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転生邪神とクソ女神  作者: 梓川澪
黎明に目覚める虚無の巫女編
15/34

第1章 第15話 邪神族を祓う武器

本作『拝啓、異世界に転生したら邪神になりました』を、お読みいただきありがとうございます。

今週も読んでいただいた読者様、そのうえ評価や感想、反応などを送って下さり感謝しかありません。

私が趣味で書いている作品とはいえ、そういった皆様からの支援が、執筆における励みとなっています。

来週の更新も不定期にはなりますが、時間があるときにでも読んでもらえると嬉しいです。

 セラスの双眸が、僕を捉えた。

 右腕を水平に上げ、右掌を前に出す。

 手底に黒い窪みがあった。

 銃口だ。


自動小銃(オートマチック)――祓癌銃(ばいがんじゅう)ガサラ。〈邪神族〉や〈悪魔族〉といった邪悪な存在を祓う銃だ』


 メノア様が戻ってきた。

 何していたんですか。

 お手洗いで席を外すなら、そう言って下さいよ。


『なんでトイレをするのに、お前に許可を取らないといけないんだ……いや、トイレではないんだが』


 メノア様の尿意を管理をするのも、息子である僕の役割なので。

 安心して良いですよ。

 別に嫌悪感とか感じません。


『それを感じるのは、頼んでもいないのに管理される私だ』


 というか、とメノア様。

 異界で物音を立てながら言った。


『女神は尿も便もしない』

「なるほど、そういう設定ですか」

『そうだ』


 ――そうなんだ。

 頭の片隅に覚えておこうかな。


『……なら、さっさとその出来の悪い生物兵器を殺せ。お前の残念な頭が浄化されないうちにな』


 祓癌銃(ばいがんじゅう)ガサラ、でしたか。

 特定の種族を殺傷するのに特化した武器のようだ。


『魂に当たれば即死、掠れば星力(メリス)の簒奪で済む』


 どちらも嫌だ。

 死ぬよりも、星力(メリス)を奪われた後の方が怖い。


『そこには〈聖女〉の上で腰を動かす邪神の姿が……』

「勝手に描写をするな」


 気持ち悪い。

 メノア様のせいで、想像してしまった。


『屈辱と羞恥に染まった表情の邪神、それを艶美な裸体の〈聖女〉が性愛で包み込む。邪神は凄絶な嫌悪感から表情を歪めるが、しかし〈聖女〉の欲望を拒むことは……』


 それ以上聞いたら吐きそう。

 と、セラスの掌の銃口が白光に埋まった。

 刹那、音速を越えた弾丸が僕に着弾する。

 床板が壊れ、木片と埃が舞う。

 確かな殺傷性のある威力だったが、僕は無傷だ。

 暁灯瑠刀(きょうひるとう)フォルラリスの(しのぎ)を、セラスに向け弾道を完璧に予測し弾いた。


『カッコつけるな。ただの偶然だろ』


 場が静まったとき、僕の身体は霞む。

 それから消えた。

 セラスの背後に出現――。

 一瞬の移動、僕は暁灯瑠刀(きょうひるとう)フォルラリスを振るった。

 それは、しかし空を切る。

 セラスの首は刎ねられなかった。


『下手糞』

「うるさいよ。観戦者は黙って見ていて下さい」

『はーい』


 メノア様が不貞腐れたように返事をする。

 視線を上にあげれば、天井を背に僕を見下ろすのはセラスだ。


『私を見下ろすとは、大層な身分だな』

「野次を飛ばさないと死ぬのかな」


 黙れ、と言った矢先にこれである。

 口を開けば皮肉が出る。


『それが私の長所だ。可愛いだろ』

「ええ、セラスよりは」

『……だろう?』


 僕に肯定されたのが嬉しかったのだろう。

 心なしか上機嫌な様子が伝わった。

 褒めてはないけどね。

 セラスの前腕が裂ける。

 身体に搭載されているのだろう武器が露わになった。


音波刃物(ソニックブレード)祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラだ。効果は銃と同様だ』


 瞬間、僕とセラスは霞み消える。

 店内に旋風すら発生する速さ。

 床を滑るように飛び、剣戟を交わす。

 金属音は散った火花が尽きるより先に鳴った。

 武器の持ち手は霞む。


 土埃を纏い肉薄するセラスは、僕の懐に踏み込み祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラで、胴体を横薙ぎに斬った。

 僕は焦らない。

 その必要もない。

 冷静に、それから泰然と――。

 祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラを迎え撃った。


 だが、僕は暁灯瑠刀(きょうひるとう)フォルラリスを持ち、バッと背後に振り向いた。

 ――キキキキキキキキキキンンンッ!!!

