも見ていってください
――ガタゴトと、立て付けの悪い馬車が酷く揺れるたびに、僕の貧弱な背骨が悲鳴を上げた。
「……はぁ。まさか異世界に転生してまで、こんなデスマーチに付き合わされるなんてな」
ナオト――大野直人は、埃っぽい馬車の窓から外を眺め、深くため息をついた。
前世での記憶は、あまり思い出したくない。地方自治体の都市計画課に勤務し、過疎化が進む地方の村おこしや、大型台風が直撃した際の避難所運営に奔走していた。
そして、3日連続の徹夜の末、役所のデスクで意識を失った。それが、僕の32年の人生の終わりだった。
目覚めると、中世ヨーロッパ風のファンタジー世界。没落貴族の三男坊という、なんとも中途半端な身分に生まれ変わっていた。
この世界では、18歳になると神殿で『天職』と『スキル』を授かる儀式がある。
周囲の転生者やエリート貴族たちは『聖騎士』だの『大魔導師』だのといった、いかにも主役らしいチート能力を授かり、意気揚々と魔王討伐へ向かっていった。
一方、僕が授かった天職は『文官』。
スキルは【測量】【製図】【材質鑑定】。
「戦闘能力ゼロ、魔法適性なし。うん、見事なまでにお役所仕事用だね」
神殿の神官たちからは「戦えない無能」と鼻で笑われ、王政府の偉い人たちからは厄介払いとして、1枚の辞令を渡された。
『元魔王領・最果ての街ガルガルドの領主に任命する』
勇者パーティが魔王を倒したことで、世界には一応の平和が訪れた。
しかし、それは「戦争が終わった」というだけで、戦後の混乱が収まったわけではない。
特に、かつて魔王軍の拠点だったガルガルドは、戦争で徹底的に破壊され、行き場を失った人間の難民と、魔王軍の生き残りである魔族や亜人がひしめき合う、王国で最も治安の悪い無法地帯と化していた。
要するに、誰も行きたがらない「最大のババ」を、無能な僕に押し付けたわけだ。
「まもなく到着いたします、ナオト様」
御者の怯えたような声と同時に、馬車が停止した。
重い扉を開けて外に出た瞬間、ツンとした錆びたような匂いと、冷たい風が鼻腔を突き刺した。
「……これは、想像以上に役所の出番だな」
目の前に広がっていたのは、言葉を失うほどのディストピアだった。
かつて立派だったであろう城壁は無残に崩壊し、地面は泥と汚水でぬかるんでいる。
通りには、ボロ布を纏った人間の難民たちが虚ろな目でうずくまり、その数十メートル先では、筋骨たくましいオークや、耳の尖った魔族たちが、人間を激しく睨みつけている。
一触即発。誰かが小石を一つ投げつければ、その瞬間に凄惨な殺し合いが始まりそうな、最悪の空気感が街を支配していた。
僕はまず、自身のスキル【測量】を発動した。
視界が淡い青色の光に包まれ、僕を中心に半径1キロメートルの空間構造が、正確な3Dマップとして脳内に構築されていく。
『城壁の損壊率:78%。排水路の詰まり:92%。簡易住居の構造欠陥:ほぼ100%』
脳裏に浮かび上がる絶望的な数値に、思わず頭が痛くなる。
建築基準法があったら即座に営業停止処分になるレベルの欠陥都市だ。
さらに歩みを進め、領主館とされる、これまた半分崩れかけた建物の執務室に入る。
机の上には、前の役人が残していったと思われる、
数枚の汚れた羊皮紙――この街の物資のデータがあった。
僕はそれを手に取り、【材質鑑定】を発動する。
『小麦の備蓄:残り320キログラム(うち15%にカビ発生)』
『干し肉の備蓄:残り140キログラム(塩分過多、保存状態:並)』
『薪の備蓄:残り50束』
「おいおい……冗談だろ?」
僕は懐から、王都の神殿で手に入れた『気象予測の魔導書』を取り出し、ガルガルドの今後の天候を確認した。
間違いない。あと30日で、この地域には数十年に一度の『牙を剥く冬(大寒波)』がやってくる。
