第80話 狼青年
前回、執筆が終わっていたにも関わらず、作成途中とつけておりました。申し訳ありませんでした。
「失礼しますねー。」
ドアが開いた音がして、男の声が返ってきた。足音が近づいてくる。ルルカちゃんは不安そうな表情だ。
「どうもこんにちは。シニアさん。ルルカさん。そちらの方、目を覚まされたようですね。」
見た目は銀髪の長い髪。ピンと立った犬のような耳は左耳がすこし欠けていた。顔つきは爽やか系のイケメン。身長は180cm程。細身だが引き締まった体つきだ。そして、毛がふさふさのハスキー犬のような尻尾。この男性も獣人か。
「こんにちは。フロウ。」
シニアさんはさらっと挨拶を交わした。
「道端に倒れていたのを見た時はビックリしましたが、ご無事で何よりです。えーっと、失礼ですが、お名前は?」
「カイン・セプルです。」
「はい。カインさん。わたしの名前はフロウ・ジュランガと申します。狼人間です。よろしくお願いしますね。」
……………なーんか、ちょっと苦手と言うか、調子の狂いそうな人だ。これだけの会話だが、相手に常に敬語で、丁寧に接しているのに、どこかひょうひょうとしている感じだ。
「あ、はい。こちらこそ…………。」
シニアさんが俺に言った。
「わたしが貴方を見つけた後、コイツに頼んで運んでもらったのよ。」
「そうなんですか。ありがとうございます。」
「いえいえ。礼には及びません。」
「あ、そうそう。カインって言ったっけ。コイツに敬語なんて使う必要ないよ。」
「え?」
「敬意払える程の獣人じゃない。」
……………………。
「はっきり言いますね……………まぁ、もう慣れましたけど。あ、カインさん。シニアさんの言う通り、わたしに改まった口調で話さなくても結構ですよ。むしろ敬語なんて慣れてなくて違和感あるので。」
うーん……………じゃあ…………。
「よろしく。フロウ。」
「はい。こちらこそ。」
その後、シニアさんがフロウに俺に起こった事を説明した。もちろん、俺が説明した通りの事を。
「はぁ。そうなんですか…………。まぁ、この島には港がありますので、そこから海に出れるでしょう。しかし、確か西の大陸には便が無かったハズですけど、」
「え?マジか?」
「そうです。なので、北か東の大陸のどちらかに渡るしかありませんね。」
「そうなのか……………。」
戻るにしても、二人がどこに居るかも、ましてや無事なのかもわからないこの状況……………どうすりゃいいんだ……………。
「まぁ、まずはゆっくり休まれたらどうでしょうか。海から流されて、まだ体調も万全ではないでしょうし。」
「そう…………だな。」
二人の事は心配だが仕方ない。まずは自分の心配しよう。
メレン…………無事でいますように。
フロウがふとルルカちゃんの頭を撫でようとした。
「フーーーーッ!」
目を見開き髪の毛を逆立ててルルカちゃんが威嚇した。ルルカちゃんに威嚇され、フロウが手をひっこめる。
「やれやれ……………全く好かれませんね、わたしは……………。」
「アンタの本性見抜いているからじゃないの?」
「そうなんですかね……………。」
そう言って頭をかくフロウ。
俺は外の空気を吸いに外に出た。太陽は真上にある。日射しは強すぎず、暖かさが心地よい。
大きく背伸びをして、辺りを見渡すと、井戸から、水を汲み上げる人、子供と外で遊んでいる人、畑を耕している人。
……………………?
「女性……………ばっかり……………。」
「そ。ここは女性の住む村。」
後ろにシニアさんが立っていた。ルルカちゃんもおり、猫がやるように大きく伸びをする。
「女性…………?じゃあ、男性は…………?」
「言ったでしょ?この島には村が3つあるって。1つは港を兼ねている村。。そして、2つはそれぞれ男性、女性が住む村なの。どうやら古くからのしきたりのようでね、基本、男女別々で暮らすの。男女は交際している時しか会わない。男の子は乳離れするまでしかここにいない。」
「変わったしきたりなんですね……………。」
「そ。わたしが反発して出ていった理由の一つがこれ。でも、みーんな、それが当たり前だと思ってる。」
「え?じゃあ、フロウは…………。」
「ああ。フロウは別よ?フロウは他所から来たの。……………まぁ、なんやかんやあってここに住む事にしたんだけど、“わたしはよそ者だから、しきたりに従う義務はありません”って言って、この村の外れに家建てて住んでるの。」
「なんでですかね?」
「一つは役に立ちたいって思ったから。もう一つは単に女好きだから。」
「そうなんですか……………。」
そう話すシニアさんはどこか、昔を懐かしむような……………そんな表情だった。
「実際凄く役に立っているのよ。力仕事やってくれたり、さっきも言ったけど、ルルカを育てる手伝いもしてくれてる。」
見ると、いつの間に移動したのか、フロウが畑を耕している女性(赤髪ポニーテール)を手伝っていた。どんどん作業を進めていく。
「あんな風にね。みんな、アイツに助けられているの。いるんだけど……………。」
その時、フロウが女性に鍬で殴られ(耕すほうで殴られたわけではないが)地面に倒れ伏した。
それを見たシニアさんが深くため息をついた。
「極度の女好きが災いして、ナンパしたり、セクハラ紛いの行動したりして………………いっつもあんな風に折檻をくらうんだけど、全然懲りないの。アレのせいで完全に長所を殺してるわね………………。この村で子供以外でアイツの被害に遇った事無い人いないのよ。」
「そう………なんですか…………。」
俺は苦笑しながら答えた。
「ま、仕方ないかもしれないけどさ……………。」
「………………?」
急に真剣な表情でシニアさんが呟いた。
フロウが頭から血を流しながらこちらに歩いてくる。大丈夫なのか……………?
「あいたたた……………イリナさんはいっつも手加減が無いですね、本当に………………。」
「それはどうでもいいけど、アンタ、血ィ流しながら来ないでくれる?ルルカが怖がるでしょ?」
「あー、はいはい。すみません。」
そう言って出血部分に手をかざす。手から淡い光が出て、たちまち傷を直した。そして別次元に手を突っ込んでタオルを取りだし、流れた血を拭き取る。
「全くもう……………。いつまで経っても懲りないんだから…………。」
フロウがタオルをしまう。
「すいませんね。ところでカインさん。お話したい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ん?ああ。別にいいけど。」
「では、こちらへ。シニアさんはここで待っていてください。」
そう言ってフロウが歩きだす。後頭部にまだ血がこびりついてるぞ………………。
俺がついて行くと、小さい一軒家にたどり着いた。ここがフロウの家?
「どうぞ、お入りください。」
中に入る。中はワンルーム。ベッドとクローゼット、大きな本棚しか無い。一応外に椅子とテーブルがあったが、それくらい。
「で、話ってなんだ?」
「はい。では、お聞きしますが……………。」
一呼吸置いてこう続けた。
「あなた、この世界の人間では、ありませんよね?」