 僕の眼前に、一瞬間鉛が連続する。

 それは、散弾の弾雨。


「《時空を超える弾丸(ブレラセス)》に気付かれるとは……お見事ですわ。流石は〈勇者〉カイン様」

「僕はノワールです」

『私はメノアです』


 知っています。

 僕は《時空を超える弾丸(ブレラセス)》を暁灯瑠刀(きょうひるとう)フォルラリスで刻む。

 この不意打ちをセラスは狙った。

 祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラの特攻は、はったり。

 それと《時空を超える弾丸(ブレラセス)》を察知出来たのは、僕の第六感だ。


『つまり、偶然か』


 必然です。

 そんなに僕の感覚が信用ならないですか。


『うん』

「否定しろ」


 悲しい。

 僕は創造主に信用されていない。

 《時空を超える弾丸(ブレラセス)》を全弾斬り終えると、僕は暁灯瑠刀(きょうひるとう)フォルラリスを背に据えた。

 それと同時、暁灯瑠刀(きょうひるとう)フォルラリスの胴に重い衝撃が走る。

 祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラの打撃だ。


 《時空を超える弾丸(ブレラセス)》これも、はったり。

 本命は《時空を超える弾丸(ブレラセス)》に気を取られた隙の、祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラによる奇襲だ。

 だが、僕は二重のはったりを事も無げに防いだ。


「おやおや、これも防がれてしまいますか……」


 と、セラスは祓癌刀(ばいがんとう)ソキエドラを手に意外そうにする。

 僕は表情を変えない。

 正直、いまのは危なかった。

 対応出来たのは偶然だ。


『ほら見ろ……偶々だろうが。いらん見栄を張るな』


 メノア様が揚げ足を取ってきた。

 すみませんでした。

 僕が悪かったです。


『分かればいい』


 良いんだ。

 適当に謝っただけなのに。

 簡単な女神で助かる。


「〈勇者〉カイン様は感覚が敏感な殿方なのですね」

「何か言い方が嫌だ……」

『僕はノワールです』


 代わりに言ってもらって助かります。

 セラスが口にすると、違った意味に聞こえる。


『考え過ぎだ、エロガキ』

「誰がだ」


 また、新たな蔑称が増えた。

 不服だ。


「何か興奮する」

「私もですわ!」

『お似合いの夫婦になれそうで、なによりだよ』


 メノア様が突き放すように呆れる。

 いまのは冗談ですよ。


『……だが、その女は本気だ。残念なことにな』


 見てみろ、とメノア様に言われる。

 目に見えるセラスは、非常に興奮した状態だった。

 顔は紅潮し、目が爛々としている。

 離れていても息の荒さが伝わった。

 獲物に飛びかかる寸前の様相だ。


「〈聖女〉を騙る身とは思えないね」

「ありがとうございます!」


 だから、何が?

