第87話 一年後
今回からアアアア、第2部のオオオオオ、投稿開始イイイイイ!
(カイン視点)
あれから一年経った。
一年といってもこの世界で365日だからあっちの世界じゃまだ30分しか経っていない。そのため俺の体も全然変化はない。肉体の成長、老化も時の流れに比例して遅くなっているためだ。
肉体の成長は止まっているが、俺は確実に強くなった。自分でも実感できる程に。これで、リメイカーと戦える。
俺は今、港へいる。ここから一旦北の大陸へ、バハルへ戻り、二人と合流するのだ。荷物はこれまで通り纏めて別次元に閉まっている。
身に付けているのは服、リリちゃんのブレスレット、武器であるロングソードのみ。動きやすくていい。ロングソードは修行を始める際、フロウから譲ってもらった。やや古く、装飾もない地味な見た目だが、扱いやすさと威力は充分だ。剣の扱いも一年で相当鍛えた。
「船が出港するまであと1時間程らしいです。受付に行って、早く乗っておきましょう。」
「………………なんども聞くけどさ。お前、本当についてくるのか?フロウ?」
「何度も言ってるじゃないですか。あんな事言って出ていっちゃったんですし。」
………………フロウがついてくる事になった。本当は修行を終えて別れ、一人で行く予定だったのだが………………。
(回想)
今から3日前。最後の修行を終え、出発に向けて準備をしていた時の事。
ガシャアアアン!!!
いつもの通り窓にフロウが投げ飛ばされてガラスが割れる音。この一年間、あんな事は週一回はおこっている(割れたガラスはフロウが毎回律儀に魔法で直している。そしてまた叩きつけられて割れる。この繰り返し。)。俺もすっかり慣れて、いちいち驚く事もなくなっていた。
しかし、今回はこれからがいつもと違った。
「もーーー!!!フロウ!!!アンタって奴は!!!いっつもいっつもいっつもいっつも!!!セクハラばっかりして!!!今日という今日は絶ッッ対許さないわッ!!!」
イリナさんがいつになく怒っていた。それを聞くと他の女性達も寄ってきて、その通りだとフロウに言い寄る。
「す、すいませんって。そんな大人数でこなくっても……………。」
フロウが珍しく真面目に謝っている。しかし、怒りは収まらなかったようだ。
「いいえ!!絶対に絶対に、絶ェェェェッッ対許さないっ!!」
そして、一言。
「追放よーーーーーーーーーッ!!!」
それを聞いて。
周りが。
静かになった。
イリナさんはフロウを睨みつける。他の女性は戸惑いながらイリナさんとフロウを交互に見る。フロウはそれを聞くとうつ向いてぽつりとこう言った。
「本当…………ですか。」
イリナさんは一瞬動揺したようだが、すぐに睨みなおして言った。
「ええ。出ていって。」
「………………冗談じゃあ…………ないんですね……………?」
「そうよ。」
「…………そう言われたら仕方ありません。わかりました。出ていきましょう。」
フロウがそう言って立ち上がる。
「皆さん。今まで、ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。そして、今まで、こんな…………クズだった私を、置いていていてくれて、本当にありがとうございました。」
そう言って女性達に背を向けて家へと向かう。家の中に入り、家の中にあるものを、別次元へと放り込んでいく。もともと物が少ない為か、すぐにもぬけの殻となった。
「……………本当に、それでいいのかよ。お前、それでいいのかよ!!!」
俺はフロウに声をかけた。
「…………仕方ありませんよ。あんな事言われてしまったのですから。」
「それにしたって……………お前、今までずっとあの女性達を助けてきたじゃねえか…………!!きっとこれからも…………」
「……………それは心配です。特に、シニアさんや、ルルかさん。他にも小さな子供達。ですが、私、女性には弱いんですよ。出ていけって言われたら、それを望むのなら…………黙って従います。」
「でも……………」
フロウは静かに首を横に振った。とても悲しげな表情だった。
「フロウ……………。」
「それで、カインさん。修行つけたお返しに、と言ったらなんですが、お願いを聞いていただけますか?」
「お願い?」
「私を、あなた達の旅に、連れていってください。」
「……………はい?」
「私、もうここにはいられないんで。それに、あの人達を殺すなんて言ったあんな野郎がいるような組織は私も許しません。」
「…………いいんだな?」
「覚悟はできてます。」
そして次の日。
「じゃあ、行きましょうか。」
「本当にいいんだな?今なら戻れるぜ?」
「何度も同じ事言わせないでくださいよ。いいですって。行きましょう。」
「………………わかったよ。」
その時。
「みゃあ!!」
この鳴き声は…………。
