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ちょっとくらい、駄目?

 そういえば眠気覚ましの薬が一本余っていたなと俺は思い出して、


「鈴、そういえばあの眠気覚ましの薬が一本余っているんだが、飲むか?」

「あー、昨日、新しく大量に作っちゃったんだよね」

「そうか。じゃあ、ミルル、いるか? もしもこれから遺跡に潜る事もあるだろうし……」

「いえ、丁度、喉も渇きましたし眠いので頂きます」

「え、あ、うん、そうか……」


 目の前でごくごくと飲むミルル。

 何だか瓶に口を付ける仕草だけでも妙な色香があるような気がする。

 気のせいだろうか?

 そこで気付けばシルフが半眼で見ていた。


「エロタイキ」

「な! なんだよ、別に普通に見ていただけじゃないか!」


 けれどじと目で見てプイっとシルフはそっぽを向いてしまう。

 何だかシルフは子供なのに早熟過ぎないかと思ってしまう。

 鈴がシルフと同い年の頃なんて……。


「タイキ、そろそろ行きましょう!」


 鈴にそう促されて俺は、彼女の案内する店に向かって歩いていく。

 鈴に連れられて俺達が訪れたのはサンドイッチのお店だった。

 どうやら有名店らしく、すでに人が並んでいる。

 なのでそこに並んでいたが、


「あら、また会ったわね」


 現れたのは白い髪に紫色の瞳を似たセイレーン。

 先ほど薬の注文を大量発注してもらえたのだが、そんな彼女にミルルが、


「あれ? エイネ、ここで働いていたの?」

「今バイト三つかけ持ち中なの。しかもここ、夜はバーになるしここで歌わさせてもらっているのよ」

「そうなんだ……ねえ、タイキ」


 そこで甘えるように俺に囁いてくりミルルに俺は、何だかいつもと違うなと思っていると、ミルルはツンツンと自分の唇に触れながら、


「今日の夜、ここのバーに来ません? 二人っきりで」

「えっと……俺まだお酒は飲めないんです」

「あら、そうなの? でも大人が出入りするバーでしょう? 女の子一人でそんな場所に行かせるのは可哀想だってタイキは思わない?」

「え、えっとミルル、さん?」

「酷いわ、タイキ。私を一人で他の男の所に追いやるつもり?」


 どうしよう、ミルルの様子がおかしい。

 しかも先ほどから言動が何だか変な感じというか俺が戸惑ってしまうようなセリフばかり。

 こんな時どう答えれば良いんだ?

 そもそもなんでこんな風にミルルはなっているんだ?

 何か変なものでも入っていたか?

 そういえば眠気覚ましの栄養ドリンクを作ったが……まさかあれの影響か?


「確かあのアイテムは、スマホで検索と。確かこれは俺達の世界に繋がっているから……後でニュースもチェックしないと、それは良いとしてアイテム検索……」


 調べるとそこには“企業戦士Z”についての効能が書かれている。

 斜め読みすると、眠気覚ましの効果以外にも場合によっては積極性が増すらしい。

 ただよほど相性がいい場合と、その積極的になる作用もお酒と同程度であるらしい。

 お酒に混ぜるならここは、夜は酒場らしいし問題ないなと思って、こっそりスマホを隠してからミルルに、


「そもそも今日の夜は満月だから部屋から出られないだろう?」

「……タイキ、部屋の鍵を開けておくから来てくれませんか?」

「……俺は自分の部屋に鍵をかけて眠ります」

「タイキのいけず……ちょっとくらい、駄目?」

「駄目です」


 そんな会話をして、俺はなんだか凄く疲れる。

 そこで鈴がミルルに話しかけたので、俺は助かったと安堵する。

 これ以上誘惑されるような言葉を聞かされるのも、こう……何となくいけない気がするのだ。

 そこでエイネが俺に、


「ミルル、どうしちゃったの?」

「いや、さっき一本余ったあの薬をミルルに渡したら、のどが渇いたと飲んでしまって。それでちょっと酔った感じに」

「ああ、そうなの? そんな副次的な効果が……でもその程度なら問題ないわね。でも満月が近いからか随分抵抗力が弱くなっているわね。ちゃんと傍で保護してあげてよ?」

「はい、そうします。ミルルは大切な仲間ですから」


 そう答えた俺にエイネが、一瞬言葉に詰まったようだがそれ以上は何も言わず、


「それで皆さん注文は決まってます? 今日の日替わりランチセットは、“とろ走り鳥”の蜂蜜ソースがけのサンドイッチですけれど、他にも……」


 そう注文を聞かれたので、俺達全員本日のお勧めセットを選んだのだった。






 俺達の席は、道に面した屋外のテラスだった。

 日傘のパラソルが張ってあるのでそこまで直接日を浴びないので熱くはない。

 そして鈴お勧めのサンドイッチの店の味を口にしてみたのだが、


「美味い! 鳥の皮がパリッと香ばしく焼きあげられている!」

「そうなの、でも牛肉の様なものも程よく中が赤く仕上げられていて、美味しいのよ」

「へぇ、今度それを食べにこようかな」


 そこでミルルがすかさず、


「ではタイキ、夜食べに来ましょう」

「えっと俺、まだお酒は飲めない……」

「シルフの歳で飲めるのに、何でタイキが飲めないんですか?」

「……そう、なのか。ほら、俺達の住んでいる世界だと違くて……」

「ここはタイキ達の世界ではないので是非!」

「……その内に」


 俺がそう告げるとようやくミルルが引いてくれた。

 俺がそれに安堵して、再びサンドイッチを口にしようとした所で、その人物は現れた。

 黒いマントをはおった、仮面の男。


 着ている服も真っ黒なのだがこった薔薇の様な布の花が幾つも付いている。

 別に一人その人物が歩いているなら目を合わせないだけで済むだろうが、彼は数十メートルずつ跳躍するように移動をしている。

 つまり壁や屋根やらを飛び跳ねるように移動しているのだが、そこまではまだいい。


 そんな彼を更に同じような格好で金色のバッジを付けたような男が同じような行動で追いかけていた。

 その後から追いかけてきたその男がそこで叫んだ。


「そこにいる怪盗は私の偽物だ!」


 怪盗に偽物やら何やらがあってたまるかと俺は思ったのだがそこでエイネが、


「皆さん、耳をふさいで下さい! ぁああああああ」


 そこで、耳をふさいだのは、店の客とそして、偽物だと追われている方の怪盗。

 同時に、耳を塞がなかった者達がバタバタと倒れる。

 どうやらエイネがセイレーンの力を使ったらしいと俺達は気づいたのだった。


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