第86話 リメイカーの女性達
(ディスター視点)
アイツらを火山で打ちのめしてからしばらく経った。オレとサーリッシュは今のところ本部で待機している。別に上からの命令がないと動いてはいけないという決まりは無いのだが、こんなところではやる事がない。
「オラァッ!!」
ドゴオッ!!
「テメェら、本気でやってんのか!!」
ドシャァッ!!
「つまらねェッ!!オレを少しは満足させろッ!!」
ズガアアアッ!!!
暇なので、リメイカーに所属している下っ端ども相手に訓練という名目で戦っているが、本当に骨がない。アイツ…………確か、カインとか呼ばれてたな。カインにすら満たない。パンチ一撃でバタバタと倒れていく。つまらない。
リメイカーは当然、悪の組織なのだが、こいつらのようにリメイカーに入る人間は数多くいる。大半はチンピラだが、一部には入る直前までカタギだった者もいるようだ。どいつもこいつも入った理由なんて話さないから知りようもないのだが、複雑な事情があるのだろう。
訓練という名の暇潰し(全然潰せてないが)をしていると、聞きたくもねえ声が聞こえてきた。
「あ~らあらァ…………ディスター君、駄目だよォ~~~~~?新人をイジメちゃあァ~~~~~~。」
チッ、とオレは小さく舌打ちをした。
「黙れ。貴様の顔面を代わりに殴らせてくれるのか?」
それを聞くと、ゲリズは嫌味っぽく笑った。包帯で大部分が隠れた顔が歪んだのがわかる。
「ほぉんと短気だねェ……………。怖い怖い。」
こいつのいちいち人を馬鹿にするような物言いがオレは大嫌いだった。と言っても、コイツはリメイカーの中でもダントツで煙たがられている。嫌いなのはオレに限った話ではない。
オレはコイツといるのが嫌になり、下っ端達に今日は終わりだ、と伝え、その場から立ち去ろうとする。
「話はまだ終わってなごぶっ!!?」
ニタニタ笑いながら寄ってきたゲリズの顔に思いきり裏拳を叩き込んだ。感触からすると、目の付近に当たったようだ。ドサッと倒れた音がしたが、構わず歩き続けた。
コイツがなんで俺と同じ地位なのだろうか。確かに常人に比べたら強い。この前カインを退けたらしいから間違いない。しかし、リメイカーの中でも比較的弱い俺やサーリッシュ以下だ。カインと一緒にいた奴に負けたみたいだし、大した事ないのは安易に想像できる。なのに、何故……………。
「……………ずいぶん手荒なのね。」
近くの壁にサーリッシュが寄りかかっていた。
「別にアイツ(ゲリズ)がどうなってもいいけどさ。新人叩きのめすのも大概にしないと怒られるわよ?」
「…………オレは機嫌が悪ィんだ。黙ってろ。」
「………………じゃあ、アタシとやる?新人じゃ物足りないでしよ?アタシも暇してるしね。」
「………………いいんだな?後悔すんなよ?」
「それはこっちの台詞よ。」
俺は金属製の小手をはめ、サーリッシュが剣を構えた。
「あなた達、集合がかかったわ。勝負は一旦預けて、こっちにきなさい。」
チッ…………いいところで邪魔が入りやがった。クーヤがいつの間にか俺の隣に立っていた。そのまま歩き、ゲリズを抱えて集合場所へ歩いていく。
クーヤは見た目はサーリッシュ同様華奢な女だが、戦闘力は恐ろしく高いらしい。戦っている所を見た事がないからわからないが。
オレとサーリッシュはクーヤに従い、集合場所へと向かった。集合場所には顔見知りの幹部3人。俺らの上司にあたる人物。そして知らない女の子。
「あら、いらっしゃい。座って。」
上司はそれだけ言ってホットミルクに砂糖を入れ始める。
「ほら、ゲリズも連れてきたわよ。……………気絶してるけど。」
「…………………ま、いいわ。始めましょ。」
「ねぇ、そこの女の子は?」
