進んだ先には
短く無い時間を俺は呆然としたまま動けずにいた。
何が起きたんだ、それにあの表情は正常では無かった。
一種の狂気の片鱗を垣間見たのだ。
分からない。何より理解したくないと頭が訴えている。知るべきでは無いのかも知れない。
バシン!
と一度頬を叩く。弱音を吐こうとした自分を咎め、今出来ることを考える。
「……とりあえず進もう」
建物を目指すという目的が今はある。
このままでは埒が明かないんだ、考えるのは後からでも出来る。
無理矢理に一旦頭の中に全てを仕舞いこみ、八杉さんの置き去りに去れた仮面を拾い、川沿いに建物を目指して歩き始めた。
もどかしいな、俺は次第に考える毎にひたすら最初に戻る思考に辟易としていた。
獣道をひたすら歩いていくと、途中から辺りの木々の密度が薄くなっていることに気がついた。
「これは…切り株」
斬り倒された痕がある。人がいる建物が近いのかもしれない。
俺は歩く早さを上げて小走りで進む。先程とは違い、人が歩いた痕があるのだ。
すると少し拓けた場所に出た。
「何だあれは?」
遠くにコンクリートの壁が見える。
もう少しだ!俺は気がつくと走り出していた。
山道で疲れた体に鞭を打ち、ようやく見えた帰れる糸口に飛び付くために走る。
すると大きな建物にたどり着いた。
正面には錆び付いたスライド式の門があり、奥には建物がいくつか見える。
見覚えがある?いやこれは誰もが知っている建物だ。
「何で学校がこんなところにあるんだよ?」
こんな山奥に学校なんて普通あるのか?
一際大きい門に閉ざされたこの学校に、俺は大きな違和感を覚えていた。
「とりあえず近づいて見るか…」
俺は中に入るために一歩近づいて門をスライドさせようとするが動かない。
何だ?開かねぇぞ?
「ぬぉおお!!」
ビクともしない。
「ふざけんな!中に入れろよ!
「あの…何をしてるんすか?」
俺は不意に聞こえた背後からの声に驚いて振り向くと、少し離れたところに一人の女性の姿があった。
黒い艶の無い髪を肩近くまで伸ばした女性は、少し汚れた制服を着ていた。そして俺と同じなのは、顔の半分を占める仮面だった。
「いや、これが開かなくて…それより君はだれ?」
「それはこちらの台詞っすよ。それより右の柱にインターホンがあるじゃないですか」
「え?…あ!これか?」
門をの横にはこれまた小さな来客用なのか扉が一つあり、その横の柱に液晶画面があった。
そこには確かにインターホンらしきものがある。
「…でもボタンが無いぞ?」
どこを見ても押す場所が無い。ただカメラがこちらを覗いてるだけだった。
「少し退いてください」
彼女はこちらに近づいて俺の横に立つと、インターホンのカメラに顔を近づける。
すると
ガラガラガラ
門がゆっくりと音を立てて開く。
「…えぇ」
仮面認証かよ!なんだこりゃ
一体こんな山奥に学校って、しかもこんなにハイテク。
どこに俺は迷い混んだんだ?
「どうしたんすか?」
「いや、君はここに来た理由を何か知っているのか?」
「あぁ何か気づいたら森に居たんっすよね、なんすかねこれ?」
「君もか…やっぱり誘拐?」
「誘拐だったら要求もないですし、何よりこんな放置気味のてのがおかしいっすよね」
「まぁ確かに、それにこれも意味が分からないしな」
コンコンと自分の仮面を叩く。
彼女は何気ないように後ろに手を組んでいる。仮面に加え、あまり表情は豊かではないらしく、彼女の心中を察することは出来なかった。
「とりあえず行きません?説明聞けば分かるっすよ」
「説明って何だ」
「いやいや体育館で説明するって言ってるじゃないっすか?こいつが」
「あ…あー俺の仮面壊れてるんだよ」
「うーわ最悪じゃないっすか、とりあえずはこっちっすよ」
そういって気だるげそうに呟く彼女。
「助かるよ。俺は天井弥彦だ、よろしく」
「…鮫島っすよろしくお願いします天井さん」




