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転生邪神とクソ女神  作者: 梓川澪
黎明に目覚める虚無の巫女編
10/33

第1章 第10話 神の権能を宿した皇族

読者の皆様、今週も本作『拝啓、異世界に転生したら邪神になりました』を読んでいただき、本当にありがとうございました。

今週で投稿を開始してから二週間となりますが、当初から追って読んでいただいている読者様、毎話の応援などが執筆をするのにあたり、とても励みとなっています。

これまでの話を読んでもらえて感謝しかありません。

私事なのですが、今朝がたに確認をしたところ、本作の累計PV数が100を超えていました。

それだけ沢山の方に見てもらえているのが驚きです。

欲を言うようですが、いつかはPV数が千や万を超えたいな、などと現状では夢物語なことを考えています。

はてさて、本当にいつの話になるやら。

まあ、そんな私の自分語りなど、どうでもいいと思うので、今週の前書きはこれで終わりたいと思います。

長々と書いてしまいましたが、これからも本作をお願いします。

来週は日曜日の更新になります。

もしかしたら、都合の関係で月曜日になるかもしれませんが、その辺はご了承下さい。

投稿される時間は夜の21から23時頃になると考えています。

 それは見慣れない意匠だった。

 価値がある代物なのか、その判別はできないが――。

 外套から覗いた際に感じたのは、魔力の残滓。

 この世界レネイストでは、そういった魔力を宿した道具を魔道具と総称する。


 魔道具は専門の職人が製作をするのが通常だが、自然の迷宮から見つかることもある。

 他にも偶発的に道具が変貌する場合もあるようで――。

 その蜘蛛の巣のペンダントらしき貴金属は、それに類する魔道具なのか。


『――にしては、魔力の波長が妙だがな。言い表すのが難しいが……』


 メノア様は怪訝な様子。

 うーん、と唸り――。


『なんというか……持ち主の魔力とペンダントが、かみ合っていない』


 それが近い表現のようである。

 相性の良い魔力と魔力はひかれあう。

 持ち主の魔力と魔道具の適正が高ければ、お互いの魔力の波は綺麗に重なる。

 しかし、その逆だと魔道具を思うように扱うのは困難だ。

 魔力が反発し合い、やがて最悪は片方を壊してしまう可能性もある。


「僕とメノア様の関係性と同じですね」

『ああ。お前は私の道具だからな』


 だったら、壊れないように大切に扱っていただきたい。

 長持ちする道具の方が利用価値は高いですよ。


『考えておこう』


 メノア様の適当な返事。

 これは明日には忘れていそう。


 と、僕はレネイストの知識を引き出しながら、少しだけ考えてみる。

 これは可能性の話だが――。

 立ち去った男女の素性を客観的に考察しよう。

 現在の時刻は丁度、正午を過ぎた頃。

 何処からか、昼を知らせる鐘の音が聞こえた。


『腹減ったな……』


 グー、とメノア様の腹が鳴る。

 メノア様の空腹感なんて知りませんよ。

 というか女神も、お腹が空いたりするんですね。

 食欲とか無いものかと。


『お前の浅はかな知識と偏見で物事を判断するな。人間だろうと女神だろうと、腹が減れば飯を食う。人を殺したいと思えば殺す。生物として当然の行動だろうが』


 メノア様が異界で物音を立てる。

 ――ガタゴト、バタン。

 と、何かを開け閉めしていた。


「いや、そんな殺伐とした欲求は無いですが……」


 三大欲求に新たな項目を増やそうとしないでほしい。

 そんな如何にも、自然の摂理みたいに言われても――。

 神都アリオンの大通りは繁華街であり、大勢の住民や観光客やらで賑わっている。


『こいつら、暇なのか?』

「メノア様じゃあるまいし……」

『……なんだと』


 皆、目的があるから神都アリオンにいるんですよ。

 そんな人々の中で、漆黒の外套に身を包み走り去っていった男女は、些か不審な動きではあったが――。

 しかしながら、誰も気にしていない。


『お前が一番、不審者だ』

「まさか、糞女神に不審者呼ばわりされるとは……」


 心外である。

 流石に初めての経験だ。


『一人で突っ立ってる餓鬼が、人通りの多い道でいきなり『糞女神』と呟いている姿のどこに、不審ではない要素があるんだ? ん?』


 ――確かに。

 そう言われて自覚する。

 窺うように周りの目を確認。

 良かった。

 どうやら、誰も怪しんでいない。

 露店に陳列する商品に夢中だったり、談笑に興じていたり――。

 各々、娯楽を堪能している。


 その男女が乗っていた〈ニ角獣(バイコーン)〉の馬車も、神都アリオンでは珍しい移動手段ではない。