サーリッシュが女の子について尋ねた。茶髪を二つ結びにしたあどけなさの残る女の子だ。こんなのが、幹部…………?正直、ゲリズより弱そうだ…………。
「結構最近入った子。なかなかいいわよ?」
そう言って女の子の頭を撫でる。リメイカーは幹部達が顔を合わせる事が少ない。なので、幹部の増減なんてこんな会議するまで気がつかなかった、なんてザラだ。
「……………で、その三人は一年間修行する事にしたんだ。」
「ええ。カインって子が二人にメッセージを送ってたから間違いないわ。」
クーヤが俺達の上司にあいつら三人の事を話した。クーヤも俺らの上司で今報告を受けているコイツと同格だが、クーヤはコイツと違い、よく俺らの様子を見に来たり、自ら外へ行って色々やってたりする。その為か、下っ端からの信頼もあるようだ。
「で、どうするの?」
「そうね………………あなた達、一年間どこにも危害を与えない事。」
「それはつまり…………あいつらが修行するのを黙って待ってろって事か?」
俺は上司に口を挟んだ。
「そういう事。この前も言ったと思うけど、私には考えがあるの。黙って従いなさい。」
…………なんか、学校で三国志の本を読んだ事があるが、それに出ていた軍師もこんな感じで作戦の内容伝えず強行してたな……………。
他の幹部達も退屈とか何故放っておくんだなどと不平を言ったが考えがあるの一点張り。何を考えている?
「ゲリズ。」
「ん……………これはこれは、副将サマじゃあないですかァ~~~~。」
クーヤに背負われたままだったが目を覚ましたゲリズがうやうやしく頭を下げる。クーヤが起きたのを確認したのかゲリズを床に放った。
「痛いねェ……………で、何か御用ですかァ~~?」
「アンタ、一年間じっとしてなさいよ……………?勝手に行動したら……………わかってるわよね……………!!」
ボワアァッ!!!
……………ッッ!!!
上司が脅すように言ったその時、何かが部屋を満たすように広がった。俺の腕に鳥肌が一気に広がる。サーリッシュも腕が震え、目を見開き、明らかに動揺している。他の幹部も明らかに動揺しているようだ。上司のカップにヒビが入り、ミルクがこぼれていく。
ただ一人、あの女の子だけは平然としている。どこか寂しげな目をして全く表情を変えなかった。
「………………ケッ。わかりましたァっと。」
不機嫌そうに言ってゲリズが部屋を出ていった。
「じゃこの辺でいいわね。他の皆も解散していいわよ。」
その声で他の幹部達も部屋から出ていく。部屋に残っているのは俺、サーリッシュ、クーヤ、あの女の子。
「じゃ、やるか?サーリッシュ?」
「……………気が変わったわ。今度ね。」
「チッ…………つれない奴だな…………。」
舌打ちした俺にクーヤが話しかける。
「暇してるの?じゃあ、私とやる?」
「……………いいのか?」
「ええ。ただ、ここじゃなんだから、外に出ましょうか。」
外に出たら、俺は小手をはめ、軽く柔軟運動をする。
「素手でいいのか?」
「ええ。あなたくらいならこれくらいがいいハンデでしょ?」
「言ったな……………?後悔すんじやあねぇぞッ!!!」
俺はクーヤに殴りかかった。
「……………ぐはっ!!はぁ、はぁ……………。畜生…………降参だ………。」
なんだコイツ……………素手なのに、俺と互角以上じゃねえか…………。
「なかなかいいじゃない。でも、そんなんじゃ幹部以上は無理ね。」
「別に…………昇進狙ってるわけじゃ…………ねえよ……………。」
俺はそれだけ言って建物の中へ入り、自分の部屋に向かう。
その途中、サーリッシュとあの女の子が話をしながら歩いていくのが見えた。何を話しているのだろうか。
まあいいか。今日は休もう。ひどい目にあった………………。




