【第三章】第七部分
「おい、そろそろいいか。服を脱がせてくれ。」
キャンセラーグラスのない遼斗は落ち着かない様子である。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。それぐらいは自分でやりなさいよ。」
「ええ?仕方ないなあ。まあそれはできないこともないけど。」
さすがに遼斗も照れた状態であり、玲羅に無理強いすることはなかった。
遼斗の様子をチラ見しながら、玲羅も具体的な行動に移した。
スルスルと衣ずれの音をたてながら、メイド服ならびに下着を脱いできちんと畳んだ。実家でも実質的メイドであったことから、このあたりはきちんとしていた。なぜか赤
いヘッドドレスだけは頭に乗せたままだった。裸エプロンならぬ、裸ヘッドドレスである。エプロンとの隠匿面積の相違は著しい。
遼斗は前を向いたままで、後ろには一切視線を送らず、浴室のガラス戸を開けた。玲羅は二カ所を腕で隠して、遼斗の背中を追いかけた。
余裕がない中でも、玲羅は『男子の背中って、思ったより広いんだ。』と感じていた。
シャワーが音を立てて流れ出した。
「自動操縦なのかしら。さすがブルジョアね。」
遼斗はからだを洗っていた。十センチの距離を取っていた玲羅。
『ガラスのくっつけ~!』
浴室内に、メイド長の声で、放送が流れた。
「し、仕方ないわね。後ろを絶対見ちゃだめなんだからねっ!」
「わかってるよ。」
ふたりともシャワー熱のせいか、顔が赤くなっている。
玲羅がからだを遼斗にくっつけようとした瞬間。
『パンッ!』
「なにが起こったんだ?」
『風船を割ったのです。二ヒヒ。』
再び浴室内放送が流れた。
「きゃあああ~!どヘンタイ!」
遼斗は後ろを振り返っていた。その網膜には玲羅の全身が映っていた。
「ゴ、ゴメン。」
謝っても時すでに遅し。
「きゃあ、きゃあ、きゃあ!」
玲羅は野獣のように叫んだ。すぐに両手を駆使して隠せるところを覆い尽くした。
遼斗は前を向いたが、なぜか背中を丸めている。
「りょ、遼斗。せ、責任取りなさいよ。」
突っ張りしているように見える玲羅
遼斗が前を向いたまま、玲羅の様子を窺うと、すすり泣く声が聞こえた。さすがに、申し訳ない気持ちが遼斗を支配した。
遼斗は一度目を閉じて、心を落ち着けてから、玲羅に声をかけた。
「オレが悪かった。」
遼斗は『メイド長のイタズラのせい』いうことを口にしなかった。
「グスン、グスン。」
玲羅はやはり泣いている。
「何でも言うことを聞くから許してくれ。」
「失ったあたしの裸は取り戻せないわ。もうお嫁にいけない。」
『そんな大袈裟な。』という言葉も使わない遼斗。
「罪滅ぼしだ。玲羅を王妃待遇にしよう。」
「うん。それしかないわね。遼斗の責任は地球より重いんだから。」
こうして、玲羅は遼斗のお手つきから昇格して、王妃待遇になった。




