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時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


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人たらし?



 一週間もすると、だいぶ魔法にも慣れてきた気がする。いやまだまだ力加減は苦手なのだけど、それでも練習を重ねた灯火(リヒト)については直視しても平気な、ロウソクの光くらいの出力に抑えることができるようになったのだ。


 ただ、そのくらいレベルアップできたのは灯火(リヒト)だけ。他の魔法はまるで訓練できていない状況だった。


 いや、夜に明かりを使えることによって勉強できる時間は激増したし、魔法に関する本はほとんど読み終えることができたのだけど……回復魔法についてはケガ人がいないと訓練のしようがないし、攻撃魔法はもうちょっと出力の調整が上手くなってからじゃないといろいろと不安なんだよね。燃やしたり吹き飛ばしたりしちゃいそう。


 というわけで。灯火(リヒト)の次に習得するなら回復魔法が無難だと思う。どこかで訓練ができないかなぁと考えていると、


「っ()ぅううっ!」


 部屋の外からそんな呻き声のようなものが響いてきた。


 ふすまを開けてみると、屋敷詰めの藩士(藩の武士)が中庭で剣の訓練をしているようだった。

 普通、大名屋敷の中庭は池を作ったり岩を置いたりして庭園として整備するらしいけど、伊達家は武を重視するので中庭の装飾はなし。運動場みたいに真っ平ら。訓練場として使えるようになっているのだ。


「おっ」


 よく見ると人ごみの中心で若い武士が片膝をついているようだった。痛そうな顔で右腕を押さえているので……骨折でもしちゃったのかな?


「……こういう言い方はあれだけど、丁度いいかもね」


 思わず私がつぶやくと、


「――なにが丁度いいのでしょうか?」


 背後からそんな声が。

 もはやこのくらいでは驚かない私。たぶん私に付けられている忍者、楓お姉さんだ。


「ちょっと、回復魔法の訓練であの人の腕を治してあげようと思いまして」


「なりません」


 即座に否定する楓お姉さんだった。


「でも、回復魔法を習得しておけば、お姉さんのケガを治すこともできますよ?」


「……もし深手を負うようなことがあれば、見捨てていただければと」


「ダメです」


「…………」


「許しません」


「……左様で御座いますか」


 楓お姉さんが納得してくれたところで、部屋を出て中庭へと降りていく。


「それに、ケガ人が目の前にいるのに見捨てられるはずがないでしょう?」


「それは、」


 なんだか難しそうな顔をする楓お姉さんは放置して、私は人ごみに近づいていった。


「ひ、姫様!?」


「なぜこのようなところへ!?」


「姫様のように高貴なお方が、我らのような者に近づくなど!」


「……はいはい」


 遠慮なく人ごみに近づいていくと、お姫様には触れがたいのか自然と人ごみは割れていった。その先にいるのは未だ片腕を押さえる若い藩士。


「はい、じゃあ、そこの青年。腕を見せてください」


「ひ、姫様!?」


 驚かれるのにはもう飽きたので、無視して彼の腕を取る。……ほうほう、赤く腫れている。たぶん骨折じゃないかな?


 私には医学の知識がないから確かなことは言えないんだよなー漫画の凄腕医師みたいに見ただけでケガの具合を見抜ければなー、と、考えていると、


「……あれ?」


 なんか、視えた(……)


 前世におけるレントゲンとでも言おうか。


 腕のどこの骨がどのように折れているのか、分かる(・・・)。スケルトンというか、透視というか……。


 何だろう、これ?

 これも魔法の力?


 ……いや、疑問は後だ。まずはケガ人の治療を最優先。


 治癒魔法をかけやすいよう青年の腫れたほうの腕を取る。すると、青年は申し訳なさから「ひ、姫様! なりませぬ!」と身を引こうとして――


「――動くな。下手に動いて姫様がケガをされたらどうする?」


 いつの間にか青年の背後に現れた楓お姉さんが、刃物を青年の首に押し付けた。あれはクナイってやつだろうか?


「お姉さん、ケガをさせちゃダメですよ?」


「御意!」


 即座にクナイを収めるお姉さんだった。なんか、さっきよりキビキビしてない?



※お読みいただきありがとうございます。面白い、もっと先を読みたいなど感じられましたら、ブックマーク・☆評価などで応援していただけると作者の励みになります! よろしくお願いします!

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