「ルルカさん?」
ルルカちゃんはこちらに走ってくると、真っ先にフロウの足にしがみついてみゃあみゃあ鳴きはじめた。目からは涙がこぼれている。
フロウはルルカちゃんを足から離すと、屈んでルルカちゃんに目を合わせた。
「ルルカさん。泣かないでください。私は……………女性に泣いて見送られる程人ができてませんから。私なんかの為に………………。」
「みゃあ!!!みゃああ!!!」
「本当に仕方ありませんね……………。」
「フロウ!!」
「シニアさん……………。」
「本当に…………行くの?」
「ええ。」
「そんな…………嘘でしょ…………アンタがいなくなったら…………どうすればいいのよ…………ルルカだって…………アンタに助けてもらってたのにこれから………………。」
シニアさんも泣きながらフロウに言った。
「大丈夫ですよ。ルルカさんも、私なんてほとんど手伝ってませんでした。手伝ったとしても、誰でもできるような、簡単なものばかり…………。他の皆さんもそうです。私がいなくても……………皆さんで協力して、しっかりとやれますよ。」
「そうかもしれないけど…………ぐすっ………だって…………。」
「……………。」
「だって、アタシ、アンタの事が好きなんだもん!!行ってほしくないよ!!!ずっと…………ずっと、ずっと一緒にいて欲しいよ!!!たいして役に立ってなくてもいいから、ずっとアンタと……………なのに…………なのに…………アンタって奴は…………。」
「………………わかりました。じゃあ、私が目的を達成したら、帰ってきます。」
「…………本当…………?」
「はい。だから。待っててください。」
「……………わかった。必ず、帰ってきてよ…………?」
「はい。約束しましょう。私は、女性との約束は絶対守りますから。」
「うん。約束よ…………。」
そしてシニアさんがゆっくりとフロウに近づき、フロウに抱きついた。フロウも腕を背中に回す。そして……………。
そっと、唇同士を重ねた。
キスが終わった後、シニアさんはルルカちゃんを抱きかかえ、手を振りながら家へと戻っていく。
フロウも手を振りながら、俺と共に、港へと進んでいった。
(回想終了)
という訳だ。
「大丈夫ですよ。私、絶対役にたちますから。」
「まぁ………そりゃそうだろうけど…………。」
確かに、俺を鍛えただけあって、実力は半端ではない。現にゲリズを圧倒し、ボコボコにしたから間違いない。でもなあ…………。
「それだけじゃなくて…………メレンにセクハラ仕掛けそうで…………。」
「ああ。そっちですか。……………………………………………………。大丈夫ですよ。」
「えらく返事に時間かかったなぁ、オイ。」
不安しかねぇよ……………。メレンに蹴り殺されねぇよな?コイツ……………。
「ま、なるようになりますよ。船乗りましょう。船。」
「はぁ……………。」
受付でバハル港へ行きたいと言うと、あっさり通してくれた。船は俺達が前に乗ったのと同じような物。若干薄汚い。
乗り込むと、船は見た目以上にボロかった。床板は一部腐って穴開いてるし、中の椅子なんかもボロボロ。やたらと運賃安いと思ってた(バハルの半額)が、ここまでとは……………。
なーんか、あの時の海蛇がこなくても勝手に沈みそうだが、大丈夫か…………?
「ま、いいんじゃないですか?津波とかで砕けそうですけど」
「怖い事言わないでくれ…………。」
この先本当に大丈夫か……………?
次の日。至って順調に進んでいる。今のところは。
ああ、でも、なーんかこの辺りで、件の海蛇でも
ザッバアアアアアアン!!!
……………出てきたなぁ。去年も船を沈めたアイツが。
しゃーない。やるか。
「このヘビ野郎……………前の俺だと思うなよ……………。」
俺は剣を抜く。海蛇が去年船を沈めた水の塊を吐きだしてきた。
パチン!!
バシャアアアアン!!
水が船に届く瞬間、魔法の盾が攻撃をふせいだ。フロウの防御魔法だ。
「サンキュー、フロウ!!じゃあ、思い知らせてやるぜ、ヘビ野郎!!!」
俺は剣を握りしめる。
「斬撃、“螺旋”(スパイラル)!!」
ズバアアアン!!!
螺旋を描く斬撃が、一直線に飛んでいき、海蛇の体をブッた斬った。螺旋状の為、広範囲を凪ぎ払える俺考案の技だ。斬撃も以前はせいぜい太い枝を斬るくらいの威力だったが、ずいぶん威力が上がった。
ドボオオオン!!!
海蛇の死体が海に落ち、大波を起こす。フロウが魔法で船を支え、転覆を防いだ。
「いやぁ…………アイツ、この海で実質最強って言われているんですけど、それを一撃とは、本当に強くなりましたね。」
「お前のおかげだよ。こんなに強くなれたから、あの時船沈んでよかったのかもな。」
それを聞いてフロウが小さく笑った。
さ、バハル港に着くまで、あとはのんびりしよう………………。




