【第二章】第十八部分
翌日月曜日。いつもの通り、遼斗は黒メイド隊に囲まれて登校していたが、先週までと様相が違っていた。
黒メイド隊列の中で、王子のすぐ前で紅白のメイドが立ったまま、言い争いをしていた。赤メイドの玲羅と白メイドの真白である。
「あんたが侍女よ。あたしは、お、お、お手。」
玲羅は真白にお手ポーズした。
「お手?シロは犬じゃないよ。」
「ちょっと恥ずかしくて間違っただけよ。あたしは、お、お手つきなんだから、侍女がつくのは当然よ!」
「バイトメイドのクセに何を言うんだよ。シロはお嬢様なんだから、特待生侍女は侍女カテゴリーじゃないよ。バイトメイドが侍女になるんだよ。うがー。」
「「ガガー。」」
紅白メイドは取っ組み合いのケンカを始めた。
「メイド長、うるさいからふたりをなんとかしてくれ。」
御輿の上からキャンセラーグラスをかけた遼斗が、メイド長に苦言と指示を出した。
「わかりました。なかなか厄介なミッションです。解決するには、血を見ることになるかもしれません。ニヒヒ。」
「血だと?物騒なことはよしとくれよ。」
「いえ、血を拠出するのは王子ですが。二ヒヒ。」
紅白メイドの主張をそばで聞いていたメイド長。
「お互いが侍女になるというのはどうでしょうか。」
「互いがメイド?変なこと言わないでよ。」
メイド長の言葉は何の足しにもならず、紅白メイドケンカ合戦は継続。
「このままじゃ、教室に行けないぞ。仕方ないなあ。」
王子は御輿をふたりの近くに寄せて、割って入り、ふたりの頬に触れた。
「「ええええ~!!」」
予期せぬ王子の振る舞いに、ふたりは真っ赤な顔になり、急におとなしくなった。
一部始終を見ていた女子生徒たちは少し間を置いてから大騒ぎ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あたしにもやって!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
王子の周りが人だかり、いや狂気の女子生徒群集が王子の御輿を揺さぶり、王子はあえなく転落して、額に流血した。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「王子様!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
黒メイド隊や女子生徒群集が口に手を当てて、絶叫した。
御輿から落ちた瞬間、王子からキャンセラーグラスが外れて、多数の女子を網膜に貼り付けてしまった遼斗が、盛大に鼻血を噴出させた結果、額からの流血に見えたのだった。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「きゃあああ!王子様~!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
女子生徒たちの金切り声が響き渡った。
しかし、それをものともしない女子がひとりいた。失神した遼斗をメイド長がそそくさと手際よく、お姫様抱っこして、保健室へ運んでいったのである。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あ・・・。」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
現場にいた全員が呆気に取られていた。
数分間時間が停止したが、やがて何事もなかったように、世間は動き出した。
真白は特進クラス校舎へ消え去った。