 会話が通じているようで、かみ合っていない。


「カイン様は、こういう淫らな女性がタイプだと伺っていましたので……そのご希望に沿ってみましたわ」


 ――僕はノワールです。

 もう、それを口にするのも疲れたから言うのはやめよう。

 それより――。


「誰に聞いたのかな」


 好きな異性の性格を他言した覚えはない。

 勿論、セラスのような女性は好みに該当しない。


『私は?』


 嫌いですよ。

 何を当たり前な事を。


『ふふっ』


 メノア様が笑う。

 人に嫌われて嬉しいのかな。

 変わった女神だ。


「貴方様のお父様ですわ」

「いないけど」

「……え?」

「ん?」


 セラスが驚いたように瞳を瞬かせる。

 それから左手を口元にやり、震えながら申し訳なさそうに僕を見た。


「私の無知を、どうかお許し下さい……まさか、既に故人になられていたとは……」

「そういう意味じゃないんだけどね」


 何か勘違いをしている。

 生死は関係ない。

 単純に父親はいない。

 記憶が無いのなら、存在しないも同然だ。


『ただ記憶力が致命的にない餓鬼が、忘れているだけだろ』


 そうなのかな。

 どうだろ。

 別に、それでも良いと思う。

 僕の日常に支障はない。


『どうだかな』


 僕はニコリと笑みを見せる。

 気分を害していない事を伝えた。


「君が何処の誰から耳にしたのかは知らないし興味もないけど……」


 僕は笑みを深める。

 それは友好的なものではない。

 拒絶の意味合いがある微笑み。


「生憎と、僕は年下が好きなんだ」

『心底、どうでもいい』


 メノア様が吐き捨てる。

 因みに、女神様は論外ですよ。

 残念ながら。

 なので、想いに応える事は叶いません。


『告白をする前に振るな……する予定もないが』


 そうですか。

 仮に告白をしてきたら了承しましたけどね。


『なんでだよ。私は好みではな……いや、なるほど。そういう目的か』


 どういう目的だ。

 何に納得したのかな。


『散々、誹謗を吐いてはいたが、本心ではお前も男だったという事だろう……?』


 クックック、とメノア様が陰湿に嗤う。

 だから、何のことやら。


『……つまりは、私の身体が欲しかったわけだ』

「いや、いらん」


 僕は即答する。

 そういう欲望はない。

 あっても、メノア様には向けない。


『恥ずかしがるなよ』


 ――ニヤニヤ。

 と、そんな笑みをしているだろうメノア様が想像出来た。


「なるほど……カイン様は年下の女性がお好きなのですね……ということは、私はカイン様にとって理想の女性ですわね」


 セラスが目を輝かせ言った。

 話が通じない人を相手にするのは疲れるな。


『本当にな』


 メノア様が露骨な溜め息を漏らす。

 貴方の事も言っているんですが。


『私は人ではないからな』


 そこは察してほしい。

 指摘が細かい。

 いや、分かっていた上で、そういう態度を取っているのかな。


「面倒な神だ」

『お前もな』


 そうだった。

 僕は〈邪神族〉でした。

 未だに実感が湧かないんですよ。

 でも――。


「面倒臭さでは、メノア様に到底及びませんけどね」


 僕も性格に、それなりの欠点があるのは自覚している。

 だけど、メノア様には敵わない。


『当然だろう。私は存在自体が世界にとって厄介だったから、こんな何の娯楽もない異界に閉じ込められているんだ』


 そうなった詳しい経緯は知らないが――。

 自慢げに話しているように思えてならなかった。


「大変そうですね」

『私の境遇に興味を持て』


 それは無理かな。

 僕は無感情な感想しか言えない。


『……つまらん奴だな。お前には好奇心が無いのか?』


 メノア様の冷淡な声音。

 どうでしょう。

 あるとは思いますよ。

 人並みには。


『なら、そんな可哀想な感性のお前に、愉快な喜劇を話してやろう』


 それは、とっておきの話題だったのだろう。

 メノア様が機嫌良さげに鼻を鳴らす。

 少しばかり声のトーンも高い。


「別に興味な……」

『これは太古の昔、神話の時代。〈魔女〉と恐れられた令嬢と、異世界から召喚された〈勇者〉の奇怪な恋物語——』


 メノア様は訥々と話し始める。

 好きにさせておこう。

 途中で無理矢理遮るのも面倒だ。

【次話予告】

ノワールは『竜脈の畔』で、話が通じない〈聖女〉セラスと戦闘を続ける。

彼女は異形に変貌する生物兵器のような存在であり、あらゆる武器が身体に装着されていた。

相変わらずまともに会話が出来ない相手に辟易しながらも、戦いは激しさを増していった。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

良ければ評価を貰えると嬉しいです。

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