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時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


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決着後



 気を失った爺を蔵人さんに任せて、隠し部屋から出る。

 外に広がっていたのは凄惨な光景だった。


 血まみれとなった若様。

 どこかケガをしたのかと青ざめた私だけど、不幸中の幸いにしてケガはないらしい。


 そう。不幸中の。


 若様の前に倒れていたのは、すでに事切れた男性。仙台藩藩主にして和姫ちゃんの父親・伊達吉村だった。


 死体。

 血まみれ。

 父親。


 ショッキングな光景であるはずなのに、私は不思議と落ち着き払っていた。ほとんど関わりのない他人だからか。彼のやって来た悪行を知ったからか。爺の治療でその辺の感覚が鈍ってしまったのか。……あるいは、それよりももっと気になることがあるせいか。


「……若様」


 どこか呆然とした様子の若様に声を掛け、近づく。


「和。わしは、おぬしの父を……」


「……いいのです。仕方ありません」


 和服の裾を握り、若様の顔を拭く。こびりついた返り血を落とすために。


 不思議だ。


 藩士の人たちの血を見たときはあんなにも怖かったのに、今はそんなに怖くない。それよりも何よりも若様のことが気になった。


 ――このままでは、若様が消えてしまうかもしれない。


 私の前から姿を消してしまうかもしれない。


 そんな予感がした私は、考えるより先に若様に抱きついていた。


「……申し訳ありません」


「なぜ、和が謝る? 謝らなければならぬのはわしだろう?」


「だって、若様に全て押しつけてしまいましたから。本当は、私が決着を付けるべきだったのに……」


「良いのだ。悪党を成敗するのもまた、上に立つ者の使命であろう」


「……それにしても、自分の手で成敗するのはやりすぎだと思いますが」


「是非もない。わしがやらなければ藩士の誰かが命を落としていたかもしれぬからな」


「それは……」


 感謝したいという気持ちと、次期将軍が何という無茶をという気持ちがごちゃ混ぜになる。


「……あまり無茶をしないでください」


 そう注意するのがやっとな私だった。


「ははっ、ならば、これからは和に止めてもらおうか」


 冗談にしか聞こえない発言。


 でも、私にはその奥底にある期待が、聞こえたような気がした。


 だから、


「……そうですね。そうしましょうか」





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