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時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


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浄化

 城からやって来たのは二人の男性だった。


「――確かに。悪しき菌がおりますな」


 やって来た男性のうちの一人。いかにもな陰陽師服(狩衣っていうんだっけ?)を身に纏った若い男性が井戸の水を凝視しながら断言した。


 ちょっと、ツッコミどころが多い。


 江戸時代(名古屋時代)なのに陰陽師?


 この時代なのにもう『菌』を発見しているの?


 そもそも、鑑定のために井戸水を入れたそれ、『試験管』じゃないですか? 何でこの時代にそんなものが……?


 と、陰陽師がこちらに流し目を送ってきた。服装に気を取られていたけど、細目のイケメンだ。途中で絶対裏切る系。


「陰陽師は魔術を取り入れたことにより未だ現役ですし、あの御方(・・・・)のおかげで菌も発見されております。そして、職人たちの努力により試験管も一般的となっていますよ?」


 え? 心読みました? 陰陽師ってすげー。


「…………」


 なぁんか、「なんだコイツ……」って顔をされてしまった。なんで初対面で人の心を読んでくるような人間にそんな顔をされなきゃならんねん。


 陰陽師と私が「変な女……」「あ゛? やんのか?」と微笑ましく睨み合っていると、陰陽師と一緒に城からやって来た男性が眼鏡のズレを直した。時代劇らしくない、ちゃんとテンプル(つる)がある眼鏡だ。


「ごほん。お話中失礼いたします。こういうときのために上水道はいくつかの区画に分かれて流れています。まずは該当する区画の上水道を閉鎖。その後、汚染の原因を調査しましょう」


 眼鏡男性の言葉に、私は思わず手を上げてしまった。


「はーい。それは、原因が見つかるまで町の人が井戸水を使えないってことですか?」


「いえ、原因が見つかり、汚染源を排除。その後新しい水を長時間流して上水道の汚染も全て洗い流してから。ですね」


「うわぁ……」


 めっちゃ長期間じゃん。大変じゃん。この時代だから消毒剤もないのかな?


「ご安心を。他の区画の上水道は使えますので。民にはその区画で水を汲んでもらうことにしましょう」


「うへぇ」


 水を入れた桶を持って移動とか、大変じゃん。


 ……ここは私が何とかしてあげましょうか。いや、試したことはないからできるかどうか分からないけど、やってみる価値はあるはず。


「――姫様。こちらで御座います」


 ちょうどよく楓お姉さんが本を持ってきてくれた。城から陰陽師が来るまでの間に、屋敷まで戻って持ってきてもらったんだよね。楓お姉さんならどこにどの本があるか知っているし。


 え~っと、確かこの辺に……あった。


 浄化(ライニ)


 神聖な儀式を前に、場を清めるための魔法だ。正確には魔法というより典礼とか礼拝とかの聖なる儀式の方が近いらしいけど。


 言葉の意味はとにかく、浄化(ライニ)に関する記述を熟読していく私。


「ほぅほぅ、最大出力でやれば汚染源もいけそうかな……?」


「和。何をしておるのだ?」


 春様が問いかけてきたので、本から顔を上げないまま答える。


「ちょっと試してみたいことがありまして」


「試す……?」


「こう、一気に浄化すれば大丈夫なんじゃないかなぁとですね」


「浄化……?」


「う~ん」


 いちいち説明するのもアレなので、実演してしまいましょう。


 深呼吸。

 もう一つの心臓に意識を集中し、体内の魔力を絞り出す。


 そして――


聖なる祈りを(Sankt-Olav)今ここに(reid i den)

 |聖者は森を進みゆく《grøne skog, fekk》

 |彼の喉は渇きたり《skade på sin》

 |彼の身体は穢れたり《eigen hestefot》

 |神よ、神よ《Bein i bein》

 |人は大地へ《kjøt i kjøt》

 大地は神へ(hud i hud)

 |偉大なる創造主の《Alt med Guds》|慈悲を賜らん《ord og aimen》』


 ――なんか光った。


 私の周囲が光に包まれた。


 え? なんで光るの? そういう仕様? 私の足元を中心に、道の端から端まであるような巨大な魔法陣(?)が描かれている。ちょ、説明書、説明書はどこですか!? いやこの本が説明書か! こんなこと書いてないんだけど!?


 私が慌てふためいている間に浄化は完了したのか、魔法陣(?)の光は収まっていった。


「姫様!」


 楓お姉さんの声と共に、視界が暗くなった。なんだこれ……布?


「もごもご(どうしました?)」


 布(?)に顔が覆われているせいでもごもごとした声しか出せない私だった。


「髪! 髪色がまた!」


「もごもご(え? そうなんです? ちょっと魔力を使いすぎてすぐには戻せないかも……)」


「――失礼いたします!」


 お? お? この感じはまたお姫様だっこかな?


 私をお姫様だっこした楓お姉さんは、そのまま走り出したのだった。


 いや、怖っ! 視界ゼロの状態で走られるとメッチャ怖いんですけど!? ぎゃぁあああぁああぁあ……。








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