 階級を問わず、一般的に運用されている。

 二人組の男女が下りてきたのは、豪奢な装飾がされてもいなければ、家紋が入った自家用の馬車でもない。

 他のと比較しても差異はない。

 何の変哲もない普通の馬車だ。


『……あの〈ニ角獣(バイコーン)〉の死体みたいな目、お前の目と似ているな』


 カラカラ、とグラスに氷を入れる音。

 さっきから何か準備をしている。


「創造主に似たんでしょう」


 まあ、それは置いておいて――。

 そこから乗客が下りただけ。

 周囲には、そんな風にしか映らない。

 神都アリオンでは日常的な光景の一部だ。

 そこに誰も怪訝には思わないだろう。

 僕だって、同じだ。

 いつもなら、気にもしなかった。

 たとえ、したとしても見なかったことにして忘れる。


『物忘れ糞爺』

「うるせーよ、ババア」

『……ァ?』


 ――おっと。

 しまった。

 つい本音が。

 僕は猫を被りなおす。

 逃亡のように去っていった不審者から視線を逸らした。

 だが、メノア様の発言で自然と目をやってしまった。


「――星凱帝(せいがいてい)ライリーラ。いまの星凱帝(せいがいてい)の先代でしたか?」


 ヴァミリド神教国の皇帝、星凱帝(せいがいてい)になるには女神ベルザに選ばれるのが必須の条件だ。

 現在、星族(せいぞく)には皇子もいるが、男性には資格がない。

 星凱帝(せいがいてい)になれる権利があるのは女性だけ。

 故に当代の星凱帝(せいがいてい)は、当然ながら女性である。

 その先代にあたるのが――。


『ああ……ライリーラ・ヴァミリド。三代目の星凱帝(せいがいてい)だな』


 三代目。

 いまは紅凱暦(こうがいれき)852年で――。

 ヴァミリド神教国が立国したのが、改暦とほぼ同時期の紅凱暦(こうがいれき)1年。

 そのとき既に、初代の星凱帝(せいがいてい)がいた。


 僕は知識を順番に掘り起こす。

 レネイストにいる〈人間族〉の平均的な寿命は100歳前後。

 他種族、例えば〈獣人族〉や〈亜人族〉などと分類される種族は、300歳ほど。

 〈魔族〉や〈悪魔族〉それから〈竜人族〉という、上記よりも高位の種族は、総じて長命な個体が多数で、最低でも500歳は生き、1000歳を超える個体も稀にいる。

 それらとは系統が違う例外もいた。


 〈森霊族(エルフ)〉や〈機巧人形(ホムンクルス)〉という存在だ。

 この二種族に関しては、半永久的に不老であるとされている。

 細胞の劣化がないためである。

 〈森霊族(エルフ)〉は自然と共に生きる種族であり、森や川などから生命力となる糧と得ており、それらがある限り死にはしない。


 〈森霊族(エルフ)〉の性質とはまた異なるが、同様に不老の〈機巧人形(ホムンクルス)〉にも寿命といった概念がない。

 動力源である(コア)を破壊、或いは停止しなけれ絶命はしない。

 否、〈機巧人形(ホムンクルス)〉に死生観はないので、停止しないといった方が適切だろう。

 その他にも例外は存在する。


 僕のように死んでから生き返った、所謂転生者。

 転生者の中にも、様々な境遇の者がいるようで――。

 女神の力で転生をした者や〈人間族〉や、その他の種族の術師の手による、半ば強制的な転生。

 僕は違ったが、転生をした際に前世の記憶がある人とない人がいるらしい。


 転生とは異なる手法だが、同じように異世界に招かれるのが、転移である。

 これも過程や結果は似通ったもの。

 唯一、違いがあるとするなら、生まれ変わるかどうかだろう。

 彼ら彼女らのような転生転移者は、普通の〈人間族〉よりも平均寿命が長い傾向にあるようだ。


 これは転生転移をするさいに世界と世界の狭間で、星に循環する星力(メリス)を得るからだとされている。

 それにより身体が昇華しているのだろう。

 まあ、でも――。

 僕の場合は、例外中の例外なような気がするけど。


 知識を参照する限り、レネイストで過去に〈邪神族〉に転生をした人はいない。

 いや、そんな化け物が何体もいたら困るだろうが。

 ともあれ、種族別の寿命はそんな感じかな。

 だとすると、星凱帝(せいがいてい)は――。

 ヴァミリド神教国の星族(せいぞく)は長命な種族なのだと思われる。

 三代目がライリーラなら、200歳位は生きていそう。

 〈人間族〉ではないのかな。


『――いいや? ライリーラも、他の血族も全員〈人間族〉だよ』


 ただ。

 と、少し間を取って続けた。


星族(せいぞく)は代々、神痕術(しんこんじゅつ)という儀式で、人為的に身体を昇華させている。それゆえに〈人間族〉でありながら、通常の〈人間族〉とは格段に長生きするんだよ』