マイナス20度を下回る、地獄のような季節だ。
僕は手近な羽ペンを握り、スキル【製図】を発動した。
前世で培った「避難所運営タイムライン」のテンプレートをベースに、現在のガルガルドの人口(人間約600人、魔族約400人)と、手持ちの物資、そしてこれからの気温の推移を、1枚の羊皮紙に凄まじい速度でグラフ化していく。
結果は、あまりにも残酷だった。
「現在のやり方のまま冬に突入した場合……冬の開始から2週間で薪が底をつく。3週間目で食糧が枯渇。最終的な生存率は……12%。人間も魔族も、ほぼ全員が餓死か凍死する」
これが、勇者が魔王を倒した後に残された、この街の「現実」だった。
平和になったからといって、勝手に飯が降ってくるわけじゃない。適切な管理と供給がなければ、人は簡単に死ぬ。
「おい、お前が新しい人間の領主か?」
突然、執務室の扉が乱暴に開け放たれた。
現れたのは、頭部に2本の漆黒の角を持つ女性だった。
黒い髪をきつく後ろで結び、軍服の名残がある破れたコートを着ている。
鋭い切れ長の瞳が、僕を値踏みするように睨みつけていた。
「私はマルタ。この街にいる魔族の残党をまとめている。挨拶に来てやったが……噂通りの頼りないガキだな。王政府も、こんな無能を送り込んで何がしたい?」
「マルタさん、だね。初めまして。新しい領主のナオトです」
僕は前世のお役所仕込みの「クレーマー対応スマイル」を完璧に浮かべ、彼女を迎え入れた。
「無能かどうかは、これを見てから判断してほしい」
僕は、先ほど【製図】スキルで書き上げたばかりの、真っ黒なグラフと数式が並ぶ計画書を、机の上にスライドさせた。
「何だこれは? 文官の嫌がらせか?」
「この街の、あと30日後の未来予想図だよ。
はっきり言おう。君たち魔族も、あそこにいる人間の難民も、今のままだと来月には全員死ぬ」
マルタの眉がピクリと跳ねた。
彼女は元魔王軍の補給部隊長だ。
数字の持つ意味を、普通の荒くれ者よりは理解できるはずだった。
彼女は半信半疑で羊皮紙を手に取り、そこに書かれた緻密な計算式と物資の消費シミュレーションに目を落とした。
みるみるうちに、彼女の小麦色の顔から血の気が引いていく。
「……な、ぜ、これほどの正確な数値を……。私たちが隠し持っていた倉庫の備蓄量まで、どうして分かっている!?」
「僕のスキルでね。隠しても無駄だよ、全て『見える化』させてもらった」
僕は椅子から立ち上がり、マルタの目を真っ直ぐに見据えた。
「人間と魔族が互いにいがみ合い、個別に貴重な薪を燃やし、少ない食糧を奪い合っている。そんな非効率なことをしているから、全員まとめて死ぬんだ。生き残る方法は一つしかない」
「……何だと?」
「人間も魔族も関係ない。全ての食材と燃料を僕に提出してもらう。そして、街の中央広場で、全員分の食事を一度に作る。――『合同炊き出し』を行う」
「バカな! 人間と魔族が同じ場所で飯を食うだと!? 暴動が起きるに決まっている!」
「飢えて死ぬのと、一時のプライド、どっちが大事だい?」
僕は冷徹に言い放った。
前世で何度も見てきた。
極限状態の避難所で最も大切なのは、公平な分配と、温かい食事だ。
お腹がいっぱいになれば、人間は他者を攻撃する元気を失う。
「僕は戦えない。君たちの戦闘力には足元にも及ばない。
だけど――『誰も死なせずに冬を越す計画』なら、僕の右に出る者はこの世界にいない」
元公務員の、知恵と書類を武器にした、前代未聞の都市再生計画。
最果ての冷たい風が吹き荒れる中、僕の新しい「戦い」の火蓋が切って落とされた。
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