目がぁああっ!
お姉さんは手際よく机の残骸を片付けてくれた。大きな天板を軽々と持ち上げたのはさすが忍者、鍛えてるぅって感じだ。
「ありがとうございますお姉さん」
「いえ、影の者に礼など不要なれば」
「そういうの、いいですから」
「いえ、しかし……」
「助けてもらったのだからお礼を言う。それはお姫様でも忍者でも関係ない、人として当然のことです」
「人……」
「あ、そうだ。どこか魔法の訓練ができる場所ってありますか? 室内でやるのは危なそうなので。どこか空き地とかあると嬉しいのですが」
「そ、そうですね。さすがにこの屋敷から出るのはいけませんから……中庭などいかがでしょう?」
「中庭ですか?」
「えぇ。中庭は広く、普段から藩士(藩の武士)が訓練に使っているため、そう簡単に壊れるものもありませんから。少々目立ちますが、それでよろしければ」
「目立つ……。この屋敷っていろんな人が働いていますよね? 魔法のこと、知られちゃっても平気なんですか?」
「ご安心を。言いふらすような不届き者は伊達家藩士にはおりません」
「おお……」
鉄の結束とか、鋼の忠誠心とか、そんな感じ? 格好いいなぁリアル武士。
「……言いふらすような不届きものは我らが『処分』いたしますので」
ボソッと怖いこと言われてしまった。これがリアル忍者でござるか……。
◇
一応爺にも確認したところ、中庭を使ってもいいということになった。
なんでも幕府を開いた織田信長の正妻も(記録に残る限り)魔法を使っていたというので、『魔法を使える姫』というのは武家にとって吉兆であるらしい。
織田信長の正妻って、濃姫だよね? 濃姫が魔法を使ってたの?
(今度、こっちの世界の歴史も調べてみるかぁ)
爺からいろいろ教えてもらってはいるけれど、爺は忙しい人だからね。自分でできるなら自分でやったほうがいいでしょう。
ま、今は魔法の訓練だ。お許しが出たのだから遠慮なく練習させてもらうけど……その前に、まずは本を読んで勉強しようかな。さっきはいきなり魔法を使っちゃったけど、私は本来最初に教科書を全部読む系の人なのだ。
というわけで書庫の中でお勉強再開。
基礎自体は簡単だったのですぐに終わった。というか基礎の中でもかなりの割合を占めていた『どうやって魔力を感じるか・操るか』を私は最初からできていたので大幅に時間短縮できた形だ。
基礎が終わると、その後はジャンル別に勉強するようになるみたいだった。攻撃魔法や防御魔法、補助魔法といった感じに。
そんな中、私がまず訓練し始めたのが――灯火という魔術だった。
簡単に説明すると、魔力を燃料として明かりを灯す魔術だ。慣れると自分の近くだけでなく、好きな場所を光らせることができるらしい。
最初に練習するのがそんな地味な魔術か、と侮るなかれ。この時代には電気なんてないし、夜に明かりが欲しければ油かロウソクを使うしかない。そしてどちらも高価なのだ。
大名なんだから私が使う分くらい簡単に準備できるだろうけど……いやいやもったいない。魔法で何とかできるなら何とかしたほうがいいでしょう。
というわけで、辺りが暗くなったことだし早速実演。腕の先に魔力を集中させて灯火と呪文を唱えれば――、ピカッと――
「――みゃああぁあああ!? 目がぁ! 目がぁああぁあぁあっ!」
眼前に閃光が走り、目に激痛が走る私だった。魔力を込め過ぎたせいで光が強くなりすぎたっぽい。ゴロゴロと地面を転がる私、
自動回復のスキルのおかげですぐに視力は回復したとはいえ、痛いものは痛かった。
今度はもっと慎重にやろう。
そして、誰かを巻き込んでしまったときのために回復魔法を勉強しよう。固く決意した私だった。
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