混沌の傍人
「あなた、一体何をしているの!?」
霊夢は男に向かって叫ぶ。
「殺してるだけじゃねえかよ」
「最初に言ったでしょう!?基本戦闘はしないと!」
「悪を殺して何が悪い?必要な戦闘だろう!?」
「……」
霊夢は男に何も言い出せなかった。
そして沈黙は続いた。
「おっと?巫女さんよお、その後ろに居るのは誰だ?」
「はは、俺が斬ってやった弱いガキじゃねえか!」
その言葉を聞き、刻人が一歩手前に足を出す。
「駄目よ刻人」
「何でだよ……!」
「あいつはジェンスさんを殺したんだぞ!」
「刻人、それで死にかけたのよ!?」
「くっ……」
刻人が下がる。
それと同時に、フェリエが前に出る。
「ああ?誰だテメエ」
「私は、邪神教の総帥……」
「と言いたいところですが、実は違います」
「ふざけてんのかテメエ!」
「刻人、これまでずっと嘘吐いてました。すみませんね」
と言いながら、フェリエが歩き出す。
そして、フェリエが持っていた杖を掲げた。
その瞬間、フェリエの髪の色が変わる。
元の白髪から、黒髪へと変わっている。
「フェリエさん、その髪は……」
刻人が驚いたように声を出す。
「私は概念十二神の一柱、ナイアレルホラップ様の補佐、シオンです」
「概念十二神……」
霊夢が呟く。
「そう、創造神ルカ様の直接の配下……俗に最高神と呼ばれる者の補佐です」
「それがどうした……もういいな?行くぞ」
フェリエ改めシオンが発する言葉を遮るように男が動き出す。
突如として男の姿が消え、霊夢の側に現れる。
「死ねぇ!」
「えっ?」
男が叫び、その太刀を振った。
霊夢は何も抵抗出来ずその太刀を受け床に沈む。
「霊夢っ!」
「気を付けて魔理沙……あいつの太刀は受けたら駄目よ……」
「分かったんだぜ」
魔理沙は男の前に立ち八卦炉を構える。
「私も出ます!」
そう妖夢も魔理沙の隣に立ち刀を構えた。
「さあ、掛かってこいよ」
「はあああ!」
妖夢が気合の声と共に男に斬りかかる。
それを打ち返そうとする男を妖夢が視界に入れ、その刀を打ち返されないように刀の軌道を反らすが、剣の先端に男の太刀が触れる。
その瞬間、妖夢の刀の先端が折れた。
「折れた…?」
「妖夢さん下がって!」
「は、はい!」
シオンの声を聞き、とっさに下がった妖夢の立っていた場所を、男の太刀が通る。
「あれは、混沌属性の攻撃です」
「混沌?」
「そう、混沌。通常は発現しない属性です。私のようにナイア様…混沌神様の加護を受ける者ならまだしも、普通なら使えない筈ですが」
「混沌は全てを蝕みます。対処法は、同じ混沌で対抗すること」
「私が出ましょう」
そう言って男の前に出るシオン。
「へっ、よくわかったじゃねえか」
「でもな、それがわかった所で何になる!」
男が太刀を振るが、何度振ってもシオンには当たらない。
「所詮、その程度では混沌神様は勿論私には勝てませんね」
「終わりにしましょう……」
そう言ってシオンが強く男を殴る。
男が頭を飛ばされ地面に倒れた。
「終わりましたよ」
「ありがとう、フェリエ、いやシオン」
「あなたに渡したいものが」
そう言ってシオンが取り出したのは金色の杖。
「この力、まさか」
「そう、神器です。霊夢さん、あなたに差し上げましょう」
「でもこれって、あなた達の神にとって有害な物じゃ」
「あくまでダメージを与えるだけ、そこまでこちらが渡して困る物ではありません」
「そうなのね、じゃあありがたく頂くわ」
「銘はあなたが決めてください、あなたならこの杖の真価を引き出せるでしょう」
霊夢がその杖を受け取る。
「さて、帰るわよ。色々やらなくちゃいけないし」
「そう言えば、刻人来る?ここに残りたければそれでも良いのだけど」
「俺は行くよ、霊夢さん」
「すみませんシオンさん。俺は行きます」
「そうなんですね………でもこんな私で良いなら時々帰ってきて下さいね」
「…………分かりました」
「さあ、行くわよ刻人」
「わかった、霊夢さん」
そして霊夢達は歩き出した。
霊夢編一旦終了。
次からはリク編です。