 メノア様は感情のこもらない無機質な口調だった。

 説明書を抜粋して読み上げるように。

 メノア様と意識が繋がっている僕は、そこに微かな嫌悪を感じ取った。

 それは星族(せいぞく)に対してか、それとも――。


「昇華、と言うと聞こえは良いですけど……それって人体改造同然ですよね」


 路地から出た僕は、そこら辺の適当な建物の壁に寄りかかった。

 人の往来を眺めながら指摘する。


「何の副作用もないまま、寿命が延びるとは思えないんですが……」


 それは転生や転移とは違う。

 昇華に星力(メリス)を用いず、神痕術(しんこんじゅつ)なる技法を取っている。

 僕の中にある知識は、断片的でしかない。

 そこに神痕術(しんこんじゅつ)は含まれていなかった。


『無論、そんな都合の良い秘儀があったなら、世界中の人間は不老不死になっている……ああ、実におめでたいことだな』


 と、全然そうは思っていないメノア様は乾いた拍手をした。

 何の代償も払わず不老不死になれる。

 そんな甘言が真実なら、誰もがそれを求めるだろう。

 しかし、それは与太話。

 メノア様の反応で明らかだった。


神痕術(しんこんじゅつ)は〈人間族〉の魂に《権能》を強引に宿して、必然的に上位の種で昇格させる……まあ、私からすれば神の劣化版でしかないがな』


 フンッ、とメノア様が鼻を鳴らす。

 先程の種族ごとの寿命では挙げなかったが――。

 メノア様のような女神〈神族〉と分類される種族には、そもそも寿命の概念がない。

 永久に不滅の存在である。

 その亜種であるのが、僕ノワールが転生をした〈邪神族〉だ。

 一応、僕も転生者なのだが〈邪神族〉なので、同様に寿命がないらしい。

 知らない間に不老にされた。


『不死ではないがな』


 あ、そうなんですね。

 死ぬことはあるのか。


『お前の身体を構成しているのは、私の愛情と星力(メリス)……それから魔力だ。仮に〈聖女〉にパンツ一丁で土下座をすることがあっても、星力(メリス)だけは奪われるなよ?』


 どういう状況を想定しているのやら。

 何か余分な構成要素が混ざっていたような気がするが無視しよう。


『あのドブのように臭い吐息の〈聖女〉は、重度のブラコンなんだ。お前のような幼気な童子は、絶好の獲物だろうな』


 クックック、とメノア様が悪魔のように嗤う。

 こちらの未来を予想して愉しんでいた。

 それを知った上で、僕の容姿と年齢を設定したのかな。


『……いや、それは私の趣味だ。阿婆擦れ〈聖女〉の性癖は関係ない』


 違った。

 なら、良かった。


『良いんだ』


 ――というか。

 今更、文句を付けた所でどうにもならない。

 転生をしたいまの自分を受け入れるしかない。


『現実を冷静に直視しているようでなによりだ。まあ、お前が無事に転生がかなったのは、私が過去に何度も転生者で実験をしていたおかげだな』


 得意げに告白するメノア様だが――。

 いや、素直に感謝していいのか。

 ちなみに、その実験の結果を聞いても?


『無論、お前以外の転生者は全員失敗だった。ガラクタにもならん不良品の集まりだな。軽い症状だと精神が崩壊する奴がいたり、酷いのだと世界に災厄を齎すような化物に成り果てたな』


 髪先でも弄りながら言っているのか。

 メノア様は興味なさそうである。


「……それ、軽傷で済ませる問題ですかね。精神崩壊を起こしている時点で、重篤者だと思いますけど……」


 とりあえず、そこらを観光しようと話をしながら歩きだす。

 女神の都合で転生をさせられた挙句、身体を改造され精神を崩壊されたりしたら、たまったものではない。

 僕がそうなっていたらと思うと最悪だ。


『……安心ひろ。万が一にも、ほまえがそんな結果にはる事はない』


 メノア様は何か口に入れた状態で喋っている。

 頭の中に咀嚼音が聞こえた。

 耳元でバリバリ、と鳴っている。

 気持ち悪いな。

 ポテトチップスでも、つまんでいるんですか。


『ほう……? 凄いな、正解だよ。そんな酒のつまみの正体を見通したお前には、千里眼の称号を与えてやろう』


 ゴクゴク、と今度は飲料が喉を通るのが聞こえる。

 お酒だろう。

 完全に気を抜いている。

 リラックスした状態。

 下界にいる僕を高見の見物を、いや監察をしていた。 

【次話予告】

ノワールは神都アリオンの路地から出たところで、怪しげな二人組の男女を見かける。

その片方の女性は魂が先代の星凱帝(せいがいてい)ライリーラだとメノアが告げ、神痕術(しんこんじゅつ)という儀式を教える。

それは人間が神の力を宿す術式だった。

神都アリオンを観光しながら、ノワールはとある女主人が経営をする宿屋に泊まる事となった。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

良ければ評価を貰えると嬉しいです。

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