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時代劇の悪役姫になりました。~処刑は嫌なので、正義の味方をはじめます~  作者: 九條葉月


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「おー!」


 名古屋の町は、思ったより発展していた。時代劇だと道は土なのだけど、ちゃんと石で舗装されているし。なんだか道が石畳になるだけで時代劇っぽさは薄れるなぁ。そういえば原作の町ってこんな石畳だったっけ?


「おっ、外国人」


 金髪じゃなかったけど、赤っぽい髪に高い鼻、西洋っぽい服を着た人が歩いていた。これまた時代劇っぽくない。


「姫様は別の世界からやって来たのでしたか」


 と、そんなことを質問してくる蔵人さんだった。バレバレらしい。忍者ってすげー。


 いやしかし、ここは一旦誤魔化すのが様式美じゃないのかな?


「何のことか分かりませんねー」


「棒読み過ぎませぬか?」


「くっ、私の正直さが悪い方向に出てしまいましたか……」


「正直といいますか……」


 まるで「正直というか馬鹿正直っすね」とでも言いたげな顔をする蔵人さんだった。喧嘩なら買いますよ? 魔法をどれだけ避けられるか試してみます?


「おっと、それはともかく。どこでそんな情報を?」


「それは忍びの秘中の秘にて」


「情報源は明かせないと……かっけぇ……マジかっけぇ……」


「……姫様は、その、愉快なお人で御座いますなぁ」


「もうちょっと言い方はないのですか?」


「失礼。熟考した結果、このくらいしか……」


「解せぬ」


 まぁでも私がこの世界で目覚めた直後、爺が声に出して喋っていたものね。忍者なら聞いていても不思議じゃないか。


 あの頃から忍者がいたのかーなどと感心していた私は、ふと思い至って楓お姉さんに視線を向けた。


「楓お姉さんも気づいていたのですか?」


「はい。元の姫様とはまるで違いましたので」


「そんな簡単に見抜くとは……さすが忍者ですね……」


「いえ、よほど鈍いか、よほど盲目的でもなければ気づくかと」


 楓お姉さんの容赦ないツッコミに泣いた。


「あぁ、いえ、藩士の皆は気づいていないでしょう。……そもそも以前の姫様とは交流がなかったのですから。実際はこんなに愉快な御方だったのかと思うはずです」


 後半部分はいらないんじゃないのかなーっと私は思います。


 楓お姉さんにツッコミしつつ、さぁてまずはどこに行こうかなーっと考えていると。


「す、掏摸(スリ)よ!」


 前の方から女性の叫び声が。


 スリ?

 スリって言うと、泥棒の? 江戸時代ならぬ名古屋時代にもスリってあったの?


 騒ぎの方に目をやると、人混みをかき分けながらこちらへと突っ込んでくる男性の姿が目に入った。頭巾姿でいかにも怪しい。


 これは、あれなのでは?


 悪党に人質に取られ『あーれー!』となってしまう展開! 時代劇でよく見るやつ!


 私がドキドキしていると、自然な動きで楓お姉さんと蔵人さんが動き、私を道の端へと避難させてくれた。あーれー。


「あら」


 人質予定の私がいなくなったせい、じゃないだろうけど……スリ男は足をもつれさせて転び、立ち上がったところで近くにいた女性を人質に取った。短刀というか、ドスを振り回している。


「ち、近づくな! この女がどうなってもいいのか!?」


 滅多矢鱈に(めったやたら)にドスを振り回すスリ男。なんか、思ったより必死じゃない?


「あの男、額に入れ墨が彫られていますね。あと一度捕まれば死罪となるのでしょう」


 そう言われてよく見てみると、確かに『大』の字が額に掘られているようだ。頭巾を被っているので最初は気づかなかったけど。


 あー、聞いたことがある。スリって一回捕まるごとに入れ墨が増えていって、四回目、『犬』の字が完成すると処刑されちゃうんだっけ?


 三回も捕まって、次は死罪になると分かっているならやるなよと思ってしまう私だった。いや食うに困ってという可能性もあるけど、なんか健康そうだしなぁ。




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